心が動くものだけに囲まれた、風通しのいい暮らしー加藤広美さん【住まいと暮らしvol.84】

住まいと暮らし 加藤広美さん お茶セット

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の藤井志織さんのバトンを受けてご登場いただくのは、セラピストで「THENN AROMATHERAPY」を主宰する加藤広美さん。

加藤さんの暮らしのルール

1. 手元にあるものを使い切る
2. 実用品こそ美しく
3. 心が動いたものに囲まれて暮らす

住まいと暮らし 加藤広美さん プロフィール

2019年からセラピストとして活動を始めた加藤さん。今の家に引っ越しをしたのは3年前だそう。

「それまで並行していたアタッシェ・ドゥ・プレスの仕事をすべて引き継ぎ、ひとつの区切りを迎えていた頃でした。
ごく普通のファミリー型マンションですが、仕事とそれにまつわる研究に集中するための住まいとして十分です。自分が健康でいられることを優先に、決めごとを多く設けずに過ごしています」

住まいと暮らし 加藤広美さん ダイニングテーブル

引っ越しの際、それまで大切にしていたソファを手放した加藤さん。「代わりに同じ大きさのテーブルを買いました。机上に大きく広げて準備や試作をするので、作業台を兼ねています。大きく角張った、直線的な家具が好きです」

以前より部屋は広くなったけれど、家具は増やしていないため、空間に余裕ができたという加藤さん。

「ものを大きく広げて作業ができるようになり、デスクスペースを分けたので、考えに集中しやすくなりました。
あるものをどう使うかを考えることが好きで、ソファがテーブルに変わったこと以外は、基本的に以前の部屋で使っていた家具を工夫して使っています。古物と現代のもの、植物と絵、自分の好きなものを取り合わせ、過不足なくある。何もない空間が多く、見通しがいいところが気に入っています」

住まいと暮らし 加藤広美さん ガラスの器

ガラスの器はほとんど、友人や仕事仲間から贈られたものだとか。「時代も作家も違うのに不思議と統一感があり、共通項を感じるのが面白いです。繊細なものが多いですが、どれも日常で使用。壊れたとしても、使わずにいるほうがもったいないと思う派です」

心が動かされるのは、作り手の感情が伝わるもの。
「自分が美しいと思うかどうか以上に、“これが美しい”と信じて作られている作者の心意気に胸を打たれます。作品の背景にある生き方や美意識に惹かれているというか。友人から贈られたものも同様で、他者の眼差しを通じて、自分の輪郭を知るような体験に心が動きます」

住まいと暮らし 加藤広美さん 冷蔵庫の展示DM

部屋の中で唯一にぎやかな場所だという、冷蔵庫の横側。「もともとは、届いた展示案内を貼っていたのが広がって。今年の誕生日付近にいただいたカードがどれも花の写真だったので、まとめて貼って眺めています」

インテリアで大切にしているのは、飾ることより、視界に入る違和感を減らすことだといいます。
「ものや空気、心も、風通しよくいると健康でいられるような気がします。住みながらそのときどきの心地よさを見つけて、部屋が自然に熟成していけばいいと考えています」

住まいと暮らし 加藤広美さん 玄関

家に入るとすぐに目に入るのは、富田惠子さんの版画『根に宿るもの』。「作品もですが、つけられたタイトルも好きです。花が落ちた後の葉をガラスに挿して、最後まで緑を楽しみます」

住まいと暮らし 加藤広美さん キッチン

お気に入りはパイレックスのティーポット。「住んでいるマンションで、“ご自由にどうぞ”と置かれた箱の中にありました。ちょうど薬缶を買い換えようと思っていたので、ありがたく頂戴しました」

住まいと暮らし 加藤広美さん お茶セット

「急須は祖母が亡くなった際に、母が引き継いだもの。名もない量産品ですが、“これが1番かわいらしかったから”と母が話していた思い出ごと私が引き継ぎました。そっくりの肌の小さなカップはデンマークのヴィンテージ。偶然見つけて購入しました。お茶を淹れる時間が気分転換になっています」

住まいと暮らし 加藤広美さん 本棚

旅先で古書店を見かけると入り、つい重い本を買ってしまうという加藤さん。「植物や嗅覚にまつわる本、詩集、医学書、美術展の図録、写真集、雑誌など。自分でも雑多だと思います」

住まいと暮らし 加藤広美さん 絵画

絵や版画が好きだという加藤さん。「絵画作品も購入しますが、気に入った写真やリーフレットなどを額装することも多いです。絵の配置を変えたり、壁に掛ける作品を変えることが気分転換になります」

住まいと暮らし 加藤広美さん

室内のところどころにある、造り付けの棚。「本を置いたり、納品前の試作中の香りなどを置いたり。とても便利な場所です」

住まいと暮らし 加藤広美さん 積読本

テレビやオーディオを置かず、娯楽的な欲求は主に積読の本や写真集、絵で満たすのだとか。

住まいと暮らし 加藤広美さん

試作中のお香。「仕事柄、香りに囲まれて暮らしていると思われますが、セッションや試作でのコンディションを保つため、自宅ではなるべく鼻を休めていることが多いです。友人作の木工作品と、台にしている器は骨董市で購入した李朝のもの」

住まいと暮らし 加藤広美さん 花

週に数回のセッションでは、迎えるゲストを思い浮かべて季節の花を飾るそう。「借りているアトリエから都度持ち帰り、自宅でも楽しんでいます。赤い芍薬を購入したら、花屋さんがピンクのを1本おまけにくれて、合わせたのもいいなと。ガラスの花器は『MONI』のものです」 

profile

加藤広美/かとうひろみ
「THENN AROMATHERAPY」主宰。アタッシェ・ドゥ・プレスを経て、2019年よりセラピストとして活動。英国IFA PEOTセラピスト/精油療法士。精油を用いた健康の維持、促進に特化した国内では数少ないPEOT(プロフェッショナルエッセンシャルオイルセラピー)セラピストとして、対面でのPersonal Blendingを中心に、ワークショップ開催や企業プロダクトの香りの監修、香りによる空間演出などを行う。
Instagram@___thenn

加藤さんがバトンを渡すのは、「uryya(ユライヤ)」のデザイナー野澤みゆきさん。「みゆきさんと『via』という不定期のプロジェクトを共同運営しています。ともに旅するときの合理的なパッキング、商品を届けるときの梱包、ふとした態度に彼女の美意識を感じます。尊敬しているのは、気を遣わせることなく自然に配慮する優しさと、自分の物差しが明確にあるところ。センスとユーモアを信頼しています」と加藤さん。野澤さんの暮らしは、7月上旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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