饅頭、肉屋さんのコロッケ、出雲そば……気取らない市民の味から注目の新店まで。町の今を感じて。【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/松江・出雲編Part2】
ドラマの舞台として、縁結びの地として、目下、人気上昇中の旅先!観光地にも外れた所にも宿る地のスピリッツを感じて。今井書店にお話を伺いました。
スピリチュアルな空気感、風土や歴史の奥深さが暮らしの中に息づく。【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/松江・出雲編Part1】からの続きです。
目 次
ガイドを一緒につくった地元書店
今井書店
1872年創業、山陰エリアに密着した書店グループ今井書店。「すごせる書店」、松江本店の店長に地元ガイドとおすすめ本の選定の先導をお願いしました。
落ち着きと湿度が保たれた土地。
悠久の歴史に彩られつつ、市街には縦横に堀が残る城下町、松江はエッジーな趣向だけでは揺らがない、落ち着きと湿度が保たれた土地。
「オーセンティックでクオリティの高いものが愛され、当たり前にあります。何かを極めたスポットを巡ることで、町の今を感じられるのでは」
objects
民藝好きが信頼を寄せる『objects』などはその典型で、「単に器を買える店を超えて発信力が伝わる、松江の新名所でもありますね」。
トロムペット
松江は、海・湖・山の幸が豊富なうえ、京阪神や首都圏で実績を積むなど腕に覚えの料理人も多く、おいしくリーズナブルな食に恵まれると言われます。そんな中で「『トロムペット』のようなベーシックで洗練された新店に注目。地元出身シェフに期待しています」。
町に降り立ち間もないけれど、トラディショナルなビストロの気質は松江らしくもあって。家族旅行の晩餐に!
粉家こん吉堂
和の居酒屋ひしめく松江から、一旦、地酒とユニークな肴のカップリングを求め、出雲へ。『粉家こん吉堂』は地元ほか選りすぐりの日本酒の燗×多彩な料理の提案で、遠方からもファンが訪れます。
石川屋
地元で昔から親しまれるスポットのアップデートにも目を向けると。
「古い佇まいが生きていて、そばや、蔵元などもあり町歩きにいいルート」とのことで松江城周辺から北に石橋町へ抜けます。歴史的な店構えの石川屋は今も元気な鮮魚店で、地魚の惣菜やご飯ものの展開には仕出しの技術が生きていて、上品。毎日、通いたくなります。
一畑薬師
また松江と出雲大社の中間にある一畑薬師は、目の薬師として変わらず全国から厚い信仰を集めています。
「やはりスピリチュアルな場所としてゲストを案内したいですね。山の上に開け気持ちいい所」。参拝するばかりでなく、パーソナルな寺体験ができることも注目。寺のオープンなスタンスに心はほどけ、次はもっとゆっくりと誓います。
CAFFÈ VITA
再び松江市街へ。城下町の伝統が生きる文化を、町歩きの視点にもできます。「茶人でもあった藩主の松平不昧公がもたらした喫茶の習慣は浸透して、さかんです。抹茶を日常的に楽しむ人が多いことに留まらず、喫茶好きが普通の市民たちは車で喫茶店に通い、小さな町には珍しく珈琲紅茶を極めた店も多い。和菓子どころでもあり高品質なものに何気なくアクセスできるのもいいのでは」
風流堂寺町本店内 五風庵
例えば松江独自の、皮むき餡を使う饅頭、朝汐は、大正期に風流堂が考案。市内多くの店も朝汐やこの朝汐餡を使う菓子を次々に生み愛されていますが元祖では今、蒸したてで朝汐を提供。「ふかふかがまたいいです」。格があるとされる薯蕷饅頭でこの形は貴重。
松平家がもたらしても「釜揚げだ」「割子だ」と市民の志向ありきの出雲そば、街角の肉屋さんコロッケなどおやつ、ブランチにも事欠かず。
ミートショップきたがき
市民、旅行者の間に壁なし!1個ずつでも気軽に買えるお肉屋のコロッケは皆が大好き。たっぷりのビーフとポテトが融合しとろとろクリーミーでソースいらず。メンチカツや豚肉鶏肉の揚げ物も豊富に並ぶ。手造りビーフコロッケ200円 市民には差し入れとしても重宝される。
住:松江市西茶町71
営:9:00〜19:00
休:日・水曜、祝日 HP
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そば処 玄
松江・出雲のオーセンティックな魅力にひとたび出会ってから、旅人ごとの興味とカンで意外な発見を楽しみたいものです!
松江・出雲に行くなら読んでおきたい4冊
日本では怪談文学で権威となった小泉八雲=ラフカディオ・ハーンはこの地のことをペンで広く知らしめた人の筆頭でした。
「松江に暮らした時の著作『知られぬ日本の面影』はNHK連続テレビ小説『ばけばけ』でも登場し注目されました。ずっと色褪せないけれど、実際読んだ人は少ないのでは。新翻訳による『新編 日本の面影』は読みやすいと思います」と吉儀さん。
新編 日本の面影
ラフカディオ・ハーン
日本で最初に書いた作品集の新編集版。「神々の国の首都」、「杵築ー日本最古の神社」「日本の庭にて」といった松江・出雲を活写した文章が収録。池田雅之訳。角川ソフィア文庫
古代に関しての語り部なら、鳥取県境港出身の水木しげる。『水木しげるの古代出雲』は閃きと調査で描かれるダイナミックな古代。出雲地方には見える世界と見えない世界の境界が当たり前にある、という概念もわかってくる気がします。神様、神社、神事もさまざま登場します。
水木しげるの古代出雲
水木しげる
謎の古代出雲青年が夢枕に立ったことをきっかけに、古代出雲の物語を描き、秘された部分を解きにいく水木さん。出雲大社の命主社では雷に打たれるムクノキを目撃。角川文庫
「古代の話に興味がなかったという人にも、ぴったり。また、新刊『知られざる古代出雲紀行』にも注目しています。考古学者のかたがフィールドワークを一般にもわかりやすくまとめられた一冊」
知られざる古代出雲紀行
平野芳英
島根半島の海岸部や奥出雲の岩や巨石をまつる信仰など、遥か続いてきた営みとその土地を丹念に見て歩いた記録を読み物に。「写真も豊富で行き方も詳細にわかります」。創元社
古事記日本書紀、風土記の前の時代から続く出雲土着の信仰とは。違う出雲像が確かに見えてきます。
「現代の松江を舞台のひとつとして書かれた本も。『やめるときも、すこやかなるときも』は町、湖の雰囲気の描写も物語のポイントになっています」
やめるときも、すこやかなるときも
窪美澄
「手に取りやすいと思います」。東京と松江が舞台。トラウマを抱える家具職人の青年が、過去を断ち切るべく、恋人を連れて、高校時代を送った松江を訪ねるが……。集英社文庫
今井書店 松江本店
\松江・出雲 町歩きガイドマップ/
『クウネル』2026年9月号掲載
写真/上原朋也、マップ/尾黒ケンジ、取材・文/原 千香子
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『クウネル』NO.140掲載
旅を深める本76冊と歩く、京都。
- 発売日 : 2026年7月17日
- 価格 : 1,080円 (税込)