【麻生要一郎さんの好きなもの】食卓を彩る亡き母の洋皿

麻生要一郎さんのアイキャッチ写真

心の支えとなっているもの、暮らしで頼りにしているもの。「愛するもの」についてのストーリーを語っていただきました。

撮影現場やイベント会場などで、 話題を集めているケータリング弁当があります。手間を惜しまず、心のこもった料理は、食べた人のお腹の底からいたわるような不思議な力が。

それを作っているのが麻生要一郎さん。いくつかの職を経て、料理の道へとたどり着きました。料理の礎をつくったのは、やはり母。

麻生さんのさまざまなジャンルの器が積まれたラフな食器棚
和の骨董、作家もの、洋皿など、さまざまなジャンルの器が積まれたラフな食器棚。自著の撮影も、すべて自分の皿でまかなっている。

「暮らしをとても大事にしている人でした。たとえば、春には玄関にミモザ を飾ったり、四季で絵をかけ替えたり。もちろん食卓も旬の味覚で満たされていて、日々の暮らしで季節感を楽しんでいたんですね」

麻生さんが20歳くらいのころ、水戸の実家の建て替えが行われました。

「新しいキッチンにふさわしい食器を」という母のおともで、新宿のインテリアショップ『ザ・コンランショップ』へ。

そこで買ったのが、グリーンのマーブルが美しいお皿です。ぽってり厚みのある陶器は、柔らかな風合い。「どこのもの」ともいえな い不思議な佇まいは、「独自の世界観をもつ」母の目を引きました。スープボウル、平皿、小皿など、一そろいをセットで購入。以来、家族の食卓を支えてきました。

「シンプル」にはない味わいが食卓で映える

麻生さんお手製のボルシチ
東京に来てからつくるようになったというボルシチ。「夏は冷たいパスタや冷やし担々麺なんかも、 この皿でいただきます」

母が亡くなり、家じまいのとき。たくさんのものの整理をしているなかで、 「手放したくないのはこれ」と持ち帰ったのがこの洋皿たちです。パスタ、カレー、サラダなど洋食はもちろん、和や中華など、どんな料理もなんでもござれ。

白いシンプルな器が「盛りつけやすい」と重宝される風潮ですが、麻生さんは一蹴します。

椅子に座って微笑む麻生要一郎さん
麻生さんの料理からは、食卓の和やかな風景も伝わってくる。やさしく味わい深いエッセイも、多くの人の心を惹きつけている。

「確かに『懐は狭い』器なんです。マーブル模様は独特で、ちょっとトゥーマッチな感もある。だけど、家で食るごはんだし、それでいいんです」

1990年代、素敵な空気に満ちた新宿のインテリアショップで食器を買った、「あのとき」のウキウキ感。それも含めての、大切な宝物なのです。

『クウネル』2022年7月号掲載

写真/有賀傑、取材・文/鈴木麻子

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