【後編】雑用だって宝探し。ようやくたどり着いた自分の道は、パリの衣食住を体感できる雑貨店。

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ファッション、カフェ、そして雑貨と、これまで衣食住に関わり続けてきた『マムール』オーナー店主・名津井麻真さん。彼女のこれまでのヒストリーをご紹介する後編です。※【前編】はこちら

「メゾン・ドゥ・ファミーユ」の仕事を終えた名津井麻真さんは、自身のカフェに専念します。次の大きな転機は、40代後半でした。
「世の中が変わってきたし、私ももうすぐ50歳。自分自身の体力も不安になったし、‟雇用する”という責任を重荷と感じるようになってきました」
それまではカフェで働いてくれるスタッフのために、自分もがんばらなきゃと気持ちを奮い立たせていましたが 「いつの間にか仕事が、楽しさから〝義務〟に変わってしまい、もっと自分の〝好き〟を追求したいと考えるようになりました」

その、好き……を考えぬいた末、やはり衣食住に関わり続けたいと思い実行したのが、フランス雑貨を扱う店「マムール」の開業でした。
「カフェをリノベイトし、同じ場所での開業です。スタッフは雇わず、気ままに私一人でやっていこうと。自分が好きなフランスの老舗メーカーのファブリックや磁器、ガラス、雑貨を扱うのと同時に、年に2、3回は店を閉めて渡仏し、ブロカントなどで私自身が探したアンティークも置いています」

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「メゾン・ドゥ・ファミーユ」の立ち上げ時に、パリで同僚として働いたキャロリンの家。パリでは必ず訪れる場所だという。インテリアに関わる仕事をしていたキャロリンならではのホームスタイリングを見るのも楽しみ。
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1977年創設の「オー・バン・マリー」は大事な取引先。展示会帰りのマダムと久しぶりに再会。
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世紀の挿絵画家グランヴィルのデザインを施したプレートを、ブリキ製で復刻したものを仕入れた。
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好きなものを並べ、商品への愛情や使い勝手を説明しながら販売するのは想像以上に楽しい作業でした。長年培ったセンスでディスプレイも工夫して見栄え良く、手に取りやすいように。日本各地の百貨店で開かれるフランス展などにも出店し、マムールのファンは日本中に広がっています。 「買い付けや出店で店を閉めるので、お客さまにはご迷惑をおかけしますが、店主の私とお客様の一対一の関係があるので、なんとかご理解いただいています。また店が目黒通りの路面店なので、やっていける部分もあるかと」

一見気ままなフランス雑貨店の経営ですが、裏を返せば頼れる人は自分以外にいないということ。
「年に数回の買い付けは、もちろんひとりです。想像以上に地味で多忙ですよ。毎日取引先の方と商品決めの相談をしたり、展示会を回って商品をセレクト。ホテルでは梱包や配送の手続きで、寝るのは毎晩夜中。帰国したらしたで、届いた荷物の梱包を解き、ブロカントの品は汚れを磨いたり、値付けしたり。そういう雑用も自分のペースでできるからか、今は気持ちが楽で、仕事が楽しいんです」

20代のころから一貫して衣食住に関わり続けている名津井さんの人生。 「仕事にはひとつも無意味なものはありません。〝雑用〟と呼ばれたアシスタント業務も、宝探しだった気がします。その雑用でいろいろなことが学べましたから。あとは辛くても続けたフランス語。そのおかげで、今、楽しく仕事ができているのかなと思います」

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パリのお父さんと呼ぶ、メゾンドゥ ファミーユの元アートディレクター、フェランさんの車でブロカントを回り、買い付けた品物を梱包作業中。
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2020年1月、買い付けで訪れたパリはストの真っ最中。「あちこちが通行止めで、タクシーもバスもあてにならないので、とにかく歩きました」。ホテルはサン=ジェルマン界隈に取り、精力的に動いた。
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ホテルの部屋で、アポ取り作業や出荷の書類作りに追われる名津井さん。
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