饅頭、肉屋さんのコロッケ、出雲そば……気取らない市民の味から注目の新店まで。町の今を感じて。【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/松江・出雲編Part2】

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ドラマの舞台として、縁結びの地として、目下、人気上昇中の旅先!観光地にも外れた所にも宿る地のスピリッツを感じて。今井書店にお話を伺いました。

スピリチュアルな空気感、風土や歴史の奥深さが暮らしの中に息づく。【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/松江・出雲編Part1】からの続きです。

ガイドを一緒につくった地元書店

今井書店

1872年創業、山陰エリアに密着した書店グループ今井書店。「すごせる書店」、松江本店の店長に地元ガイドとおすすめ本の選定の先導をお願いしました。

落ち着きと湿度が保たれた土地。

悠久の歴史に彩られつつ、市街には縦横に堀が残る城下町、松江はエッジーな趣向だけでは揺らがない、落ち着きと湿度が保たれた土地。

「オーセンティックでクオリティの高いものが愛され、当たり前にあります。何かを極めたスポットを巡ることで、町の今を感じられるのでは」

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民藝好きが信頼を寄せる『objects』などはその典型で、「単に器を買える店を超えて発信力が伝わる、松江の新名所でもありますね」。

松江出雲vol2 『objects』

佐々木創さんのかっこいいショップは、島根の作家に限らず広く陶器、ガラス器ほか新旧の工芸品を集め、編集されている。目利きが評判で全国からobjects詣では引きも切らず。「プッシュ中の作家は西持田窯津田堅司さんや独学のガラス作家垣内信哉さん」と佐々木さん。佐々木さんの立つ後ろはアンティークが多いゾーン。

住:松江市東本町2-8
営:11:00〜18:00 営業日はHPで。
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松江出雲vol2 『objects』

島根・大田の垣内さん作品。

松江出雲vol2 『objects』

大橋川沿いの重厚な建物は元テーラーとか。

トロムペット

松江は、海・湖・山の幸が豊富なうえ、京阪神や首都圏で実績を積むなど腕に覚えの料理人も多く、おいしくリーズナブルな食に恵まれると言われます。そんな中で「『トロムペット』のようなベーシックで洗練された新店に注目。地元出身シェフに期待しています」。

トロムペット

予約が難しいほどの人気ビストロが東京・小伝馬町から引っ越し!浜田市出身の山田シェフが繰り出すパイ包み焼きやテリーヌ、ワイン煮込み……どれも力強くおいしさ、料理の楽しさが凝縮。「クラシックなビストロ料理しかできません。将来的には地元食材だけによる料理に特化できればとも思ってます」とシェフ。写真は断面も趣きの名物料理。牛フィレ肉のパイ包み焼き 5,500円 奥出雲葡萄園のピノタージュと。

住:松江市東朝日町214-1 リノワヒネ2F
営:12:00〜15:00(L.O.14:00)18:00〜23:00(L.O.22:00)
休:月・火曜(祝日の場合営業、翌日休)
Instagram:@trompette170518
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トロムペット

サバとなすのテリーヌ 1,980円

トロムペット

ディナーはアラカルトでシェアがおすすめ。

町に降り立ち間もないけれど、トラディショナルなビストロの気質は松江らしくもあって。家族旅行の晩餐に!

粉家こん吉堂

和の居酒屋ひしめく松江から、一旦、地酒とユニークな肴のカップリングを求め、出雲へ。『粉家こん吉堂』は地元ほか選りすぐりの日本酒の燗×多彩な料理の提案で、遠方からもファンが訪れます。

松江出雲vol2 粉家こん吉堂

「燗は料理法なんですよ」と語る店主、今吉康之さんは兵庫の明石焼&中華の店で勤務後ここを開店。出雲で日本酒に目覚め特に燗酒の楽しみを広める。酒に限りなく合い弾ませる「あて」が豊富、それもタコ酢からアチャ ール、ナムル、中華粉料理……と発想自由!誘惑が多すぎ、明石焼に至れないほど。写真はアジのアチャール、出雲の汽水湖、神西湖しじみのにんにく醤油づけ等、小皿料理各500円 タコ酢900円

住:出雲市今市町120-2
営:12:00〜13:30、18:00〜22:30
休:月曜
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粉やこん吉堂

ねぎたっぷり、大餅800円 出雲の板倉酒造や旭日酒造の燗向けの酒と。

石川屋

地元で昔から親しまれるスポットのアップデートにも目を向けると。

「古い佇まいが生きていて、そばや、蔵元などもあり町歩きにいいルート」とのことで松江城周辺から北に石橋町へ抜けます。歴史的な店構えの石川屋は今も元気な鮮魚店で、地魚の惣菜やご飯ものの展開には仕出しの技術が生きていて、上品。毎日、通いたくなります。

