一冊の料理本との出合いによって、料理が楽しくなったり、仕事に繋がったり、生活がガラリと変わったり……。そんな、暮らしに影響を与えてくれたお気に入りの料理本について、稲垣えみ子さんにお話を伺いました。
稲垣えみ子さん/いながきえみこ
エッセイスト(57歳)
1965年生まれ。朝日新聞社を退社後、「夫なし子なし冷蔵庫なし」のフリーランスに。近著に『老後とピアノ』(ポプラ社)ほか。
「冷蔵庫なし生活」へと導いてくれた私の手引書
冷蔵庫なしの生活を始めて8年になるという稲垣さんが、冷蔵庫なしの生活が成り立つのか悩んでいたときに、運命的に出合ったのがこの本。「震災を機に節電生活を送っていたのですが、東京に引っ越したらまさかのオール電化住宅で、それまでの努力が水の泡。いっそ冷蔵庫をやめようか考えていたとき、偶然入った『按田餃子』で見つけてビックリ。これはもうやるしかないでしょうと」
やはり震災を機に冷蔵庫をやめた著者が実践から生み出したアイデアが満載。「冷蔵庫がなければ干すか漬けるかで解決できる。特別なものを買わなくても、空袋や空き瓶など身近な道具でなんでもできるんです。さっそく竹串で野菜を干したり、普通なら捨ててしまう柑橘の皮でお茶を作ったり。冷蔵庫のない暮らしはやってみると、圧倒的に合理的で買い物の無駄もなくなり、 自分が生きていくサイズ感や、何がおいしくて何が幸せかよくわかりました。冷蔵庫のある生活にはもう戻れません」
『クウネル』2023年1月号掲載
写真/砂原 文 取材・文/赤木真弓