隠す?受け入れる?女性のシルバーヘアと男性の薄毛問題【これからのメロウライフ】

エディターの山村光春さんと、エッセイストの広瀬裕子さんによる往復連載。
「60代以降に使われる『シニア』という呼び方がどうもしっくりこない」という2人が、「私たちらしい人生の後半戦」について模索します。シニアでもなく、シルバーでもなく……。例えば「メロウ」というのはどうでしょう?

クウネル・サロンらしい、「これからの人生」メロウライフ。

2ターン目は「ヘアスタイル」がテーマ。男性目線で語られる「シルバーヘア」興味深いです!「おしゃれ男子」代表・山村さんのヘアケアアイテムもさすがです。

白髪=イケオジの象徴?

確かあれは、40代になったばかりの頃だったろうか。年に数度会うか会わないかの同世代の友人と、久しぶりにごはんを食べることになった。待ち合わせ場所(たぶん新宿伊勢丹前)に現れた姿は、ずっとまっ黒だった髪の毛が、見事まっ白になっていた。少し照れくさそうな表情を見せる彼に向かって、僕は思わず興奮して言った。「めっちゃカッコいい!ずるい!」

そう、僕はいつからか白髪に憧れていた。おそらく昔から言われる「ロマンスグレー」という言葉の印象もあるだろうし、ジョージ・クルーニーやリチャード・ギアなど、ハリウッド俳優からインスパイアされているところもあっただろう。そこに纏うイメージは「シブい」や「知的」。今どきでいうところの「イケオジ」の象徴だと思っていた。

友人にそのことを伝えると、彼はいやいや、とかぶりをふった。歳を重ねてからだといいかもしれないけれど若い頃だと老けて見られるし、ある程度白くなると見栄えがするけれど、その途中の段階はかなりみすぼらしい。だからこれまでは、ずっと頑張って染め続けてきたというのだ。

当時、白髪がまだ生えていなかった僕は、そのことについてまるで何も知らなかった。あきれるほど無頓着だった。

約5年前。この時はまだ白髪が1本も生えてなかった。

コンプレックスの主軸は別にあった

そして50代になり、ちらほらと白い毛が混じるようになってきた。まずは髭から。やがて頭にも。前出のイメージを持っていた僕はうれしさのあまり、たまたま会った別の友人に意気揚々と話した。「これでようやくロマンスグレーになれる!」と。

するとその友人は、僕に(半分キレながら)諭すように言った。

「だからといって、ロマンスグレーになれるわけではないからね。白髪になっても、禿げないわけじゃない。両方だと、全然カッコよくないからね」と。

確かに!と僕はその時初めて気づいた。そう、男性にとってコンプレックスの主軸となるのはむしろ「薄毛」のほうなのだ

姪にもらってからハマった『uka』の頭皮ブラシ。好みの硬さはもちろんバリカタ。

「隠す」か「開き直る」か

男性における薄毛問題。そこに横たわるポイントは、ずばり「隠す」より「開き直る」。今の気分として、後者のほうがだんぜん「カッコいい」とされている。

ソフトバンクの社長である孫 正義さんがかつて「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである」「誰が日本を、世界一ブロードバンドが安くて速い国にしたのか。誰が一番、この分野で“毛が抜ける”ほど頑張ったのか」などの自虐ネタを堂々披露したことを、覚えている人も多いかもしれない。同世代が集まるざっくばらんな飲み会でも、薄毛に関する自虐ネタに対してまわりが「笑ってイジる」のは、もっぱら場が盛り上がる鉄板ネタだ。

また、近ごろいっそ潔くスキンヘッドにする男性が多いのも、そういう理由からだろう。本人が気にするから、まわりが気になる。ならばいっそ、気にしないほうがいい。開き直ってさえいればカッコいい、という考えだ。

通常のヘアバームは髪を洗っても落ちにくく、毛も抜けやすいので使わなくなった。左は『CHET』のグリース。右は『THE PUBLIC ORGANIC』の艶出しバーム。

誰かの「カッコいい」に合わせる必要はない

ではこれを、女性のシルバーヘアにあてはめてみるとどうだろう。気づくのは「まったくもって違う」ということ。「開き直る」のはまだしも「自虐ネタにする」なんてシーンは、今の世の中では、あまりに考えにくい。

本連載で伝えたいのは、歳を重ねていく過程や、それにともなうさまざまな変化を受け入れ、楽しむということ

僕の場合、髪が白くなるのはもともとポジティブに捉えていたので、女性がシルバーへアになるのはカッコいいと感じている。裕子さんが連載されていたシルバーヘア計画もおもしろく読ませていただいていたし、今の姿も素敵だなぁと、心から思う。なんでみんなもっとシルバーヘアにしないんだろう、とすら思っていた。

美容師さんにおすすめされて使い始めた「OWAY」のスカルプシャンプー。柑橘系の香りが好き。

しかし女性にとってのシルバーヘアが、男性にとっての薄毛に当てはまるのであれば、そこまで簡単な話ではないだろう。とてもデリケートなことだし、人それぞれの考えや、選択肢が求められる。受け入れてもいいし、隠し通してもいい。パブリックイメージに塗り込められた、誰かの「カッコいい」に合わせる必要もない。ましてや自虐ネタにする必要なんて、これっぽっちもない。

近影。ちらほらと白髪が目立つようになってきた。

こうした自分ごとに直面するたび、新しい気づきを得て、価値観を塗り替えてくれる。

僕の50代は、まだまだ伸びしろしかない。

~アフターメロートーク~

広瀬さん

あまい! 全くもって認識があまいです。女性も髪の毛が細く薄くなってくるのです。シルバーヘアにして思うのは、もしかして「色より量」かもしれないということ。変化は、男性のように急激ではないかもしれませんが、わたしも含め、気にされている方が多いです。

編集S

同意!女子の薄毛問題も大いにありますヨ。かくいう私(毛量多目)も、ここのところ分け目部分が日に日に広がっていって…。美容師さん曰く、頭頂部だけ薄くなる女性多いんですって。恐怖!

山村さん

わ!そうなんですね。いやはや、まだまだ甘い。知らないことだらけです。ただ男性のようにあまり話題に上らないのは、やはり「開き直るのがカッコいい」というところまでは、まだいかないからなんでしょうね。

広瀬さん

日々の中で「これ、お勧め」という習慣は、ありますか?

頭皮マッサージはもちろんですが、僕がやっているリフレクソロジーで言えば、抜け毛に関係するのは甲状腺の反射区なので、足裏親指の付け根の下にある膨らみに沿ってJの字にぐりぐりやるといいと思います!

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