石川屋 店主

藩政時代から続く鮮魚店。加藤基さんの代になって以降、世相も伴いまるの魚の扱いは減らし、惣菜や刺身をボリュームアップ。「例えば宍道湖の鮒の糸作り。知られざる冬の郷土料理をぜひ!」と加藤さん。

住:松江市石橋町3
営:11:00〜19:00
休:日・月曜・祝日 HP
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石川屋 お惣菜

ハゼの唐揚げとポテト、トビウオフライ、鯛ごはん……。炭火による焼魚が並ぶ日も。

石川屋 外観

それぞれが土地のスペシャリテでもある一皿を見つくろい、城山公園でランチにしても宿で一献でも!

一畑薬師

また松江と出雲大社の中間にある一畑薬師は、目の薬師として変わらず全国から厚い信仰を集めています。
「やはりスピリチュアルな場所としてゲストを案内したいですね。山の上に開け気持ちいい所」。参拝するばかりでなく、パーソナルな寺体験ができることも注目。寺のオープンなスタンスに心はほどけ、次はもっとゆっくりと誓います。

一畑薬師

「天空座禅」ができる観音堂からの景観。

静かな山上の古刹からは宍道湖や大山も望める。写経や座禅コースなど、多種の寺体験が個人にも参加しやすく用意され、由縁のあるお茶湯など授与品も有難くそして楽しい。飯塚管長設計の新しい貸切サウナも興味津々。心身のリフレッシュ、さらに心の目を開くための端緒をさまざまに頂けることを支えに。

住:出雲市小境町803
寺務所:8:30〜17:00 参拝は自由 体験参加については寺の公式サイトで。
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一畑薬師

寺名の元となった茶畑の向こうに十六羅漢や薬師本堂が。

一畑薬師

目に効くと信心を受けるお茶湯は徳利で持ち帰り可能。祈念を受けた御霊茶。

一畑薬師

寺の起源を導いたおみちびきぎつねは小さな置物に。納めても購入でも。

一畑薬師 山内のサウナ施設

山内のサウナ施設。

CAFFÈ VITA

再び松江市街へ。城下町の伝統が生きる文化を、町歩きの視点にもできます。「茶人でもあった藩主の松平不昧公がもたらした喫茶の習慣は浸透して、さかんです。抹茶を日常的に楽しむ人が多いことに留まらず、喫茶好きが普通の市民たちは車で喫茶店に通い、小さな町には珍しく珈琲紅茶を極めた店も多い。和菓子どころでもあり高品質なものに何気なくアクセスできるのもいいのでは」

CAFFÈ VITA

正統派でマニアック!バリスタチャンピオン門脇裕二さんによるエスプレッソの専門店。日本に一台しかない伊製の武骨なマシンで豆のオイルだけをやさしく抽出した純なエスプレッソはとろりと香り高く、時を満たす。

住:松江市学園2-5-3
営:10:00〜17:30

休:水・木曜(祝日の場合、翌日休)HP
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松江出雲vol2 CAFFÈ VITA

エスプレッソ550円 洋菓子店で修業した門脇さん自身によるケーキも評判。木いちご単品550円

CAFFÈ VITA

アレンジ珈琲も多彩。珈琲+ミルクにレモンが合う!カフェリモーネ693円

風流堂寺町本店内 五風庵

例えば松江独自の、皮むき餡を使う饅頭、朝汐は、大正期に風流堂が考案。市内多くの店も朝汐やこの朝汐餡を使う菓子を次々に生み愛されていますが元祖では今、蒸したてで朝汐を提供。「ふかふかがまたいいです」。格があるとされる薯蕷饅頭でこの形は貴重。

風流堂寺町本店内 五風庵 お饅頭

多くの銘菓で支持される老舗では、職人実演コーナーを2023年に設けイートインにも対応。「蒸したて朝汐」でつくね芋の食感、饅頭の魅力を再認識したい。どら焼きや抹茶も!町歩き中のひと休みに。

住:松江市寺町151
営:10:00〜16:00
休:水・木曜 HP
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風流堂寺町本店内 五風庵 お饅頭

上品な色と味の餡。蒸したて朝汐。

風流堂

松江では少ない最中も人気。あんこたっぷり最中 ともに275円(店内)

風流堂寺町本店内 五風庵 

松平家がもたらしても「釜揚げだ」「割子だ」と市民の志向ありきの出雲そば、街角の肉屋さんコロッケなどおやつ、ブランチにも事欠かず。

ミートショップきたがき

ミートショップきたがき 手造りビーフコロッケ

市民、旅行者の間に壁なし!1個ずつでも気軽に買えるお肉屋のコロッケは皆が大好き。たっぷりのビーフとポテトが融合しとろとろクリーミーでソースいらず。メンチカツや豚肉鶏肉の揚げ物も豊富に並ぶ。手造りビーフコロッケ200円 市民には差し入れとしても重宝される。

住:松江市西茶町71
営:9:00〜19:00

休:日・水曜、祝日 HP
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そば処 玄

そば処 玄

名店、一色庵の流れを汲む店は10時半開店で遅い朝食にもよし。出雲そば独自の釜揚げは小盛も選べ、有名な伝統スタイル、割子(わりご)は枚数注文もできる。釜揚げと割子、両方を楽しむ、そば好きの得意技「かまわり」実食!

