【女ひとりで家を建てる⑤後編】荒地の整地や予算の削減に奔走!理想の平屋が完成するまで。

ついに7軒目の家を完成させたパワフルな女性〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの井手しのぶさん。順調に進むはずだった家づくりでしたが、実際は荒れ放題の土地の整地から予算の削減まで、一苦労したのだとか。今回は引き続き、井手さんの家づくり顛末を6回にわたりお届けする連載第5回目・後編をお送りします。

笹と雑木との戦いでまずはひと苦労

見つけた土地は鎌倉・材木座の山のてっぺんにある約80坪。広告には傾斜地とあったが、実際に足を運ぶと草木が生い茂り、荒れ放題ではあるが幸運にも平地であった。しかも売れ残ったからか前年より一千万円以上値下がりしている。もちろんすぐに手を打った。

「30秒ほど立っているだけで、10カ所以上も蚊に刺される有り様で閉口しましたが、荒地の割には水道も、電気、ガスもすべて通っていたのも幸い。通じていない場合は自分で引き込む必要があり、とくに水道の引き込み工事は高いので要注意。相場より安い土地の場合は確認したほうがいいですね。ここは下水も完備されていたし、山の上にしては水圧も問題 なし。水圧が低いと、ポンプアップするにも百万はくだらないので助かりました」

さっそく整地にとりかかった。費用を抑えるつもりで、最初は人力。でもはびこっていた笹は抜いても抜いてもしばらく経つと元どおり。さらに雑木にもひと苦労。実は井手さん、チェーンソーはちょっと苦手だから、雑木を倒して枝を落とすのも手ノコでギコギコと一日がかり。とうとう音をあげ、途中で人力はあきらめた。パワーショベルを入れて、根っこごと地面を掘り返したら一日であっけなく終了。そのすっきり感は費用30万円には代えられない。こうして無事、基礎工事に進んだものの、施工側との見積もりの食い違いで工事は一旦ストップに。

玄関スペースを兼ねるダイニングにはアンティークのテーブルと、アーコールの子供用椅子。
「観音開きにはしたくないけど大きな開 口にしたい」と選択した回転式の大扉もアクセントに。
玄関にも植物を。
キッチンは偶然見つけ出した50%OFFのアウトレットを施主支給して予算削減。
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暮らしを楽しむ。

仕事はほどほどにして、この家ではゆったりした時間を過ごす。バッグを編んだりとハンドメイドにはまり、とうとうミシンも購入。ひと目惚れの素敵な洋書をバイブルに服作り。

あれこれ削って四百万円予算を縮小

「この家は新たなローンを組まずに、前の家を売却してローンを清算した残りの手持ち資金でまかなうつもりでした。計画では土地建物合わせて三千万円。土地が約一千八百万円で、上物は建坪でできれば八百万に抑えたい。でも上がってきた見積もりはその倍近い金額でした。そこで一旦ストップして、工事内容の見直し。外壁の光触媒塗装は断念して、床は無垢フローリングからモルタルに。壁 の珪藻土は自分で塗装。電気器具を減らして、キッチンや給湯設備、洗面・バスも施主支給にしてアウトレットを探す……。あちこちをチマチマと削って四百万円くらいは落としたかな」

勾配天井が効いた寝室の奥には、アールの開口でつながるウォークインクローゼットが。

結局、再見積もりは約一千百万円。省かれた分を自分でまかなう必要はあるものの、手持ちの資金範囲でなんとかなりそう。こうしてどうにか工事再開。今春竣工した家は約25畳のLDKとベッドルーム、バスルームで構成され、ダイニングは玄関スペースを兼ねて、一段下げた土足のスタイルにした。入り口の大きな回転式扉を開けるとすぐ目の前にテーブル&チェアという意表をついたレイアウトなのに、まったく違和感がないどころか、足を踏み入れるとため息ものの素敵さに驚かされる。

バスルームの入り口はインドで買ったアンティーク扉に合わせて造作。「お風呂で本が読みたい」と、バスタブ脇の壁に読書灯を取り付けた。

「家の中にあまり色を使いたくなくて、木の色とモルタルのグレー、壁の白だけのニュートラルな空間にしました。こだわったのは南側に大開口を設けること。メーカー製品だと百万円以上するため、建具屋さんに作ってもらいました。幅の窓は完全に引き込めるので、全開すると庭がダイレクトに。犬も猫も好きに行ったり来たりしています。泥の足跡で汚れても、モルタルの床はモップで拭くだけ。歳を重ねたら家は小さくてメンテの楽な方がいい。掃除機は重くて使いたくないから、うちでは全面掃除はロボットに任せて、あとはハンディクリーナーとモップだけ。この家に来て掃除のストレスから解放されました。もうひとついいことはよく歩くようになったこと。 犬の散歩に、駅への往復。万歩計は毎日一万歩超え。歩くのは苦にならない質だから、強制ダイエットだと思っています」

そんな井手さんの目下の密かな野望は、 大開口の窓につなげてウッドデッキを作ること。さていよいよ次号は最終回。ガーデナーとして、楽しみながらセンスあふれる緑の景観を生み出す、井手さん流庭づくりをご紹介します。

こだわりPOINT【横長の窓

光と風は取り込みながら、外の視線を巧みに遮るために、南面以外の壁には細長いスリット窓を設置。アイアンの棚には小さな飾り物。

『ku:nel』2016年11月月号掲載

写真 柳原久子/取材・文・構成 佐々木信子(tampopo組)

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