在パリ6年のクウネル・サロンメンバー松永加奈さんのフランスレポート。今回のテーマはパリのカフェのおなじみの景色について。カラフルなラタンの椅子、特定のメーカー製のものなんだそうです。
パリといえば、何を思い浮かべますか?エッフェル塔、凱旋門、セーヌ川、古いアパートに石畳…。そして、人々が集うカフェやビストロのテラスも、街の景色に欠かせない存在です。
そのテラスを彩っているのが、カラフルな籐の椅子。さまざまな色で編み込まれたシートが特徴的で、レトロな雰囲気は店先にぴたりとハマっています。これらを作っているのは主に「Maison Drucker」(メゾン・ドリュッケー/創業1885年)「Maison J Gatti」(メゾン・Jガティ/創業1920年)という2大老舗メーカー。ベースとなる籐を曲げて形作り、シート部分を樹脂素材のテープで編み込むのは全て手作業で、1つ出来上がるまで6時間かかるんだとか。大量に積み上げやすい軽さとデザイン、風雨にさらされても意外に傷みにくいという丈夫さで重宝されているあの椅子は、実はかなりの手間がかかっている逸品なのです。
そしてどの椅子も同じように見えながら、中には安価な輸入品も多数存在します。意識して座ってみると、凝ったデザインやしっかりと組まれた脚などに作りの違いを感じるのですが、他にも違いをお知らせするポイントが。老舗メーカーのものは、製造者が刻印されたメタルプレートが背もたれの後ろに付いているのです。このことを知ってからテラスに座るとつい「あ、Maison J Gatti製だ」と、こっそり背面をチェックしています。籐×樹脂素材以外に、外に対応した素材を使ったものもあるようですが、パリには編み込みの椅子が合うような?やはり、そこはかとなく漂うレトロな味わいが、街に溶け込んでいるからかもしれませんね。
ちなみに老舗のお値段は、デザインやオーダーメイドかどうかによって変わるようですが、1脚100~800€くらいだそう。以前、イベントで展示販売されていたものも1脚400~500€。それまで「ちょっとチープな感じでかわいいから家に揃えちゃおうかなー」と気軽な椅子感覚でいた考えを改めたのでした…。