<クウネル・サロン>プレミアムメンバー青木美詠子さんの<50代からの生き方>について考える連載。「これから」について、うっすら不安を感じながら暮らしている青木さんの、そんな不安を飛ばすような没頭時間について考えます。
小さな幸せ、大きな幸せ、どっちも大事
あなたが心から楽しいと思うのは、何をしている時ですか?今後の人生にうっすら不安を抱えている私にも、たくさんのそういう時があります。ごはんの用意が完了し、さあ、食べよう!という時。夜、温かい布団に倒れ込む瞬間。お日さまの匂いの洗濯物に顔をうずめる時。時間がたっぷりあって、ここを片付けるぞ!と物を全部出した時。知らない街をあてもなく散歩し、新しいお店を見つけていく時などなど。
またそういうささやかな楽しさより、もっと巨大な楽しさと思うものも数々あります。私は昔から何かに徹底的にはまる性格のようで、夫の影響から見始めた競馬で、ある騎手を追っかけ、全国の競馬場で必死に応援してたこととか(のちに競馬雑誌に連載でき、その方のインタビューもできたのは信じられない幸運でした)。またNBAにはまって、夫とマイケル・ジョーダンを見にシカゴまで行ったことも。SMAPのコンサートにも十数年、全国あちこちへ(これも夫と)。
1 6年前には旅先のハワイで、ふとテレビで見たWBC(野球の世界一決定戦)にふたりではまり、興味ゼロだった野球にどっぷり。徐々に楽天イーグルスのファンになり、東北にも何度も行きました。そこで好きになった選手の移籍にともない、今は夫婦でオリックスバファローズの大ファンです。2年連続最下位で負けてばかりの弱小チームが25年ぶりにパ・リーグで優勝した昨年、「うわあ、こんな試合を勝った!」、「なんで11連勝もした?」など驚きながら、味わったことのない感動を体験できた1年でした。
去年、東京はコロナ禍で入院する病院もなく、救急車さえ断られるかもという暗い事態。そのニュースは恐ろしくて見られないほどでしたが、このスポーツの応援に本当に救われました。オリンピックの野球ともども、ここに気を取られてなかったら、私はどれだけ鬱々とした気持ちになっていたことでしょう。
好きなことはずっと味わいたい
野球シーズンの最後は「この試合落としたら、ほぼ終わり」という時も多く、心臓が口から出そうになりつつ見ていたのですが、それを乗り越えて奇跡的に優勝した瞬間は、本当に幸せでした。翌朝、夫と自転車で買い物に行ったのですが、「ああ、本当に優勝したんだ。空が青いなあ。木々がきれい。みんな嬉しいだろうな。私、幸せだ」と心から思え、不思議でした。たかが野球のことで、ここまで幸せな気持ちになるのって、「これっていったいなんなんだろう」と。この心のしくみを誰かに教えてほしいです。
また試合中は、ただ「勝って!」としか考えていないことにも気づきました。その時には人生への不安なんて、どこかにふっ飛んでいます。未来への心配も過去への後悔も、その時間にはまったく存在しないのです。ときに私はずっと瞑想(自己流)がうまくできず、良さがわかってないのですが、他のことを何も考えず、今に集中するという意味では、この時間は「逆瞑想」とでも呼びたいくらいです(違いますけど)。
私はそういう時間が大好きで、かけがえのないものと思い、それを死ぬまでにたくさん味わいたいと思っているのです(スポーツというわけではなく、ぜひ自分の好きなものに置き換えて考えてみてください)。
薄い不安を背負いながら、幸せのしくみについて考える
そしてその幸せのしくみを考えるにつけ、「この気持ち、なんなんだろう」というくらい、はまるものを持つって、老後の大きな助けになるんじゃないかと気づきました。それは不安が入り込めない瞑想的な時間をくれ、他では味わえない幸福感で包んでくれます。
今そういうものがない方でも、ある日「これにはまってしまった」ということは、何歳になってもあると思います。BTSにはまって幸せという89歳の女性のTwitterを時々見ているのですが、「楽しそう!」といつも思います(太極拳や麻雀もされています)。もちろんそうじゃなきゃ幸せじゃない、ということではなく、穏やかな日々の楽しさをじんわり味えたら、それも同じですよね。でも多方面に首を突っ込んでみるのも、新しい出会いがあるかもしれません。
自分の人生がつらく、しんどいばかりでは、やりきれないですよね。忙しくて時間がない方も、たとえ5分、10分と短い時間であろうと、好きなもののことを考えるだけでワクワクや元気がやってきます。あとは時を忘れるので、時間のやりくりだけが問題ですが、とにかく楽しい人生のほうが楽しいのです。それは真実。私は薄い不安を背中にしょいながら、その何も考えない楽しい時間にスケボーのように乗り、シュパーッと生きていけたらと思い始めました。
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