ジェーン・バーキンの飾らない自然体が何よりの魅力。パトリス・ジュリアンさんが憧れる【素敵な大人たち】

ジェーン・バーキン

揺るぎない信念、洗練の美意識、孤高の精神、慈しみの心……自分のスタイルを持つ素敵な大人たち。人生の先輩や、生き方のお手本など、各界で活躍する方々のそれぞれの視点から憧れの人をうかがいます。今回は、パトリス・ジュリアンさんが憧れるジェーン・バーキンについて。

語ってくれた人

パトリス・ジュリアン

パトリス・ジュリアン/ぱとりす・じゅりあん

作家・料理人

1952年モロッコ生まれのフランス人。フランス大使館文化担当官として来日。複数のレストランを営み腕をふるった後、現在は京都・宮津を拠点に活動。レストラン「メゾン・ジュリアン」を営む。

ありふれたものをエレガンスに昇華させる稀有な才能。

生活はアート。日常のありふれた時間やルーティンである家事を、自分の感性と愛をもって楽しむプロセスがアートであり、それこそが豊かな暮らしというものだ──。いまでこそ多くの女性たちに支持されている、そんな考え方を30年ほど前にはすでに提唱していたパトリス・ジュリアンさん。フランスでは根付いていた「暮らしを楽しむ」という余裕を、日本の私たちに教えてくれました。

そんなパトリスさんが憧れ続けている女性が、フランスのスタイル・アイコン的存在のジェーン・バーキンというのは、やけにしっくりきます。肌になじんだ白いTシャツやデニムに、ノーブランドのバスケット、そしてクシャッと気取らない笑顔……。ありのままの自分を愛し、日々の瞬間を感性で慈しむ、そんなジェーンのスタイルは、「生活はアート」の美学と交差します。

「ロンドン生まれのジェーン・バーキンがフランスで知られるようになったのは1968年、学生運動が盛んな時期。当時16~17歳だった僕には、鮮烈に現れた新しい時代の流れ星だった」

ジェーン・バーキン

1984年、38歳の時のパリの街角で。ベビーカーを買い物かごがわりにしているお茶目な1シーン。食材とともにレザーバッグも無造作に積まれている。キャメルカラーのロングコートの着こなしはさすが。
©Roger-Viollet/アフロ

ジェーン・バーキン 俳優
1946年ロンドン生まれ。歌手・俳優・モデルとして活躍し、2023年に亡くなる。1960年代に映画デビュー後、フランスへ渡りセルジュ・ゲンズブールとのデュエットや映画出演で脚光を浴びる。気負わないシンプルな着こなしや、自分らしい生き方は「永遠のスタイルアイコン」として世界中でいまも愛されている。

それまでフランスでスターといえば、女性的な美しい肉体、豊満な胸とヒップが人々を魅了したブリジット・バルドーが筆頭株。それとは対照的なジェーンのヘルシーな姿は、新しいセクシーさの価値観をもたらしたと、目を輝かせます。同じくフランスのスタイル・アイコンであるセルジュ・ゲンズブールとの素敵な化学反応もパトリスさんをワクワクさせる要因でした。

「僕のような若い世代には、彼らはライフスタイルのランドマークであり、新しい自由の象徴に見えたよ。ジェーンは今までにないパーソナリティや、ユーモアセンスがあり、そして飾らない自然体が何よりの魅力だった。一部ではカリスマ性がない、歌の才能がないと言われもした。それでも、自分の本質こそがタレントであると証明してみせたのさ」

女性の成熟パターンは1つじゃない。

ジェーンといえば〈エルメス〉が彼女のためにつくったバッグ「バーキン」が有名ですが、「彼女の魅力を際立てたのは、むしろもう一方の象徴であるかごにあるのでは?」と言います。
「エルメスを持ち歩くまで、彼女は素朴なマルシェかごに荷物をまとめて持ち歩いていたんだ。モロッコの市場では、それこそ数百円で売られているようなかごだよ。おしゃれ好きな若い女性が、しかもトップスターだというのに、飾らないにもほどがあるよね。特別でもなんでもないものを、エレガンスに昇華させてしまうのも彼女ならではじゃないかな?」

若いときの弾けるような美しさにもときめいたけれど、顔に自然なシワを刻み、落ち着きとチャーミングさを同居させていた後年のジェーンも、私たちファンを魅了しました。

「少女から大人の女性に変わっていく過程の魅力もあるけれど、彼女はなんら変わっていないように僕には見えたよ。ずっとフレッシュなハーモニーを保っているように思えたんだ」

若さがもてはやされがちな日本とは異なり、「大人である」ことを尊重し、それを「特権」として楽しめるフランス。年を重ねることで得られる知性や経験、洗練こそが美しいとされているようです。

「年を重ねることを成熟とも表現するけれど、女性の成熟パターンは1つじゃない。実にさまざまなスタイルがあるから面白い」

フランスで最も好まれる成熟とは、自分のオリジナリティを表現する女性で、逆にみんなと一緒であることや、「真似」はあまり評価されないのだと説明します。

「僕の中では成熟は目標ではないんだ。さまざまな人生経験を経て、生活しながら最終的に出てくる答えこそが、エイジングの結果だと思う。年を重ねるほどに自由になり、自分を出せるんだから、年を取ることはネガティヴにならないのです」

『クウネル』2026年11月号掲載
取材・文/鈴木麻子

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『クウネル』NO.141掲載

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