一冊の料理本との出合いによって、料理が楽しくなったり、仕事に繋がったり、生活がガラリと変わったり……。そんな、暮らしに影響を与えてくれたお気に入りの料理本について、ワタナベマキさんにお話を伺いました。
ワタナベマキさん
料理家(46歳)
グラフィックデザイナーを経て料理家に。雑誌や書籍、イベントなどで幅広く活躍。近著に『MAKI ’S DAILY DISH』(主婦と生活社)、『料理家・ワタナベ マキ』(オレンジページ)ほか。
Instagram:@maki_watanabe
困ったときに立ち返る、教科書的な存在です
料理家のワタナベさんが大切にしているのは懐石料理、世界各国の料理、家庭料理を紹介する洋書という、全く違う3シリーズの料理本。重量のある大型本もいつでも見返せるよう、すぐ手に取れるところに置いているといいます。
『懐石傳書 辻留』は、焼物だけで1 冊という贅沢な作り。背表紙が並ぶとかわいくて、箱入りのセットで見つけた時はうれしかったです。料理の基本が載っているので、料理で自分が迷ったときに見て、原点に返れるような存在。
和食の3点盛りなどの作法の基本、 歳時記など、知っておかないといけないときもあるので、確認のために読み返すこともあります。
「また、世界各国の料理を紹介するタイムライフシリーズは、それぞれの文化やお祭りまで書かれていて、とにかく情報量が豊富。ネットで調べた情報は不確かなので、 例えば北と南で違うインド料理を作るとき、どちらの料理なのかなど、必ずこういう本で確認するようにしています。この仕事を始めてから、持っておいた方がいい、勉強になる本を買うようになりました」
料理本は、書店に並ぶ新刊よりも古書店で買うことが多いのだそう。
「たとえば、文字だけのレシピ本ならできあがりを想像しながら作るのも楽しいし、組み合わせも斬新で面白い。作りも贅沢なものが多く、図鑑のような大きなサイズの本は内容も充実しています。タイムライフシリーズも少しずつ揃えたいな」
洋書からヒントをもらうことも多いというワタナベさん。中でもお気に入りは、旅先のアメリカで見つけて、行くたびに一冊ずつ集めてきた『Canal House Cooking』です。
「布張りの装丁もスタイリングも、写真の撮り方も素敵。ときどきイラストも入っていて、こういう本を作りたいなと思いました。洋書のレシピは単位も違うし、できる分量も60個分だったりと多いので、そのままでは作れませんが、食材の組み合わせからヒントをもらうことも多いです。写真集のような感覚でたのしめますね」
『クウネル』2023年1月号掲載
写真/砂原 文 取材・文/赤木真弓