コンビニ商品の象徴としておいしさと簡便さアップを果たしてきた、おにぎり。その世界を眺めつつ、よりおいしく味わう方法を作家・料理家の樋口直哉さんが考察。前編に引き続き、ご当地おにぎり事情や余ってしまったおにぎりの保存方法について。
▼前回記事
【樋口直哉さんのおにぎり考察/前編】三角形の秘密、温めて食べるか問題など。
意外に重宝なお赤飯。ひと手間でよりおいしく。
セブンイレブンが1996年に発売した『赤飯おこわおむすび』は炊飯ではなく「せいろで蒸す」という製法を採用したことで、驚きをもって迎えられました。 今では各社がそれぞれの赤飯むすびを販売しています。形としてはセブンイレブンが丸型で、ロー ソンとファミリーマートが三角。セブンイレブンはご飯を熱いまま成形するHOT成形という技術でふっくら感を残したまま丸い形にしているよう。 各社、豆の硬さや米のやわらかさに違いはあれども、せいろで蒸し直すとぐっとおいしくなります。湯気もごちそうの一つ。面倒、というなら電子レンジで。その場合はレンジ後に布巾などに包んで蒸らすといいでしょう。
訪ねた場所で味わってみたい。ご当地おにぎり。
日本の食は地域によって異なり、例えば関東では味のついていない焼き海苔が一般的ですが、関西では『味付け海苔』を使う食文化。コンビニエンスストアは均質化の象徴のようですが、地域ごとに違った商品を出しています。今回はいくつか試食しましたが、味付け海苔のおにぎりは関西のだし文化を感じるやや甘めの味付けが印象的。 北海道の甘納豆の赤飯も変わっています。甘い赤飯は北海道、青森、岩 手、山梨などに残る食文化ですが、ご当地おにぎりは比較的甘さ控えめで、 万人向けの味になっていました。旅先、素泊まりプランのホテルで過ごした翌朝、朝食にいいかもしれません。なかなか旅に行きづらいご時世ですが、ご当地おにぎりにはちょっとした旅情がありました。
ヘルシー系はこれからまた展開がありそうだ 。
食品開発の世界では〈「ヘルシー(健康)」を売りにした商品にヒットはな い〉と言われていた、と聞いたことが あります。お客さんにアンケートをとると「ヘルシーなものが食べたい」と答えるのですが、実際に食べ物を前にすると「おいしそうなもの」を選んでしまう、というわけです。しかし、それはどうやら過去の話。 最近、コンビニおにぎりの棚にも健康志向の商品が定着しました。その理由はもちろん「おいしくなったから」。米や雑穀の種類によって浸漬時間を変えたり(セブンイレブン)、 水や気温などによっても異なる炊飯具合をチェックし、もちもちした食感を実現しているそうです。この商品展開は今後も伸びると思います。みそ汁やスープなどと一緒に食べるには適したおにぎりと言えるでしょう。
冷凍&解凍法は今一度、確認のこと。
おにぎりを買ったけれど余ってしまった……という経験はあるでしょう。 つい冷蔵庫に入れてしまいたくなりますが、冷蔵庫内は最も米のデンプンが 老化=おいしくなくなる温度帯。そのため、余ってしまったら冷蔵庫ではな く、冷凍してしまうのがオススメです。 解凍は500Wの電子レンジで1分30秒程度。レンジには加熱ムラがあるので、そのまま秒ほど余熱で蒸らすのがポイントです。自然解凍するとパサパサになるので、注意しましょう。 この方法はマヨネーズ系など加熱に弱い具材は不向きで、鮭や昆布、おかかなどの具や混ぜご飯系が向いています。ちなみに手巻きタイプのおにぎりをレンジにかけても海苔はしけないの大丈夫です。
樋口直哉/ひぐちなおや
服部栄養専門学校、フランス料理店などで料理修業をしたのち2005年作家デビュー。小誌の連載も人気。 近著に『最高のおにぎりの作り方』も。
『ku:nel』2021年7月号掲載
エッセイ 樋口直哉 / 写真 瀬尾直希 / 編集 原 千香子
●そのほか樋口さんの記事
◎【樋口直哉さんのキッチンツール/前編】値段ではなく、いいものかどうかで選ぶ。
◎【樋口直哉さんのキッチンツール/後編】使う気持ちも大切に、樋口さん流「ちょうどいい」道具達。