フランス在住のトリコロル・パリのフランス通信。パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISを主宰する荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしを紹介してくれます。第5回目は荻野雅代さん担当。
日本でいう節分の豆まきや恵方巻きを食べることと似た風習がフランスにもあるのだとか。
フランス流の運だめし!2月2日はクレープを焼こう。
クリスマスと大晦日を楽しく過ごし、新年を迎えたと思ったら、あっという間に2月がすぐそこまで来ています。日本では3日の節分に豆まきをしたり恵方巻きを食べたりする風習がありますが、フランスでは、1日早い2月2日を「Chandeleur(シャンドルール)」の日と呼び、家庭でクレープを焼いて食べる習わしがあります。
12月はクリスマスのビュッシュ・ド・ノエル、1月は公現祭のガレット・デ・ロワ、そして2月はこのクレープと、いずれもキリスト教にまつわるお祭りですが、同時においしいものを食べられるという楽しみがあり、うれしいと同時に、年末から胃を休ませる暇がないなぁと、少し悩ましい気持ちにもなります。
この日に限り、クレープを焼くときは特別な作法があります。片手にコインを握りしめて、もう片方の手でフライパンを振ってクレープを上手にひっくり返すことができたら、今年1年はお金に苦労しないという言い伝えがあります。縁起物とは分かっていても、年に一度の運だめしのつもりで毎回チャレンジしてしまいます。
ちなみにフランスでクレープと言うと、生地に小麦粉を使ったデザートに食べる甘いクレープのことを指します。ハムやチーズ、卵などを包んだ塩味系の蕎麦粉を使ったものはガレットと呼ばれるのが一般的です。
私の暮らすナントは、ガレットやクレープが名物のブルターニュ地方の近くなので、シャンドルールの日以外でも、かなり頻繁にガレットやクレープを自宅やレストランで食べる人が多いです。
生地のレシピは人それぞれ違っていて、その家庭で代々受け継がれている秘伝の材料や配合があったりして、並々ならぬこだわりを感じます。なんにせよ、ギョッとするほどバターをたっぷり使うのが香ばしくてパリパリしたクレープを作るコツのようです。
2月2日はクリスマスから数えてちょうど40日にあたり、幼子イエスがエルサレムの神殿で神に捧げられたことを記念する日です。教会でろうそくを灯してお祝いする「聖燭祭」の日でもあることから、ろうそくを意味する「Chandelle(シャンデル)」が、「Chandeleur(シャンドルール)」の名前の由来であると言われています。
なぜこの日にクレープを食べるのか?については諸説ありますが、いずれにしても現代のフランス人にとっては、欠かせないイベントとなっています。皆さんもぜひ、2月2日はコインを握りながらおいしいクレープを焼いてみてはいかがですか?
写真・文/荻野雅代