何のために片づけるのか? 自分事として考える。【”あきらめ”がキーワード?一田憲子さんの大人の片づけ①】

一田憲子 大人の片付け

編集者・一田憲子さんの新刊『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)が話題です。発売早々に重版がかかったそのわけは、片づけ本にはあまりない大らかさゆえ?!

自身を「面倒くさがり」で「三日坊主」と評する著者の気ままな片づけ術は、どんな人でも「あなたでもできます」と受け入れてくれる柔軟さがあります。そして、一見「片づけ本」のようでありながら、人生の後半を心地よく生きるための指南書でもあるところが本書のみそ。読んだ後から、やる気が沸きおこり、自分の暮らしに風を通すヒントが見つかるはずです。

■整理整頓は、 過去と未来をつなぐ作業

若い頃、私にとっていちばん大切なことは「前進」でした。とにかく前へ、 前へ。昨日より今日のほうが成長していたかったし、今日より明日が進歩していなければ、気が済みませんでした。次に起こることが楽しみで、誰よりも早く「そこ」にたどり着きたい。そんな私にとって「今使っていたものを元の場所に戻す」とか「きちんと整理してしまう」という片づけは、後ろに戻る作業のような気がして、最も苦手なやりたくないことでした。

でも少しずつキャリアアップし、仕事が多岐にわたるようになると、「前進のみ」ではものごとがうまく回らなくなってきました。「やり終えたこと」「途中のこと」を放りっぱなしに前へ進むと、戻り場所がわからなくなったり、「あれ」と「これ」を結びつけたくても、肝心の「あれ」が見つからなかったり。

そんな中でわかってきたのは、整理整頓は「今まで」と「これから」をスムー ズにつなぐためにするもの、ということでした。 我が家の靴箱は、古道具屋さんで見つけた、かつて小学校で使われていたというものです。正方形の扉がいくつも並んだ形がかわいくて、一目惚れで買い求めました。ただ、1枚の扉の中に1足しか靴がしまえません。結局入りきらずに、靴の上に靴を重ね、出かける前に「えっとあのエナメルの黒はどこだっけ?」とあっちの扉を開けたり、こっちの扉の中をのぞいたり。しかも、重ねると靴の形が潰れてしまいます。そこで、百円ショップで折りたたみ式のラックを購入。靴を2段に分けて収納できるように工夫しました。

一田憲子 大人の片付け
手持ちの靴がすぐ出せる状態で収納。靴は90% がレースアップシューズ。

せっかくパンツとシャツをピシッと合わせてコーディネートしても、靴がちぐはぐだと、おしゃれが台無しになってしまいます。何度か、出かけた後に「あ〜あ、この靴じゃなかった」と後悔したので、今は玄関に段ボールの板をスタンバイさせ、着替え終わったら、鏡の前で靴を履いてチェックするようになりました。その際もすべての靴を見通すことができるのでスムーズ。「よし!」 と最終確認をすれば、今日の自分に自信を持って出かけることができます。

立ち止まって振り返り、整理する。この作業をきちんとしておけば、すぐに次のスタートが切れる……。もたつかずに、準備を整え出かけられることが、こんなにも気持ちいいものなのだと実感しました。

ある人が「毎日寝る前に、1日の出来事を思い出し、自分で自分に説明をしてあげる」と書いていました。説明をするための言語力は「過去の知識や経験の蓄積を呼び起こすための呪文である」とも。それは、自分の経験の整理整頓です。つまり「やりっぱなし」ではなく、きちんとその日の経験を「片づける」 ことで思考をより深め、蓄積することができる……ということ。なるほど〜と深く納得しました。

片づけ上手になるために、いちばん大事なのは、「私はいったい何のために片づけなくちゃいけないのか」を、自分ごととして理解することだと思います。 過去、今、そして未来という自分の時間軸を1本につなげる……。片づけの再定義をしてみると、それが面倒なことなんかでは決してなく、むしろなくては ならないことに思えてきます。

撮影 黒川ひろみ

※本記事は『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)からの抜粋です。

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