ドイツやオランダなどヨーロッパは自転車先進国が多く、「交通の足」として自転車は活躍しています。ですが、意外にもパリでは、自転車文化がそこまで発達していなかったのだそう。ところが、このところ急速にユーザーが増え、道路などの整備も進んでいる様子。松永さんがそんな「自転車革命」についてレポートします。
いま、パリでは自転車ユーザーが急増中。もともと自転車を利用している人たちはいましたが、その数が一気に増え、街の景色を変えるほどです。
日本と韓国(パリに来る前に暮らしていた)で、自転車愛用者だった私。パリ生活を始めた当初は「さあ自転車を乗りまわすぞ」と張り切っていましたが、「外に置いたら一瞬で盗られるよ」「交通ルールを違反したら即罰金だからね」という周囲からの忠告にびくびく。確かに、自転車は車道を走るため、進入禁止など一部ルールは自動車と同じ。大きな交差点の真ん中で大型車と並んで信号待ちをしながら「あれ、いま私、自転車に乗ってるんだよね?」と自問自答することもしばしば。また、自転車置き場は無防備な路上ばかり。アパート内にも駐輪場がないケースがほとんどで、折り畳み自転車や公共レンタルサイクル「velib」の利用者が多く、私もその1人です。
そんなわけで、フランス政府が環境汚染対策の一環で自転車を推奨し、ユーザーは増えつつあるものの「利用しやすさまであと一歩」という状況の中、2017年、パリ市長が市民の自転車利用を促進するために壮大な「自転車専用レーン整備計画」を掲げ、同時に「公共レンタルサイクルの拡充」もスタート。パリの「自転車革命」の幕が上がりました。
しかし、整備のためにレンタルサイクルステーションが閉鎖し、街中が道路工事で交通渋滞に。さらに、相次ぐ大規模なデモとストで、市内は大混乱。当時は「徒歩が確実で1番早い」と、誰もがスニーカー姿で闊歩していました。それでも「やるときはやる」のフランス魂で、容赦なく車線は減らされ、大通りにの真ん中にはポールが立ち、次々と自転車専用レーンが設置されたのです。(但し、レンタルサイクルの整備は大幅に遅れ、その間にレンタル電動キックボードが台頭。こちらは路上放置や事故多発で大問題になりました)。
そんな自転車環境が整ってきたところに、コロナが直撃。感染リスク回避のために、メトロやバスから自転車移動に乗り換える人がどんどん増えて、パリ市の「自転車革命」は推し進めて大正解だったという結果に。現在も専用レーンの工事が急ピッチで進められていますが、その一方、あまりにユーザーが急増したため、交通ルールがおざなりになっているのも事実で、これからの課題になりそうです。とはいえ、私が初めてペダルを漕いだ5年前とは比較にならないほど、自転車が走りやすくなったパリの街。おしゃれなデザインを目にするたびに「そろそろ私も自分の一台を」と、ちょっと夢見たりしています。
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