島田順子さんが薦める“ファッションも見どころ”の名作映画とは?【前編】

映画は、ストーリーもさることながら、登場人物の多彩な衣装や着こなしを楽しめるのも魅力の一つ。ファッションデザイナー・島田順子さんが推薦する“ファッションも見どころ”の映画とは?

PROFILE

島田順子/しまだじゅんこ

ファッションデザイナー。千葉県館山生まれ。1981年 JUNKO SHIMADA DESIGN STUDIOを設立。2024年春夏でコレクション発表は85回目に。『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』(マガジンハウス)など著書多数。

「ファッションが素敵だったのは50〜60年代だと思うの」

最近、ヌーヴェルヴァーグの映画を続け様に観て、やっぱりファッションといえばフランス映画だと再認識したという島田順子さん。

「何回観ても考えさせられるし、小粋で小悪魔的で、女性のイヤラシさや可愛らしさ、すべてが表現されている。若い頃に惹きつけられたのはこの世界観。場面やディテールが脳裏に焼き付いています」

ストーリー以上に、ヴィジュアルへの記憶力が強く、さすがはデザイナーと思わせる特性です。

「『気狂いピエロ』のアンナ・カリーナが『どうしよう』『どうしたらいいの?』と言いながら海辺を歩く場面で、体にフィットする赤と白のボーダードレスを着ていて、それがすごく可愛かったのよね」

アンナ・カリーナが着ていたサマードレスに触発されて、随分昔に似たようなドレスを作った、と順子さん。

『気狂いピエロ』

© 1962 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS RESERVED.

ヨーロッパ映画は服も背景も含めてファッショナブル

俳優ではジャンヌ・モローが好き。演技はピカイチで、賢くて何をやっても素敵だったと言います。

「『死刑台のエレベーター』では、ヒールを履いて夜中じゅうパリの街をうろつき回り、雨に打たれてびしょびしょになるのですが、その姿が美しくてとても印象に残っています。人間的にも深みのある人で、どの役をやっていても上辺だけではなく、人間性が重なってキャラクターになっている。その人の個性があって成立するというのはファッションも同じです」

アントニオーニの『欲望』やジャック・タチの『ぼくの伯父さん』は全体がおしゃれといえる作品。

「『欲望』はフォトグラファーが主人公。彼のスタジオの扉やテーブル、光や画角、映画丸ごとがファッションとつながっている。『ぼくの伯父さん』もそう。服だけではなく映像を形作るものを含めてファッショナブルな映画です」

※後編も読む☞ 島田順子さんが薦める“ファッションも見どころ”の名作映画とは?【後編】

『死刑台のエレベーター』

社長夫人が愛人と共謀し夫を殺害させるが、愛人は逃亡の際にエレベーターに閉じ込められる。ルイ・マル監督の1958年の映画。夜の闇に沈むパリがモノクロ映像で映し出される。

『欲望』

ミケランジェロ・アントニオーニ監督作品。人気写真家が公園で盗撮した男女の写真に事件性を感じ、真相を確かめようとする。主人公はデヴィッド・ベイリーがモデルとされている。

『ぼくの叔父さん』

フランスの監督・俳優ジャック・タチによるコメディタッチの長編映画。下町のとぼけたユロ伯父さんが近未来的な家やプラスティック工場に馴染めず悪戦苦闘。モダンな邸宅のインテリアに注目。

『クウネル』1月号掲載 写真/山下郁夫、取材・文/綿貫あかね、編集/黒澤弥生

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『クウネル』No.124掲載

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