住:松江市殿町96-7
営:10:30〜15:00(LO.14:30)
休:火曜 、第2水曜 Instagram:@sobadokoro_gen
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そば処 玄

ゆで汁ごとサーブされる釜揚げそばはつゆを好きに足していただく。小盛300円 割子は1枚ずつ薬味とつゆをオン。1枚300円

 

そば処玄

隠岐の岩のりを使用。岩のりおにぎり300円も人気。

松江・出雲のオーセンティックな魅力にひとたび出会ってから、旅人ごとの興味とカンで意外な発見を楽しみたいものです!

松江・出雲に行くなら読んでおきたい4冊

日本では怪談文学で権威となった小泉八雲=ラフカディオ・ハーンはこの地のことをペンで広く知らしめた人の筆頭でした。
「松江に暮らした時の著作『知られぬ日本の面影』はNHK連続テレビ小説『ばけばけ』でも登場し注目されました。ずっと色褪せないけれど、実際読んだ人は少ないのでは。新翻訳による『新編 日本の面影』は読みやすいと思います」と吉儀さん。

『新編 日本の面影』

新編 日本の面影

ラフカディオ・ハーン

日本で最初に書いた作品集の新編集版。「神々の国の首都」、「杵築ー日本最古の神社」「日本の庭にて」といった松江・出雲を活写した文章が収録。池田雅之訳。角川ソフィア文庫

古代に関しての語り部なら、鳥取県境港出身の水木しげる。『水木しげるの古代出雲』は閃きと調査で描かれるダイナミックな古代。出雲地方には見える世界と見えない世界の境界が当たり前にある、という概念もわかってくる気がします。神様、神社、神事もさまざま登場します。

『水木しげるの古代出雲』

水木しげるの古代出雲

水木しげる

謎の古代出雲青年が夢枕に立ったことをきっかけに、古代出雲の物語を描き、秘された部分を解きにいく水木さん。出雲大社の命主社では雷に打たれるムクノキを目撃。角川文庫

「古代の話に興味がなかったという人にも、ぴったり。また、新刊『知られざる古代出雲紀行』にも注目しています。考古学者のかたがフィールドワークを一般にもわかりやすくまとめられた一冊」

知られざる古代出雲紀行

知られざる古代出雲紀行

平野芳英

島根半島の海岸部や奥出雲の岩や巨石をまつる信仰など、遥か続いてきた営みとその土地を丹念に見て歩いた記録を読み物に。「写真も豊富で行き方も詳細にわかります」。創元社

古事記日本書紀、風土記の前の時代から続く出雲土着の信仰とは。違う出雲像が確かに見えてきます。

「現代の松江を舞台のひとつとして書かれた本も。『やめるときも、すこやかなるときも』は町、湖の雰囲気の描写も物語のポイントになっています」

やめるときも、すこやかなるときも

やめるときも、すこやかなるときも

窪美澄

「手に取りやすいと思います」。東京と松江が舞台。トラウマを抱える家具職人の青年が、過去を断ち切るべく、恋人を連れて、高校時代を送った松江を訪ねるが……。集英社文庫

今井書店 松江本店

今井書店 松江本店

2025年オープン。智頭杉書架の香りに包まれソファで本を読むこともできる。
住:松江市田和山町88 営:9:00〜22:00 休:無休   併設のIAM COFFee Pizzeria&Cafeは9:00〜20:00(L.O.19:00)HP
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郷土本コーナーも充実。

今井書店 松江本店 吉儀千栄美さん

吉儀千栄美さん
店長。児童書にも強い。「家族で楽しめる松江本店のコンセプトを発信したいですね」。郷土本の最近のベストセラー小泉節子(セツ)著『思ひ出の記』も注目。

\松江・出雲 町歩きガイドマップ/

『クウネル』2026年9月号掲載
写真/上原朋也、マップ/尾黒ケンジ、取材・文/原 千香子

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『クウネル』NO.140掲載

旅を深める本76冊と歩く、京都。

  • 発売日 : 2026年7月17日
  • 価格 : 1,080円 (税込)

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