【”あきらめ”がキーワード? 一田憲子さんの大人の片づけvol.7】大雑把でも、できる方法を見つけてみる

一田憲子 食器棚

片づけ本のようでありながら、人生の後半を心地よく生きるための指南書となっている、『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)が話題の編集者・一田憲子さん。ここからは、これまで片づけでたくさん失敗を重ねてきたという一田さんに、今までとは少し違う角度で考える、大人の”片づけ”について3回に渡ってお話を伺います。

■人生の片づけについての考え方を書きたい

ーー『大人の片づけ』の冒頭に「ずっと片づけが嫌い」と書かれていますが、すっきりと暮らされているので意外で。でもすごく共感しました。

一田憲子さん(以下、一田):最初に家の片づけを紹介するという内容でお話いただいて、「いやいや書けません」って言っていたんです(笑)。片づけには理想の片づけ方があってそこに向かうイメージでいたのですが、片づけって自分と向き合うことと直結しているんですよね。考え方やプロセスを大事にしたい、こういう内容でしか書けないと思ったんです。

ーーそうだったのですね。この本には、小さな積み重ねの大切さや意識の変換がたくさん詰まっていますね。

一田:若い頃から、たくさん失敗してきていますから(笑)。雑誌で収納の取材に行って、張り切って収納グッズをたくさん買っては挫折して。以前は整理収納もインテリアも完璧な達人を取材して、みんながそのカリスマに憧れるという図式だったでしょう? だから私もずっとそれを取材してきて。でも「どうもこれはできないぞ」と気づいたんです(笑)。自分の理想を高く掲げて生きるのも、そろそろあきらめがつくお年頃ですよね。片づけを完璧にできないこと、若い頃からの積み重ね、自分の生き方という面でたどり着いたのでしょうか。若いうちは、手が届かないところでも背伸びして自分の伸びしろを伸ばすような生き方がいいと思いますが、50歳を過ぎればずっと背伸びをするのは疲れてしまいますよね。

ーー帯に書かれている「すっきり暮らすために必要なのは、「あきらめる」こと。」という言葉も、すごく響きました。

一田:頑張りすぎて失敗する人が多いと思うんですよね。自分にできないことを一生懸命やって、疲弊して失敗するというか。せっかく一生懸命整理した引き出しの中がどんどんぐちゃぐちゃになって、「やっぱり私はダメ。性格が悪いの? 行動が悪いの?」と思いがちなのですが、大雑把な性格って直しようがないじゃないですか。それを無理して、大雑把を几帳面に持っていくと苦しくなってしまうので、大雑把は大雑把なまま、どうしたら使いたいものをすぐに取れるようになるか、大雑把なりの方法論を導き出さないといけないと思うんです。

ーー50歳で転機があったというのは、体力的な面もあったのでしょうか?

一田:そうですね。「50歳? 残りの方が少ないじゃない!」って(笑)。体力任せの仕事はできないし、夜に原稿を書くと眠くなるし、色々できないことが増えてきて。この本に書いたように、本当にできることしかできなくなってきたんです。できないこともできるつもりでえいって飛んで、「ここまで飛べたよ!」という人生を歩んできたので、それを身の丈にしてあきらめるのはダメなんじゃないかと思っていたんです。でもいよいよ本当にできなくなってくると、夜書けないならどうしたら書けるのか、違うアプローチを探さないといけない。でもそれもようやく楽しくなってきた感じです。

一田憲子 Emi 対談
『大人の片づけ』では、整理収納アドバイザーのEmiさんとの片づけ対談や、一田さんのクローゼットの整理収納を実践するページも。

ー今回の本を機に、意識が変わった部分もたくさんあったのでしょうか?

一田:本書の対談でEmiさんに「いらないものを間引くのではなく、まず一番大切なものを決めるのが大事」と教えていただいたことは、目から鱗でした。クローゼットの収納もいらない服を間引くとばかり考えていましたが、そうではなくまず全出しして大事なものを決めて戻す。それって暮らし全般もそうで、一番大事なことを決めると整理できるんですよね。実は私、決めるのがすごく苦手なんです。「今決めても、将来変わるかもしれない」って思ってしまうから。でもとりあえず今わかることを決める、それでいいんだということをEmiさんから教わりました。

■人生の後半もワクワクしたい

ーー断捨離やミニマリストという言葉が流行りましたが、書かれている「1年に数回しか使わない器があってもいい」という言葉に救われる人も多いと思います。

一田:あまりミニマリストになりすぎると、生活が楽しくなくなっちゃうと思うんです。やっぱり買い物が好きだし、新しい器を買うとワクワクする。おばあさんになっても「器を買ったら、晩ごはんが楽しみになる」っていう気持ちは残しておきたいんです。そこにときめかなくなってしまったら、心が動かなくなるということだから。

一田憲子さん
「昔は作家さんの名前で買ったり、勉強という意味で買うことも多かった」という一田さん。年齢とともに暮らしも変化し、使いやすいお皿のサイズが変わってきたのだそう。

ーーでは今でも結構お買い物をする方ですか?

一田:しますよ~。主催しているイベントでデパートに行っていると、「もうお金は使わない」と思っていても、毎日何か買って帰ってしまうんです(笑)。出店してくれている人たちに対してお金を使うことは、「あなたのことを選んでいます」という意思表示になる。ものを買うというのはコミュニケーションでもあるから、必要なところにお金を使いたいという気持ちです。

ーー買い物をするときに、これまでと変わった部分はありますか?

一田:やっぱりいくらかは経験を積み重ねているから。今までは何でも買って学ぶと思っていましたが、見て判断ができるようになりました。でも今もなお、買ってみないと分からないものもたくさんあって。オンラインショップで器のサイズを間違えて、届いてから驚いたり(笑)。徐々に失敗しない割合が増えてきたっていうだけなんですよね。

ーー買い物をした分手放す、循環をしなくてはいけないとよく言われますが。

一田:器はすぐに増えてしまいますので、あまり執着がないかも。高かったとしても、使わなくなったら潔く手放せる方かもしれません。自分が日々使うものなら判断しやすいんですよね。でも服はまだ、高いとあまり手放せない。それは本にも書いたのですが、ファッションは選ぶ目にあまり自信がないからだと思うんです。

→インタビューは次回に続きます。

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聞き手:赤木真弓

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