【中野翠のおすすめシネマ】映画『TAR/ター』で魅せた圧倒的なケイト・ブランシェット、その魅力にホレボレ!
映画『TAR/ター』で、天才的な女性指揮者の葛藤と狂気をあの名女優が熱演。オスカーは彼女にこそふさわしかった!?
PROFILE
中野翠/なかのみどり
コラムニスト。まんまと花粉症に。クシャミ、鼻ミズ。涙目。試写会に行くのも、はばかられて。テレビで懐かしの昭和映画(DVD)を観てウサ晴らし。
映画『TAR/ター』
3月のアカデミー賞授賞式……。主演女優賞は『TAR/ター』のケイト・ブランシェットが有力視されていたのだけれど、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨーということになった。私は、いまだに納得いかない。オスカーは『TAR/ター』のケイト・ブランシェットのほうに行くべきだったと思っている。『TAR/ター』はフィクションではあるけれど、芸能・芸術の世界では、ありそうな話……。
ストーリーをザッと紹介すると……指揮者であるリディア・ター(ケイト・ブランシェット)は権威あるベルリン・フィルで、女性として初めての首席指揮者に任命される。
野心は満たされたものの、さてイザとなると不安が……。録音もされることになるマーラーの『交響曲第五番』をはじめ、新作の指揮も予定されているのだ。俄然、心が乱れてゆく……。
そんなターを支えているのが、ヴァイオリン奏者のシャロン(ニーナ・ホス)。ターとシャロンは同性カップルであり、養女のペトラをいっしょに育てているのだった。はたしてターは、この精神的な危機を乗り越えられるのだろうか?……という話。
「大人」のクール・ビューティであるケイト・ブランシェットが役柄ピッタリ。指揮のテクニックに関しては、私はまったく無知だけれど、きっと正確に、ほとんどプロ並みに振っているのだろうと、安心して観ていられた。さらに同性愛者という役柄も違和感をまったく感じさせなかった。ストレートの長い金髪にスッキリしたパンツ・スーツでタクトを振る姿、カッコいい!
『TAR/ター』
監督・脚本・製作/トッド・フィールド TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー 配給:ギャガ
こんな旧作も気になります。彼女の名演が記憶に刻まれた、女同士の心理サスペンス
ケイト・ブランシェットの名を頭に刻みこんだのは『キャロル』( ’15年)だったと思う。 ’50年代のニューヨークを舞台にした、女の同性愛映画。その方面にはあんまり興味がないはずの私も惹きこまれて観た。
デパートの店員として働き、フォトグラファーになることを夢みているテレーズ(ルーニー・マーラ)は、ある日、キャロル(ケイト・ブランシェット)という人妻と出会う。テレーズには恋人もいるというのに、同性のキャロルに強く惹かれてゆく……。心理的なサスペンスばかりではなく、ファッション性もたっぷり。
原作は偉大なる女性作家パトリシア・ハイスミス!というわけで、女の実力たっぷりの映画になった。
『クウネル』2023年7月号掲載
文・イラスト/中野 翠
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『クウネル』No.121掲載
料理好きな人のいつものごはん
- 発売日 : 2023年5月19日
- 価格 : 980円 (税込)