【伝説の家政婦・タサン志麻さんに聞く。料理のコツ②】「私は菜箸1つでほとんどの作業をします」

志麻さんのキッチンには、シンプルな調味料と、数少ないこだわりの調理道具が綺麗に並んでいます。今回はこれらに加え、レシピにとらわれない、五感を使った志麻さんの調理方法と、食材の炒め方のコツをご紹介します。

日本の家庭では、和洋中、いろいろ作るため、調味料の種類も増えてしまい、使い切れないこともしばしば。志麻さんは「中華の調味料は持っていないので味噌で代用したり、調味料の種類を増やさない工夫をしています。フランス料理の基本は塩だけですし、種類はいろいろありますが、それほど差はないと思います。さらさらとした塩をひとつ選んで、均一にていねいに塩をするという、使い方がむしろ重要」。といいます。

調理道具も本当に必要なものだけを厳選しているのは、「道具をたくさん使って料理をすると、その分、洗い物が増えてしまうから。私は菜箸1つでほとんどの作業をしますが、箸だけで割と何でもできるし、さっと洗って次の作業に使える。そうすると、シンクの中に洗い物が溜まらず、すっきりした気持ちでスムーズの料理ができるんです」。後片付けの手間も軽減できそうです。


塩を基本にシンプルに。種類の多さよりも使い方が重要。

〈後列右から〉にんにくはみじん切りにするのとつぶすのでは、香りや味が違うので、料理によって効かせ方を使い分けて。コンソメは誰でも手に入れやすい味の素KKの固形タイプを使用。油は料理に合わせて、香りを立たせたくないときは菜種油を。優しく酸味を効かせたいとき用にリンゴ酢やレモンビネガーなどの果実酢を常備。フルーツで代用することも。香りを生かすときにはオリーブオイル。種類が増えれば増えるほど、それぞれの減り方が少なくなるし、特に油は酸化するので各1種類だけ。エクストラバージンの香りを抑えたいときは、ほかの油で割って使用。粒の黒こしょう。よく使うバターは業務用タイプ。〈前列右から〉ハーブはタイムとローリエ。塩はさらさらとした質感が使いやすい焼き塩で、銘柄にはこだわらない。岩塩はときどき使用。料理に使うのは茶色い砂糖。

本当に使うものはこれだけ。片付けも楽で収納もすっきり。

〈右上から〉新潟の物産展で購入したザル。底に足がないので粉をふるっても粉が溜まらない。ボウルは新潟のconteのまかないシリーズを3サイズ。深さがあるので幅をとらずこぼれにくい。軽くて手入れがしやすく重ねられるティファールの鍋。取っ手を外してオーブンにも。アクを取りやすいフォルムのお玉。まな板は、宮崎の家具店BIKITA Wood Lifeで一目惚れして購入。小ぶりなサイズだからすぐに乾くし、チーズやパン置き、鍋敷きにもなる。ピーラーは皮をむくときのひっかかり具合が重要。いろいろ試して貝印に。包丁よりもペティナイフがコンパクトで使いやすい。長年使い使い込んだ愛用の1本。たいていの作業は菜箸で。切れ味やカットできる素材の太さなどを比較し、いちばん使いやすかった貝印のスライサー。

レシピにとらわれすぎず、五感を使って調理してみる。

調味料をレシピどおりに量って入れていると量ることに一生懸命になってしまいますが、自分の感覚で入れるとその感覚が身につきます。塩でもしょっぱかったら次からは減らせばいいんです。火加減や時間もレシピは目安にはなりますが、コンロや鍋の種類によって異なります。鍋の中の状態を、見た目や音でよく観察することが大切です。

水分と旨みを逃さないために、食材を動かさない。

炒めるときに食材をつい動かしたくなりますが、表面が固まらないうちに動かすと中の水分が抜けて、旨みも逃げてしまい硬くなってしまいます。だから、最初は膜ができるまで動かさずに焼いて、壁をつくる。肉も野菜ももともと水分があるので、焦げにくいはずです。慣れるまでは様子を見ながらでも、無意識にむやみに動かすのは我慢して。

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『ku:nel』2021年5月号掲載

写真 目黒智子、青木和義(料理)、中島慶子(料理)/取材・文  黒澤弥生

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