花の都・東京への憧れは今も…島田順子さんに聞いた「私の好きな東京」(後編)

「私の好きな東京」を著名人がナビゲート。年2回の展示会の時期にフランスから一時帰国するというファッションデザイナー・島田順子さんが、海外に住んでいるからこそ思い出す東京の好きな場所、行きたい店を教えてくれました。

前編はこちら

松屋銀座にJUNKO SHIMADAのブティックがある島田さんは、帰国したら必ず銀座へ。書店の教文館やデパ地下にも立ち寄り、伊東屋では英国製のスケッチブックや水彩絵の具を。1枚ずつ切り取れるタイプのスケッチブックは本国でも同じものを購入するけれど「伊東屋のものの方が簡単に取り外せて便利」なのだとか。その理由、伊東屋で販売する商品は紙は同じ英国製でも製本が日本製だからということが、今回の取材で判明。

「日本はそういう大切なところの気遣いがあってデリケートに作るから、やっぱり外国のとは違うのね」と感心しきり。

『銀座 伊東屋 本店』…西洋のステーショナリーにも、日本ならではの心配りが反映。

イギリス製のサンダース・ウォーターフォードの水彩紙(写真・左上/奥3,740円)は、日本で製本することで使いやすい工夫が施されています。このビルで意外と知られてないのが、11階に水耕栽培による野菜工場があり、見学もできること。その野菜を使った料理は12階のカフェレストランで提供されます。

7階は各種の画材のほか、色や質感が異なる紙のバリエーションは1,000種類以上。

創業120年になる伊東屋はセンスのいい国内外の文房具が揃う店。島田さんはデザイン画など仕事で使用する画材を調達します。本国でも購入できるのに、あえて銀座の伊東屋へ行くのは「創作のための大事な店」だから。

銀座 伊東屋 本店

住:中央区銀座2-7-15
営:平日10:00~20:00、日曜・祝~19:00
休:不定休

『東京鳩居堂 銀座本店』…変わりゆく銀座で、日本文化を発信する老舗。

一方、和の文具なら鳩居堂へ。 「最近では、海外から来た友人が、硯が欲しいというので連れて行きました」

高い技術に裏打ちされた上質な筆の品揃えは圧巻です。

「お香やお線香など、仏様の周りのものも揃う」ので、島田さんも愛用。

店名にちなんだ鳩のモチーフを配したビルは銀座のランドマーク。

1階には、オリジナルの葉書や便箋などをはじめ、紙製品が並びます。

創業からは300年以上、銀座に店を構えてから144年を経てきた鳩居堂は、お香や書画用品、和紙製品の専門店として日本人に愛されてきた老舗。「日本画の良い絵の具も揃っているし、筆もいい。だから好きなんです」

鳩居堂

住:中央区銀座5-7-4
営:11:00~19:00
休:不定休

『うぶけや』(人形町)…圧倒的な切れ味の刃物は、フランスでも大人気です。

人形町も好きな街という島田さんが、通い続けるなじみの店が、うぶけや。 「代々引き継いで店を守り続けているのが嬉しいし、商品も素晴らしいんです」

島田さんが顔なじみだった八代目当主が亡き後、九代目当主を継いだのは息子の矢﨑大貴さん。ステンレスの包丁が使えないという島田さんは、うぶけやの包丁を自ら研いで愛用しています。

昨年末に購入したのはこの3点。「裁ちハサミはアトリエのスタッフのために。「裁ちハサミはアトリエのスタッフのために。包丁はフランスの友人に、東京に行ったら買ってきてと頼まれて。そして自分用の爪ヤスリ。削れ方が別格で、もう最高ですよ」

1783年創業、明治維新の前に現在の人形町へ移転。各職人から上がってきたさまざまな刃物を仕上げ、刃付け作業をして販売している刃物専門店。購入後のメンテナンスも。

「帰国したときによく行くんですけど、ずっと続けているのが素敵よね。いいお店だと思います」

うぶけや

住:中央区日本橋人形町3-9-2
営:9:00~18:00 (土曜日~17:00)
休:日曜、祝

PROFILE

島田順子/しまだ・じゅんこ

1941年千葉県館山生まれ。1966年からフランス在住。1981年からパリで「JUNKO SHIMADA」コレクションを発表。近著は『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密』(マガジンハウス)。

『クウネル』2024年5月号掲載 写真/松永 学(島田さん)、目黒智子、取材・文/黒澤弥生

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