「春」という文字を見ると「ボーダー柄」の服を着たくなるという〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの菜木のり子さん。どうやらボーダーのお洋服には大切な思い出があるようです。
ボーダーとシャルロット・ゲーンズブール
「春」と言う字を目にすると、なぜかボーダーが着たくなるのです。
それは「春」という字がボーダーを着てるみたいに見えるからかな?
ボーダーは私に「服の着方」と「コーディネイトとは?」を教えてくれるきっかけとなった大切な一枚であります。
ボーダーといえば、ココ・シャネルやブリジット・バルドー、ジーン・セバーグ。はたまたカート・コバーンやピカソに至るまで、さまざまな人たちが好んで着ている写真を目にすることも多いけど、私のボーダーの着こなしのお手本は映画「生意気シャルロット」のシャルロット・ゲーンズブールです。
フランスに憧れ、フレンチシックに焦がれていた当時の私にとってスクリーンの中の彼女は、シンプルなものをシンプルに着ているだけなのにそれが抜群におしゃれで、服たち全てが彼女に馴染んでいることによって生まれているリアルな日常感に衝撃を受け13歳リセエンヌ役(この言葉も憧れだった)のシャルロットの存在感に痺れまくり
「洋服ってこうやって着るんだ!!」と目から鱗が落ちる瞬間でもありました。その映画の中でシャルロットが着ていたのがボーダー(バスクシャツ)でした。
私は早速そんなシャルロットスタイルを真似ようと、憧れのボーダーを手に入れるためいざ『SAINT JAMES』へ向かいました。記憶は曖昧ですが、当時お店には映画の中で彼女が着ていたタイプのボーダーナヴァル(首と肩に白い部分があるタイプ)の販売がなく、イメージが少し違うけどウエッソン(首も肩もラインが入っているタイプ)がありました。
これでは完コピは無理だけど仕方ない。私はウエッソンを購入しジーンズとスニーカーを合わせ、 前髪を捻ってピンで止め、後ろ髪を無造作に束ねて東京の端っこで精一杯シャルロットを気取る日々でした。
クローゼットには、いつもボーダーが置いてあります
それから随分と年月は経ったけど、ボーダーは購入と育成(馴染んた感じが良い感じ)、紛失(引越しなどで行方不明)を繰り返しながら「スタメン」になったり「控え」に回ったりと必ずクローゼットにいてくれる心強いアイテムです。私にとって『SAINT JAMES 』 のものが基本型ですが、ここ数年は他のブランドのものも仲間入りしています。
生地感が違ったり、身頃や袖幅の太いものが最近のお気に入りです。ただし身頃や袖の幅が太いものは、着る時に少しだけ工夫をしないとただの「サイズが合わない服」になってしまうのでちょっとひと手間かけて服をグッと自分に寄せることを意識しています。(ここがシャルロットからの学びです)
あえてサイズが大き目な服はボーダーに限らず その余白に一仕事してもらうことが必須です。ググッと袖をタグませて絞った部分と、服の中で、ゆったりと体が泳ぐ部分でメリハリをつけます。
体が泳ぐ部分は、身体と服の間に風の通り道ができるので、動いた時に自然に肩が少し落ちたり、襟が抜けたりします。そこも含めてがコーディネイトと捉えます。それは計算しても絶対生まれない、セレンディピティ的要素です。
55回目の春もボーダー着て、楽しみます
そんなほんの少しのことが、こなれた感じに見えておしゃれ度も俄然上る気がします。あの映画をきっかけに私は服を着る時には、そんなあれこれ全てを含めてコーディネイトが完成するのだと考えるようになりました。
フレンチシックに憧れて映画を見たり、雑誌を読み漁ったり、家で一人ファッションショーをしたり、知恵を絞って「そんな感じ」を探ったりの千本ノックの時間から、頑張ってもイメージには程遠い出来上がりの撃沈ぶりまでもの全てが今の私の服の着方や選び方の基礎になってくれているんだと思います。
そう考えると、あの頃の一生懸命な自分がなんとも愛おしい。さてと55回目の春が来た。ボーダーの袖をググッとたくし上げて春風をいっぱいに受けて、楽し事探しに行かなくっちゃ。
●全て私物!大人おしゃれのカリスマ、菜木のり子さんのコーディネート
◎ファッションもサステナブルに。リモデルやリサイクルを活用したなぎのりこさんのワードローブ。
◎光を受けてさらに輝く。『ETSUKO SONOBE 』の天然石リングとともに歳を重ねる喜び
◎なぎのりこさん晩夏の装い。ロマンティックなムードをまとったリメイクワンピース。
◎菜木のり子さんの初夏の装いは、波のように揺らめく大人のためのワンピース。