マチュア世代の青春のときめきが詰まった街、原宿・表参道エリア。住民、商業者、観光客などさまざまな立場の人が一体となり、多様性を受け入れて異なる価値観を楽しむ地域性が、独自の流行を生む力となりました。この街を支えた、5つの通りの歴史を深掘りします。
流行の最先端が集い、時代を超えて花めく大通り「表参道」
大正9年、明治神宮の参道のひとつとして開通した表参道。このエリア最大の商店街である原宿シャンゼリゼ会(現・原宿表参道欅会)の協力のもと、電線の地中化やケヤキの植樹など美しい景観づくりが進みました。1950年代後半には、米軍向けの集合住宅「原宿セントラルアパート」が竣工し、日本の文化人が住み始め若者たちが憧れる通りに。また、1970年代後半から20年間続いた歩行者天国も、表参道に人が集まる理由となりました。近年は大型商業施設「表参道ヒルズ」や高級ブランドの路面店が立ち並び、流行発信地として多彩な文化が存在しています。
渋谷川の上に造られた裏原系の聖地「キャットストリート」
明治通りと並行に走る、全長約1キロの遊歩道。表参道にまたがり、原宿と渋谷を結びます。この通りがきれいに舗装されたのは、昭和42年のこと。諸説ありますが、遊歩道沿いに猫が多く住み着いていたことが通りの名の由来とされています。表参道より北側は裏原系ファッション発祥の地としても知られ、1990年代後半から2000年代前半にかけて人気を博したストリートスタイルのブランドをはじめ、人気セレクトショップや老舗の古着店が立ち並びます。
アメカジを広めた伝説店の面影が残る「神宮前上通り」
全長約200メートルの神宮前上通り、通称・旧プロペラ通り。平成15年に惜しまれながら配転した、日本におけるアメカジファッションの草分け的ショップ「プロペラ」の栄光が通りの愛称として残り、今もアメカジ好きの間で語り継がれる聖地となっています。現在は有名ストリートブランドの直営店や人気スニーカー専門店がひしめき合い、流行を追い求める人の長蛇の列はこの通りの名物に。
“KAWAII文化”が生まれた、原宿の玄関口「竹下通り」
明治通り沿いにあった複合ビル『パレフランス』が開業した昭和49年が、竹下通りが商店街として歴史をスタートした元年とされています。1970年代から1980年代には、クレープ店やタレントショップが続々とオープン。2000年代に突入すると、安価なバラエティショップや古着屋が、デコラなど個性的なファッションを楽しむ若者たちの行きつけとなりました。2010年代以降、きゃりーぱみゅぱみゅに代表されるKAWAII文化の発信地に。東京環境の定番スポットのひとつとして、世界中から脚光を浴びています。
レアな古着が集まるマニア固唾のストリート「原宿通り」
神宮前3丁目を縦横に通る原宿通り。うち明治通りに沿って走る路地は、“とんちゃん通り”という愛称で親しまれています。由来は、昭和38年に創業した大衆居酒屋『とんちゃん』。地元の人からファッション関係者まで、多くの人で賑わった名店です。竹下通りに比べて家賃の相場が低かったため、1990年代後半からは小規模な古着店が軒を連ねるように。ヴィンテージ品に付加価値をつける文化は、この通りから世界に発信されました。
Text:Ryuto Seno Edit:Momoka Oba
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