本誌のエディターとして毎号パリのページを担当する、〈クウネル・
岩絵の具で描く、魔除けのグリ紋。
日光東照宮といえば「修学旅行で行ったきり」という人も多いのではないでしょうか?私もそのひとり。いわゆる絢爛豪華な寺社という記憶のみ。でも星野リゾートの温泉旅館ブランド「界 日光」が宿泊者向けに行う“手業のひととき”という文化体験で、東照宮の素晴らしさに開眼!何度も訪ねたい、何時間も見ていたいスポットに変わったのです。
「界 日光」で体験できる日光彩色体験とは、社寺の修復に携わる伝統工芸士・伊原実穂さん指導のもと、実際に修復に使われる岩絵具などを使って、工芸品づくりをします。木版に下絵が描いてあり、そこに見本を見ながら色をのせます。伊原さんがその都度色を調合して作る絵の具を使い、私は東照宮の陽明門の柱に描かれている“グリ紋”を描きました。アクリル絵の具などと違って独特の質感の岩絵具に悪戦苦闘しながらも、最後は貴重な金箔も使って仕上げた木版画。何かご利益を得られるでしょうか?
目の前に中禅寺湖という、
ダイナミックな景色に感動!
「界 日光」は、奥日光への入り口、中禅寺湖畔に建つ温泉旅館です。客室には日光の社寺でも見られる鹿沼組子を使ったしつらえもあり、しっとり落ち着いた雰囲気。窓の外に中禅寺湖と男体山の絶景が広がり、その雄大な景色を独り占め。旅気分が一気に盛り上がります。チェックイン後は肌にやさしいアルカリ単純温泉のお湯に浸かり、夕暮れの中禅寺湖を眺めながら身体と心がほっとした頃に夕食。京湯葉よりやや肉厚で波打った日光湯波をメインに、栃木の食材を豊富につかった日本会席は、東照宮の極彩色をイメージした器に並んだ、見た目も楽しい宝楽盛り(先付けや八寸、お刺身が並ぶ)や和牛と湯波の柳川仕立て鍋と盛りだくさん。夏場(~8月31日まで)は「ご当地かき氷2022」というイベントがあり、栃木県にちなんだ“いちごとミルクジャムのかき氷”のサービスも。
国宝級と言われる「見取り図」を、
東照宮で特別に見学できる特別ツアー。
午後は伊原さんの案内で、日光東照宮見学。まずは社務所に立ち寄り、特別に「彩色見取り図」を見せていただく。これは社寺の修復を行う技術者が記録のために作ったもの。医者のカルテのように直した部分の素材や色、大工の名前も残している。大正時代のものもあり、国宝級の価値があるとか。伊原さんら現代の修復士はこれらを元に“平成令和の大改修”も行い、さらに新しい見取り図を残したそう。その絵を見ながら、さまざまな意匠には理由があり、絵にも物語があることを教えていただき、東照宮見学がますます楽しみに。
日光東照宮は徳川初代将軍、徳川家康公を御祭神におまつりした神社です。五重塔や神厩舎の三猿を始め、国宝の陽明門や御本社、眠り猫などが有名。豪華絢爛という言葉がふさわしく、極彩色が施され、数多くの彫刻で飾られ、金箔も貼られています。改めて歴史的建造物を守る修復士の仕事に敬意を感じながら、古の偉業に心から感動。今までとは違った目で東照宮を隅から隅まで楽しみました。知識を得てから見るだけで、建造物がこれほど愛しく意味のあるものになるのだと実感。これぞまさしく大人の遠足。日光には「華厳の滝」を始め、まだまだ名所がたくさん。ぜひ1泊、2泊して、時間をかけて歴史や自然を学んでみてはいかがだろうか。
界 日光(栃木県・中禅寺温泉)
住:栃木県日光市中宮祠2482-1
電: 0570-073-011(界 予約センター)
料:1泊3万5,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料込・税込、夕朝食付)
手業のひとときは下記専用ページに
https://www.hoshinoresorts.com/sp/tewaza/