料理本は凝った料理を作るためでなく「読む楽しさ」主体で購入するという作家で料理家の樋口直哉さん。実用的だけでなく眺めているだけでお腹がすいてしまう3冊をご紹介!
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【お腹がすく本4冊】料理家・作家 樋口直哉さん「おいしい料理本の世界」前編
樋口直哉
作家、料理家。服部栄養専門学校卒業。フランス料理店や料理教室などで修業する。2005年『さよなら、アメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、作家としてもデビュー。『おいしいものには理由がある』や『新しい料理の教科書』(マガジンハウス)など料理関係の著作多数。本誌連載も好評。
カッコいい先駆者の食の近況
『毎日が最後の晩餐』
玉村豊男
〈この本は、妻に言われて毎日のレシピを書き遺した、老人料理の本である〉。玉村豊男さんの最新刊には「人生の最後にどんなものが食べたいか?」という、いわゆる「最後の晩餐問題」 の模範解答があった。その食事が『トマトのロースト』『ギリシャ風ムサカ』『ボリート』(茹で肉)という具合にいちいちカッコいい。可笑しかったのは〈最後の晩餐で、ダイエッ トをする奴はいないだろう〉という下り。ダイエットはいつも明日から。〈が、毎日が最後の晩餐なのだから、「俺たちに明日はない」のである〉と綴るのがカッコいい。こういう風に自分もなりたい、と僕は思い、そのために毎日いいものを食べよう、と決意した。(天夢人刊)
眺めるだけでも楽しくなる
『パリの小さなキッチン』
レイチェル・クー
たくさん本を出しているレイチェル・クーの一冊目。NHKの番組やNetflixやAmazonなどで配信されている番組でも彼女の姿をよく見かけるが、一冊目の本にすべてが詰まっているように思う。マレーシアとオーストリアの血を引き、イギリスで育ち、パリで料理を勉強して……という背景を持つ彼女が作る料理はフランス料理をベースとしながら、文化が溶け合ったポップなもの。「ウサギのレバーパテ」「鹿肉のミニパイ包み」なども載っているけど、料理本は眺めるだけでもいいもの。旅をするようにページをめくるのが楽しい。(翔泳社刊)
料理本のおいしい味見もできる
『私の好きな料理の本』
高橋みどり
フードスタイリスト、高橋みどりさんがご自身の好きな料理本を計72冊紹介する本。一冊の本から著者の思い出が綴られ、歴史が紐解かれ、レシピの秘密が解き明かされる。料理本を味わう料理本といったところ。食卓は食べる場でもあるが、語る場でもある、とつくづく思う。人は食べなければ生きていけないが、同じくらい言葉を必要とする。本書でも言葉と食のあいだを往復しながら、それぞれの人が生きてきた時間が語られる。その文章が心地よい。 料理本が好きな人であれば、どの章から読んでも楽しめるので、夜寝る前にパラパラと読むのがいい。(新潮社刊)
エッセイ 樋口直哉 / 写真 徳永 彩 Kiki / 再編集 久保田千晴
●その他、料理に関するトピックいろいろ。
◎【話題のダイエット食材を樋口直哉さんが調理①】糖質ゼロのカリフラワーライスで正月太りリセット。