パリの素敵なお宅訪問。祖母から受け継いだアンティークの家具の話。

ソファはクリニャンクールの蚤の市で、カラフルなクッションはインド・カシミール地方の布製。本棚は18世紀のスウェーデン製。どれも心地のいいインテリアたち。芸術家でアンティークが好きな祖母に影響を受けて、アンティークが大好きになったと話すアルメル・ベルトランさんにお話をお聞きしました。

キッチンの棚には、マリアージュフレールで買ったティーポット(水色)や両親が誕生日祝いに贈ってくれたもの(メタル)などを。

アルメル・ベルトランさんは、画家でアンティーク好きな祖母の影響で、子供の頃からアンティークに興味を持っていたそうです。「祖母の家にはアンティークのオブジェやミッドセンチュリーのデザイン家具がたくさん。遊びに行くたびに眺め、大好きになり、影響を受けました。私自身はリヨンのビジネススクールでマーケティングを学び、長らく食品業界のマーケティング担当として働きましたが、やはり好きなものに関わりたいと思い、2015年からパリのオークション会場ドゥルオーでアンティークについて学び、2年後に念願のアンティークショップをオープンさせました」ショップも住居も、昔ながらのパリらしい風情がある17区にあります。20年暮らすアパルトマンは、中庭に面してとても静か。

そこには19世紀初めに建てられたドーム型の鳥小屋が置いてあるので、毎朝小鳥のさえずりで目覚める、うらやましい環境です。もちろん自宅にも大好きなデザイン家具がいっぱい。キッチンにあるグリーンの椅子は1920年代のもので、最初は店の商品として買い付けたものですが、どうしても自分の家に置きたくなったのだとか。

フランスインテリア アルメル・ベルトラン
朝食用のテーブルは花模様のタイルが貼られた六角形の天板が気に入って購入。1920年代のグリーンの椅子とも相性がいい。
フランスインテリア アルメル・ベルトラン
1960年代イタリアのポストモダンを代表する建築家兼デザイナーAfra&Tobia Scarpaがデザインした椅子。
フランスインテリア アルメル・ベルトラン
大好きな祖母から譲り受けたものでまとめたコーナー。19世紀初頭の椅子やランプ、テーブルの上にはアンティークの鏡。
フランスインテリア アルメル・ベルトラン
別コーナーでもディスプレイ用に使っている半円のテーブル。こちらと合わせて丸テーブルとしても使用できる。静物画も祖母の愛蔵品。
フランスインテリア アルメル・ベルトラン
寝室の飾りチェストはダンボール素材で作ったお手製。お気に入りの香水やパウダー、化粧品、アンティークオブジェを飾っている。
フランスインテリア アルメル・ベルトラン
エントランスのクローゼットの上にはアンティークハット。チェアはシンプルな形と発色のいい赤が気に入って蚤の市で購入。
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「シンプルなデザインフォルムの椅子が特に好きなんです。時代や作家の有名無名に関係なく、一期一会の出合いが楽しいから、色、素材、手触りなどに惹かれて、ピンとくる瞬間を大切にしています」長年集めた好きなものは、アルメルさんの暮らしにどんな影響を与えているのでしょうか。「せっかく素敵な出合いがあってこの家に来たんだから、たくさんの好きな家具やオブジェに囲まれて暮らしたいと思う反面、ときどきは整理してモノが溢れすぎない風通しのいい空間を作るよう心がけています。なぜなら〝整理〟することは、心の風通しもよくしてくれるから。職場、人間関係、住空間、何ごとにおいても環境が大切です」その考え方は55年間生きてきて、自分で見つけた答えなのです。

「そういう意味では、この家にはもう少し収納が必要。それとリビングの壁の色もときどき塗り替え、イメージを変えたいと思っています。次は薄いグリーンやオールドローズなど、上品でフェミニンな色にしたいですね。リュクスなインテリアでなくても、自分にとってリラックスできる空間が大切。あれこれをむずかしく考えず、好きなものを整理して置くだけで、自分らしい心地よい空間が生まれます」

『ku:nel』2021年7月号掲載

写真 篠あゆみ/取材・文 今井恵/パリコーディネート 鈴木ひろこ


●素敵なインテリアやガーデン
「買い替え」ではなく「メンテナンス」。「吟味して買い、長く愛用」がいまの気分です。
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