イラストレーターの杉浦さやかさんの住まいは、東京の古い一軒家。そこには、作風のイメージ通り、実にかわいいもので溢れていました。
杉浦さやかさん/すぎうらさやか
日本大学芸術学部美術学科に在学中よりイラストレーターとして仕事を始める。カードやラッピングアイデアを集めた、最新刊『きもちを贈る』(ワニブックス)のほか著書多数。 お散歩やお出かけにも造詣が深い。
色とりどりの色彩とやわらかな描き文字が印象的なイラストレーター・杉浦さやかさんの作品。そんな杉浦さんの住まいは、東京・阿佐ヶ谷の一軒家。聞けば、大学を卒業後は、ほぼ中央線沿線に住んでいたと笑います。
「結婚後の数年、ほかの場所で暮らしたこともあったのですが、やっぱり戻ってきてしまいましたね。結婚前は西荻窪のテラスハウスに6年ほど住んでいました。ウッドデッキや庭を作るなど、いろいろDIYしましたね」
そして10年前、妊娠したことをきっかけに住まいを変えることに。夫婦ともに古いものが好きだからと中古マンションを中心に探していたところ、ひょんなことに出合ったのがいまの物件だったそう。
「細い路地沿いに建っているので取り壊しができない物件だったんです。エリアのわりには破格で、すぐに決めました。長いこと集合住宅で暮らしてきたので、まさか自分が一軒家に住むことになるとは思ってもいなかったですね」
水まわりのほか、床の張替えや造作棚などのリノベーションをしたといいますが、そのインテリアからは、ピカピカではない温かみが。「個人的に、すこし野暮ったいくらいの雰囲気が好みなんです。例えるなら、おばあちゃん の家みたいな。手仕事のものが好きなので、あちこちにちりばめています」
なかでも印象的なのはアトリエの窓に掛けられた小さな刺繍をパッチワークのように並べたタペストリーです。
「メキシコの都市・オアハカ郊外の“オコトラン”という小さな村の市場で見つけました。刺繍が盛んで、これは手刺繍のサンプルなんです。売り物ではなかったけれど、頼み込んで売ってもらいました。針が刺さったままの状態で、慎重に持ち帰ってきた戦利品です」
手仕事のもつ色彩や質感、温かみから作品のインスピレーションを得ることもあるという杉浦さん。家のなか全体が、ついつい長居したくなる、まさにおばあちゃんの家のような心地いい空気で満たされていました。
写真/原田真理 取材・文/結城 歩 再編集/久保田千晴