奈良公園の穴場、モーニング、カルチャースポット……伝統と進化が溶け合う町【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/奈良編Part2】
美しい景観や貴重な文化財が息づく古都。自由でやさしい気質と風土から、進化を続けるドラマティック奈良にようこそ! 啓林堂書店にお話を伺いました。
今、注目の奈良。センス溢れる店が集結する高畑エリアが熱い!【地元の本屋さんとつくった町歩きガイド/奈良編Part1 】からの続きです。
目 次
ガイドを一緒につくった地元書店
啓林堂書店
地元に愛されて半世紀以上の啓林堂書店。3代目林田幸一社長と奈良店松井典子店長に、今訪れてほしいスポットと奈良の旅を深める本を教えていただきます。
「『啓林堂書店』前の小西さくら通りから南へ歩いて5分。昭和がそのまま残されたようなディープな雰囲気の『椿井市場』があります。こだわりのコーヒーが飲める『TABI Coffee Roaster』をはじめ、昔ながらの中国料理店や、新しくできたタコス料理店など、実力派の人気店が軒を連ねる商店街」と、啓林堂書店の林田さん。古さの中に新しさがある、まさに奈良らしさを感じるスポット。
TABI Coffee Roaster
さらに通りを南へ進めば、『Dear Gallery NARA /sonatine』、『ふうせんかずら』、『BO/OK』と、ギャラリーや書店などカルチャースポットが続きます。
Dear Gallery NARA / sonatine
ふうせんかずら
BO/OK(ブック)
〝奈良には朝食が食べられるところが少ない〟を解消すべく、昨年誕生したのは、やすらぎの道の角にある『FOUR STAR PHO』。朝から晩まで楽しめるお店で、『宿一灯(前編でご紹介)』の運営者で設計者の『ひとともり』長坂さんが内装設計を担当。
近鉄奈良駅からも歩いて10分圏内で巡れるこの小西さくら通り・ならまちエリア。モーニングからカルチャースポット、コーヒーブレイクまで。奈良を訪れたなら、歩いてほしい地域です。
FOUR STAR PHO
また、旅行者が訪れることの多い奈良公園で、「実は穴場」と松井さんがおすすめなのが四季折々で楽しめ、映える写真も撮れる『奈良公園浮見堂』。その道すがらにある和食料理店『馬の目』は、合わせて立ち寄りたい一軒。初代がコレクションした江戸期の骨董、窓越しに広がる青紅葉の美しさ。旅情を深める、贅沢なひと時が過ごせます。
奈良公園浮見堂
「最近は観光客で溢れている奈良公園ですが、浮見堂は意外にも穴場なんです」(啓林堂書店)とおすすめしてくれた、鷺池に浮かぶ六角堂の浮見堂。春日大社 一ノ鳥居から南東へ老舗の料理旅館『江戸三』を横に歩けば到着。水面に映る姿も美しく「特に朝日に照らされた姿を見てほしいです」
住:奈良市高畑町 HP
MAP_01
馬の目
さらに、春日大社、薬師寺など有名社寺御用達の和菓子を手掛ける『萬御菓子誂處 樫舎』の店主・喜多誠一郎さんは「奈良は外から来た人々を優しく育ててくれる。それはなぜかと高僧にお伺いすると、1300年前から外から来た人と一緒につくり上げた町が奈良だからと。何千年と、この町に受け継がれる文化なんですよね」。伝統的な職人文化が社寺によって支えられ、継承されている奈良たる由縁です。
「味は畑が作る」と力説する喜多さん自身も、次世代への継承を思い、「少しでも多く、少しでも高く買う」ことを実践しているそう。産地が潤えばおいしさに繋がり、それがまた次の世代の職人へと繋がっていく。その思いを直接お客様に伝えるために、自らがカウンターに立ち、ふるまっています。
萬御菓子誂處 樫舎(よろずおんかしあつらえどころ かしや)
また、国内外を問わず、年々観光客が増える奈良で日本の伝統的食文化を知って欲しいと『鹿の舟 竈』では、吉野の薪を使った竈で炊き上げるごはんを提供。火を起こし、炊き上がる様子を目の前に見られるのも、ここならではの体験で、連日行列が絶えません。
鹿の舟 竈
春日大社、東大寺、興福寺……と歴史を紡ぐ揺るぎない、圧倒的な土台があり、その上に、古いものを守りながら、新しいものを受け入れるおおらかさを持つ。それが脈々と受け継がれ、少しずつ、そしてダイナミックに進化する奈良の魅力は尽きません。
個性豊かな書店と街歩きがより楽しくなる本。
啓林堂書店の新展開をはじめ、続々と独立系書店が登場している奈良。ブックストアマップができるほど本好きに熱い町に!「古本屋は以前からありましたが、この4〜5年の間に独立系書店が増えました。読書の入り口になるような『ほんの入り口』、美術館のような美しさを感じる『BO/OK』、奈良初のシェア型書店『ふうせんかずら』。どれも個性豊か」と、松井さんが続けて奈良本を推薦。
ほんの入り口
奈良に行くなら読んでおきたい4冊
森見登美彦の『太陽と乙女』。「奈良出身で現在も奈良に住んでいるからこその目線がユニーク。大和文華館や大和西大寺の話が書かれていて、観光地ではない奈良が知れます」
太陽と乙女
森見登美彦
デビュー当時から2017年までのエッセイを網羅した一冊。奈良をぶらりと散策するエピソードが登場。「森見先生自身が奈良に住んでいるからこその地元目線がおもしろい!」新潮社
次は水野敬三郎の『奈良・京都の古寺めぐり 仏像の見かた』。40年前の新書を手にしながら松井さんは「法華堂から東大寺ミュージアムへ移った仏像のように、40年前と配置が違う仏像があったり、変わらないものもあったり……。その違いを知るのもおもしろい」
奈良・京都の古寺めぐり 仏像の見かた
水野敬三郎
「40年前に作られた古寺の見方、巡り方の新書。現代も変わらないところ、また変わったところ、その違いがこの本を通して感じられると思います」。仏像入門的一冊。岩波書店
さらに「旅をする前や話題の場所を訪れる前にぜひ一読してほしい」と言う、森田三和の『泣けない私のサンドイッチ』と寮 美千子の『あふれでたのはやさしさだった』。どちらの本も「読了後に書かれた場所を訪れると、また違った目線でその場所を感じられると思います」
啓林堂書店 奈良店
\奈良 町歩きガイドマップ/
動画公開中です!
『クウネル』2026年9月号掲載
写真/竹田俊吾、マップ/尾黒ケンジ、取材・文/河田実紀、長瀬 緑
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『クウネル』NO.140掲載
旅を深める本76冊と歩く、京都。
- 発売日 : 2026年7月17日
- 価格 : 1,080円 (税込)