ヴィンテージマンションの一角に店舗兼自宅を構えている田中靖子さん。 住まいも暮らしも「こだわりを持ちすぎない」ことが自分らしさです。
田中靖子/たなかやすこ
アトリエ ランジュパース店主。フランスを中心としたヨーロッパで買い付けたアンティークのリネンや食器、 小物類のほか、個人のアパレルブランドの衣類などを販売している。 Instagram:@langepasse1986
東京・吉祥寺でアンティークショップを営む田中靖子さん。お店 を始めたのは1986年のこと。吉祥寺から始めて青山に移転、そしてまた、現在の吉祥寺に移ったのは3年ほど前のことだそう。
「老朽化したビルの建て替えに伴って場所を変えざるを得なくなってしまって。その当時、自宅は杉並のマンションで庭付きの1階だったのが気に入っていたんですが、歳を重ねたこと、パートナーが体調を崩したこともあって店舗も自宅もコンパクトにと自宅兼店舗という形にたどり着きました。
吉祥寺は幼少期に暮らしていたこともあり、お店を始めたのも吉祥寺だったのでなじみ深いんですね。結局また、この場所に戻ってきてしまいました」
床や壁も変え、棚を作ったり扉をつけたりと手を入れました。プライベー トのスペースは奧の二間だけ。キッチンやダイニングは店舗とプライベートスペースを兼ねています。
「誰かの家に遊びに行くように気軽に来ていただけたらうれしいですね。本棚には私の好きな本を並べているんですが、一人がけのソファで読書されるお客さんもいるんですよ」
どこを切り取っても独自のセンスにあふれていて実に絵になります。お店 を始める前は料理の仕事をしていたという田中靖子さん。パリのレストランで働いていたこともあるそうで、なるほど、お店の内装はどこかパリのアパルトマンを思わせるような雰囲気です。
「フランスではキッチン付きの屋根裏部屋を借りていたこともありました。 狭かったけれど趣があって楽しい暮らしでしたね。お店に並べているものはフランスを意識しているわけではないんです。
古いものや小さなもの、手仕事のものが好きで、気づいたらそれらが集まってきて。どこそこのものとか〇〇風ということに囚われないようにしたいと思っています。
それはお店のことだけでなく暮らしや生き方も然り。何にも縛られることなく自由にありのままできればいいですね」
写真/近藤沙菜 取材・文/結城歩 再編集/久保田千晴