【樋口直哉さんのキッチンツール/前編】値段ではなく、いいものかどうかで選ぶ。

ゴムベラとボウル 樋口直哉さん

作家、料理家として活動されている樋口直哉さん。おいしい料理を合理的な観点から発想し送り出す樋口さんは、日々こだわりのキッチンツールを使っています。それらを選ぶ条件は、上質である事。ただ最新の高級ツールを使えば良いというわけではないそうです。そんな「本当に良い」道具を選ぶための見極め方や、愛用しているものを教えていただきました。

定番道具は上質に。プライス関係なく本当に役に立つものを。

自分の手をスケッチすると、いつも見ているはずなのに、こんな形をしていたのか、と驚く。身近すぎる故に見えていない。台所道具にも似たような感じがある。いい道具は存在を主張せず、意識せずとも作業を助けてくれるもの。

ゴムベラ ボウル 使用中 樋口直哉さん
スクランブルエッグはガラスボウルに入れた卵をゴムベラで混ぜながら湯煎するとクリーミーな食感に。また、残さずよそうのにもゴムベラは最適。

そういう意味ではゴムベラなどは典型だ。昔のゴムベラは加熱用途には使えなかったが、素材がシリコン製に変わったことで、用途が広がった。ボウルの中身からフライパンの内側についたソースまで、きれいに拭いとれる。どこにでも売っているけれど、質のいいものはなかなかない。柄と持ち手が一体であり、先端部が薄く、しなやかなものがいい。

数本のゴム製ヘラ

ゴムベラ
「シリコン素材の耐熱ゴムベラを大きさ違いで持っておくと便利。柄とヘラ一体型がマスト」。樋口さん愛用、黒は無印良品のシリコーンスパチュラ。小さいのは瓶の背についたソースを拭いとるのに必要。白は製菓用。

ステンレスとガラスのボウル

ステンレス ガラス ボウル
ステンレスのボウルのいい点は軽さや耐久性。ガラスのボウルはレンジやオーブンにも入れられたり、サラダを和えた後そのまま食卓にも出せる。「プラスチックは熱に弱く用途が限られるのでおすすめではないです」

毎日使う道具だからこそ、上質なものを選びたい。僕にとって上質とは必ずしも高価なものではなく、役に立ち、細かな気遣いがされているものである。新しいものが必ずしもいいとも限らない。おひつは昔ながらの道具だが、やはり優れている。炊きあがったご飯の余分な水分を吸収してくれるからだ。新しいものと古いもの。それらが混ざり合って今という暮らしが生まれる。

ご飯鍋&おひつ

ご飯鍋選びは、米の種類と仕上がりの設定によって左右される。樋口家の数個のうち萬古焼の土鍋は、3合炊きのサイズが食生活にマッチ。炊きあがりを木製おひつに移して、ご飯の余分な水分が逃がす。「このひと手間でおいしさが違います。」

2枚以上のバット

「調理の段どりを整理、合理化します」。バットは肉類と野菜、火を通したものと生のもの、など素材や調理時の仕分けに大活躍。1枚ではあまり用をなさないのがミソ。樋口さんが使うのは極々ポピュラーなステンレス。

ツールに関する記事、他にもいろいろ。
◎【福田春美さん愛用のキッチンツール/前編】目に見えるものだからこそシンプルに。
◎【福田春美さん愛用キッチンツール/後編】長持ちし、手間が掛かるからこそ愛おしいキッチンの骨董品たち
◎料理研究家・植松良枝さんのこだわりキッチン。選び抜いた道具を生かす収納術とは?

『ku:nel』2021年5月号掲載

写真 伊藤徹也 / 取材・文 原 千香子

 

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