フランスは今、マルシェもスーパーもレストランもケーキ屋さんも、どこに行っても、イチゴ、イチゴ、イチゴ！朝市を歩くとどこからともなく、ほんのりと甘い香りが漂ってきて、つい、ふらふらとそちらの方向へ足を向けてしまいます。

一般的に売られているガリゲットやマラ・デ ・ボワ、その2つをかけ合わせたマリゲットのほかに、ファヴェット、シャルロット、グルマンディーヌなど、驚くほどたくさんの品種があります。一粒ずつデギュスタシオンするのが私の密かな夢…

普段はあまり、お菓子やデザートを好んで食べる方ではないのですが、今の時期は別。大好きなイチゴのパティスリーを堪能すべく、見つけたら迷わず買っちゃうことにしています。フレッシュなイチゴをふんだんに使った、シンプルかつ、ある意味とても贅沢なタルトも最高においしいのですが、私がいちばん好きなイチゴのケーキは、やっぱりフレジエ。

町の小さなパン屋さんでも売られているフランスではおなじみのケーキです。主役はもちろん旬のイチゴですが、そのおいしさを引き立てるクレーム・ムスリーヌも重要な存在。ムスリーヌとは、手触りがツルッとした薄手のシルクやコットン布地のことで、口当たりがなめらかなピューレやクリームを表現する言葉としても使われます。クレーム・ムスリーヌは、クレーム・パティシエール（カスタードクリーム）とバターを合わせたもので、口に入れた瞬間はフワッと軽い感覚ですが、食べると案外どっしりとくる不思議な味わいで、生クリームとはまた違ったクセになる魅力があります。

ケーキの形は長方形や円形など様々ありますが、大切なポイントは半分に切ったイチゴの断面が見えるように、外側に向けて美しく並べられているところ。その可憐な佇まいは、眺めているだけでにっこりしてしまいます。甘いイチゴとやわらかなジェノワーズ生地、そしてなめらかなクレーム・ムスリーヌがバランスよく組み合わさった完璧なフレジエを求めて、今日もまた色々なお店に出向きます。

レストランやビストロでも、この季節は日替わりデザートにイチゴを使ったものが多いです。カットしたイチゴに軽く砂糖を加えて混ぜ、その上にホイップクリームをのせただけのごくシンプルなデザートが大のお気に入り。これは自宅でもできるので、たくさんイチゴが手に入った時は、細かく切ったミントの葉も一緒に混ぜて、生クリームかクレーム・フレッシュ（少しの酸味のあるクリーム）を好きなだけのせていただきます。

白いクリームがイチゴの赤に染められて、ピンク色に少しずつ変わっていくのも楽しいです。あとはそうそう、ブッラータチーズと合わせたシュクレ・サレ（甘塩っぱい）なサラダもよく作ります。ドレッシングも作らず、食卓でオリーブオイルとバルサミコ酢をさっと回しかけて、イチゴの自然な甘さとクリーミーなチーズを味わいます。