今回は、美術家の岡 美里さん、ライターの工藤花衣さんの大切な漫画をご紹介。ひたすら街を歩く散歩系漫画や、ミドルエイジの悩みを吹き飛ばしてくれる漫画など、自身の趣味や境遇に合わせた漫画チョイスが特徴的。そんな漫画が普段の生活に思わぬ気づきを与えてくれたり、あなたが持つ悩みに寄り添い、励ましてくれるかも。
世界観にのめり込み、主人公の喜びを追体験する。
岡 美里さん
自身も大の散歩好きである岡さん。 無目的に歩いて、その途中にドラマが 詰まっていることが散歩の素晴らしさだと話します。
「漫画を通して、散歩の追体験できることが何より楽しいんです。『歩くひと』は郊外、『ぐるぐるてくてく』は東京都心、『枕魚』は架空の街を散歩する話。3冊それぞれ舞台が異なるのですが、すべて、散歩の真髄がしっかりと描かれているのが特徴です」
もうひとつ共通するのは、街並みや背景などの細部まで作者がこだわり抜いて描いていることだそうです。
「風景に敏感であることが散歩の達人の第一条件だと思います。今は漫画の背景がデータで買えて、ペーストできる時代ですが、この3冊はとにかく描写が細かい。作者自身が散歩好きなことが、ページから伝わってきます」。
岡美里/おかみさと
美術家。横顔のポートレートをライフワークとしている他、さまざまな媒体で街歩きエッセイなどの執筆活動も行う。
同世代の登場人物による、リアルな中年の心情描写。
工藤花衣さん
幅広いカルチャーに精通する工藤さん。悩みが増えたり、無感動になった り。あらゆる変化や危機を迎える中年期に、元気や勇気を与えてくれるような漫画を選んでくれました。
「『ハッピーマニア』の主人公は45歳になりましたが、まったく落ち着かず、 相変わらずの右往左往ぶりに安心。そして『あした死ぬには、』は、映画宣伝の仕事をする40代独身の女性が主人公。更年期障害や疲れ、将来への不安、恋愛や友情を描いたリアルな作品です」
そして『らーめん再遊記』も、ぜひ同世代に読んで欲しい作品だそうです。「ラーメン界のカリスマとして活躍していた主人公が、仕事への情熱を失い、世代交代を感じるところから始まります。仕事の悩み、理想と現実のバランスなど、きっと誰しもが抱えている普遍的なテーマが描かれています」。
工藤花衣/くどうはなえ
ライター。編集プロダクション勤務を経て独立。インタビューを中心に、カルチャーや女性のライフスタイルなどの記事を手がける。
『ku:nel』2022年1月号掲載
写真/砂原 文、取材・文/阿部里歩
◎休息のひととき、映画と本で、心を整えてみてはいかがでしょうか。
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