出合ってしまったら連れて帰らずにはいられない偏愛アイテム。 厳しい眼でセレクトし、大切にしているグッズなど、 愛してやまない「もの 」にまつわるストーリーをとっておきのコレクションとともにご紹介します。
石川三千花/いしかわみちか
イラストレーター
映画、ファッション批評のイラスト&エッセ イの第一人者として知られる。『石川三千花の勝手にシネマ』ほか著書多数。大学生にな った双子の息子たちが巣立ち、家具デザイナーの夫、保護猫ネコゾーと暮らす。
愛情は深まるばかり、 大好きな「もの」がたり
ポップでカラフルなイラストでおなじみの人気イラストレーター石川三千花さんがパリに住んでいたのは20代前半の頃。学校の行き帰り、毎日のように通ったカフェで魅了されたのが、タバコやお酒メーカーのロゴが印字されたノベルティグッズでした。
「当時のカフェにはタバコ屋が併設されていて、出入りしているメーカーの灰皿や水差しなんかのグッズが置いてあったの。商業的なロゴなのに色使いや書体がすごく洒落ていて驚きました」
「私がパリに住んでいた70年代はすでにプラスチックのものが使われていたんだけれど、50年代〜60年代くらいのさらに古いものは陶器やガラスで作られていて、機能的なデザイン、質感や色合いがたまらなくて。マレー地区のヴィンテージショップで見つけたときは、 狂喜乱舞して買い集めました」
パリで暮らし始めた頃は、メニュー表や砂糖の包み紙ですら、大事にコレクションしていたという三千花さん。
「日本にはない、カラフルな色使いやロゴデザインにインスパイアを受けた んですよね。タバコのパッケージひとつとってもすごく洒落ていたの」
ブルーのパッケージに惹かれて 『GITANES(ジタン)』のタバコを吸っていたという三千花さんですが、タバコを卒業してから、灰皿はアクセサリー や鍵などを入れる小物入れに。
「色がきれいなタバコメーカーの水差しは、花を生けて飾っています。看板 やポスターも好きで集めていたのですが、カフェグッズは飾るだけじゃなく、 生活の中で使えるのもいいところ」
カラフルなブリキの缶やグラスなどのカフェ関連のグッズは、パリやロンドンの蚤の市やヴィンテージショップ で少しずつ買い集めたのだそう。
「蚤の市では値段交渉の駆け引きも楽しみのひとつ。価値がよく分かっていないおばちゃんがあっさり値下げに応じてくれたりして。ガラクタみたいに 見えるものもあるかもしれないけど、 私にとってはどれも大切な宝物です」
『クウネル』2022年7月号掲載
写真/玉井俊行、 取材・文 吾妻枝里子