夫婦で「片づけの足並み」を合わす秘訣は?【”あきらめ”がキーワード? 一田憲子さんの大人の片づけ②】

一田憲子 大人の片付け

編集者・一田憲子さんの新刊『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)が話題です。発売早々に重版がかかったそのわけは、片づけ本にはあまりない大らかさゆえ?!

自身を「面倒くさがり」で「三日坊主」と評する著者の気ままな片付け術は、どんな人でも「あなたでもできます」と受け入れてくれる柔軟さがあります。そして、一見「片づけ本」のようでありながら、人生の後半を心地よく生きるための指南書でもあるところが本書のみそ。読んだ後から、やる気が沸きおこり、自分の暮らしに風を通すヒントが見つかるはずです。連載第二回目は、「理想の片づけ」の前に立ちはだかる夫の問題について。

■夫の片づけには口も手も出さない

我が家は夫婦ふたり暮らしなので、それぞれのものはそれぞれで片づける、 というのがルールです。食卓の上に夫の手紙や書類が置きっぱなしになっていれば、それを書斎に運んで彼のデスクの上にドサッとのせておきます。洗濯物 は自分の分だけ所定の場所にしまい、夫の分はソファの上に。彼の仕事が立て込んでいるとTシャツやらトランクスやら靴下やらが山盛りになっていきます。

不思議なことに、私自身も忙しくて「あとでアイロンをかけてからしまおう」 と服を積み上げていると、夫の洗濯物の山は、どんどんうず高くなります。私がサッサカ片づけると、ふと気づくと、夫の山がなくなっていたりします。これは、キッチンの洗い物でも同じです。私がシンクにコーヒーを飲んだ後のカップを置きっぱなしにしていると、その横に夫もカップを置きます。ちゃんと洗って水切りかごにふせていると、夫もちゃんと洗います。そっか、まずは自分がやるべきことをちゃんとやることが大事なんだなあとわかってきました。

夫は私よりずっと几帳面ですが、ものを捨てることができない人です。色あせたハンカチを見せながら「これ、高校の時から使ってるやつ」と聞いた時には驚きました。夕飯の後も、ほんの一口残ったおかずを捨てることができなくて、密閉容器に入れて冷蔵庫へ。結局食べることなく、最後に処分するのは私の役目になります。そんな彼が最近、大改造をした私のクローゼットに刺激をされたのか、衣類の整理を始めました。ずっと着ない衣類を「持っていても仕方ないしな」とブツブツ独り言を言いながら処分。私は横で「お〜、やっと気づいたか!」とこっそり手を叩きます。

一田憲子 大人の片付け
使い終わったマグカップをシンクの中に置きっぱなしにしないよう心がける

私は、片づけ方やものを減らす意味について、取材先でいろんな方にお話を聞き、そのセオリーに毎回「へ〜!」と感心します。そして、自宅に帰って真似してやってみます。夕飯を食べながら「どうしてこうするのか」を夫に話します。「話したってわからないよなあ」と思いながらも話す……。この積み重ねが、ジャブのように効くことがわかってきました。

人は、人から聞いたことが自分のお腹の中の何かとカチリとセットされないと、「本当に聞く」ことができません。そして「その時」は、いつやってくるかもわかりません。仕事のやりがいや、暮らしとのバランス、人生後半のプランや、自分が大切にしたもの。毎日の中で、いろいろな思いが交錯し、その中でふと「ものを減らさなくちゃ」と思い立つ……。きっと夫には夫にしかわからない思考のプロセスがあったのだと思います。その中に、私が夕飯を食べながら、何度も語ったあの「片づけの話」がおそらく含まれていたはず。

意識しないうちに、記憶の中にかすかにこびりついた話が、ふとしたきっかけで水面の上に顔を出す。そんな時、人は行動を起こすのだなあと感じています。「もう〜、どうしてそうなのよ!」とイライラし続け、時に失望しながら学んだのは、相手は変えられないという事実でした。同じ価値を共有したいなら根気よく、時間をかけて話し続けることが大事。それを受け止めてくれるかどうかは相手に託す……。心地よく一緒に生きていくために、気長に待つということが、やっとできるお年頃になりました。

撮影 黒川ひろみ

※本記事は『大人の片づけ できることだけやればいい』(マガジンハウス刊)からの抜粋です。

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