紫野和久傳代表・桑村綾さんから「着てもらいたい」思いごと受け継いだ“紬の着物”【山本容子さんの愛用品】

親しい人が 愛用していたものを受け継ぐということは、その人の想いや過ごした時間などプライスレスな価値も共有すること。山本容子さんが譲り受け、使い続けている愛用品を拝見しました。

PROFILE

山本容子さん

銅版画家
書籍の装丁、挿画をはじめ、多彩な創作活動に取り組む。京丹後「和久傳ノ森」にある美術館「森の中の家 安野光雅館」で、6月から個展を開催予定。

着るたびに幸せな気分になるんです

20年ほど前に譲り受けたという紬の着物。贈り主は、当時京都の料亭「高台寺和久傳」の女将だった桑村綾さんです。

「この着物はずっと大事に着ていらしたもの。紬がこれだけクタッとなるには、どれほど時間がかかったか。でもね、綾さんは『ここまでの時間をプレゼントしたい』とおっしゃったの」

From 桑村綾さん 紫野和久傳代表
紬の着物

「合わせる帯で表情が変わるのも紬の魅力です」。帯は大学時代の旧友、松下順一さんが自身の日本画を織り込んで制作した一点もの。着物をいただいてほどない50代初めの頃。

裾裏の八掛を替え、長襦袢を新調し、きっと似合うだろうとモダンな格子の帯も誂えて。「着てもらいたい」という送り主の思いごと受け継いだ山本さんにとって、愛着のある一着に。

著書『京都遊び 三十三景』に、プレゼントしたスカート姿の桑村さんを登場させた山本さん。大女将のお茶目な一面がのぞきます。

出会いは山本さん40代の頃。「気が合ってね。私は綾さんの生き方が大好き。一緒にバリにも旅行しました」。『高台寺 和久傳』にて。

桑村さんといえば、ルーツである京丹後の料理旅館を、京の都で奮闘しながら押しも押されもせぬ名店に育て上げた気骨の女性です。

「これを着ることは、桑村綾という人が生きてきた時間、人生をかけて『和久傳』をつくり上げた誇りをまとうこと。そういう気持ちを譲り受けたのだと思います。だから、高貴なものね」

山本さんは、外国の方が集まるパーティや食事に出かけるときなど、折に触れてこの着物に袖を通すといいます。「自分流に身にしみこませて使っていくことで、一緒に過ごした時間も思い出したりして幸せな気分になるんです」

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『クウネル』No.120掲載

センスのいいあの人の愛用品

  • 発売日 : 2023年1月20日
  • 価格 : 980円 (税込)

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