都内でギャラリーを営む小沼訓子さんの住まいは、 子どもの成長や家族の変化に合わせて変化する家です。
小沼訓子/こぬまのりこ
東京・馬喰町のギャラリー&ショップ「組む東京」主宰。国内外の手仕事を紹介するほか、企画展やイベ ントの企画・運営を行っている。www.kumu-tokyo.jp
夫が作った家具を置いて。
東京の築地近くで生まれ、幼少期を過ごした小沼さん。いわゆる古い木造の家だったけれど、雨や風の音を感じ、陽の入り方や沈み方が分かる家だったと振り返ります。
「小学校に入るころ引越しをして鉄筋コンクリートのビルに住まいが変わりました。子ども心ながらに変化を感じたように思います。いまの家は風が流れ、陽の動きや四季の移ろいが感じられます。無意識に生家のような居心地のよさを求めたのかもしれませんね」
ベースの設計は友人の設計士が考えてくれました。
現在の住まいは木漆芸作家である夫の実家を増築する形で25年以上前に建 てたもの。1階が工房で2階が居住スペース。階段を上がると天窓から光が 差し込む中間拠点のようなスペースがあり、左側がリビングダイニング、右側がふたりの娘さんたちの部屋、その奥が夫婦の寝室となっています。
広さがあることもありますが、リビングにロフトがあったり、子ども部屋の個室の上が屋根裏のようなスペースになっていたりと、ほかにはない面白い造りに見ているだけでもワクワクします。
「ベースの設計は友人の設計士が手がけてくれましたが、ロフトや棚、娘たちの部屋はすべて夫が作ったんです。 もとは壁や仕切りがないシンプルな箱のような間取りだったのですが、家族の成長や暮らしに合わせて変化してきました。この春、大学生の娘ふたりがともに独立したこともあり、また変わ っていくと思います。あらためて、家は生き物だなと感じさせられますね」
また、小沼さんが部屋づくりで大事にしているのが素材感と、それらをミックスさせることだそう。布や木、金属、ガラスなど、さまざまな質感のものが部屋のなかにありますが、その合わせ方が実に絶妙です。
「布の柔らかさやしなやかさ、無垢材の気持ちよさ、金属やガラスの美しさや質感など、それぞれの持ち味が少しずつ重なり合わさることで空間ができ上がるように思います。そのバランスを整えることで、目に見えない空気感が生まれるのではないでしょうか」
『ku:nel』2021年7月号掲載
写真/近藤沙菜、取材・文/結城 歩
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