写真に造詣が深く、関連した著書も多い大竹昭さん。 写真は深く入り込むことで見え方が変わってくると言います。 見ることの意味を問いかけてくる写真について聞きました。
大竹昭子/おおたけあきこ
ノンフィクション、エッセイ、小説、写真評論など幅広い分野で執筆活動を行う。インタビュアーとしても活躍中。最新著書『いつもだれかが見ている』
スマホの普及で誰もが日常的に写真を撮る時代。「でも撮ることに夢中で、見ること自体はかつてないほどおろそかになっている」という大竹昭子さん。選んでくれたのは、見ることの意味と力を考えさせる写真集です。
『HO GHOST HO』 高橋恭司
高橋恭司の『HO GHOST HO』は花や人物、建物、風景などさまざまな被写体が時系列もバラバラに並んでいます。
「意味を求めようとすると当惑させられる写真群だけど、美を感じます。そ れは被写体が放っている波動に写真家が反応しているからだと思うんです。目 になりきって撮っている、その力です」
『まだ見ぬソール・ライター』
ソール・ライター、マーギット・ アーブ、マイケル・パリーロ
『まだ見ぬソール・ライター』はNYで活躍した彼の膨大な未発表作品をアーカイブ化する中で編まれた作品集です。
「車の窓から、物陰から、何かの隙間から、のぞき見するように撮っていて、 こんなフレーミングもアリなんだ!と驚きます。雪の中の赤い傘や通り過ぎるタクシーの黄色などもチャーミング。都市の哀愁がでてますね」
『After the Thaw 雪解けのあとに』
米田知子
この二人が気持ちのまま、感覚の網にかかった対象にシャッターを切るの に対し、3冊目の米田知子は歴史的な出来事のあった場所を事前に綿密に調 査。キャプションには土地の詳細が記され、その意味に重きが置かれます。
「どんなに悲惨な出来事の舞台でも写真自体は静かで美しい。その落差が、見るとはどのような行為だろうと問いかけてきます。撮り方も出会い頭にシャッターを押す前者二人と違って、対象ににじり寄っていく気配があり、写真と言葉の関係を考えさせます」
取材・文/丸山貴未子 再編集/久保田千晴