30年以上、暮らしてきた家は、最愛の夫と二匹の犬と過ごした大事な家。 時を経ても色褪せないのは、愛情をもって暮らしているからかもしれません。
坂本光里/さかもとみさと
主婦
広告関係や人材派遣会社で働いたのち、ニット作家の落合徳子さんに出会い、編み物の世界へとのめり込む。その腕前はプロ顔負け。編み物雑誌『amirisu』のスタイリングを担当するなどセンスと感性も抜群。
エントランスを入ってガラスの扉を開くと、そこには、茶色のレンガを敷き詰めた床にコンクリート打ちっぱなしの壁、正面にはらせん階段があり、その奥にはバスルームが。その雰囲気は、さながら外国のホテルのようです。
「敷地は16坪、建物に限ってはわずか8坪の家なんです」。そういって笑う坂本光里さん。30年前に建築家の前田光一さんによって設計された一軒家は、 敷地面積のコンパクトさを有効に使うため、半地下を設けた三階建てになっています。
「半地下は寝室とウォークインクロー ゼット、1階はエントランスとバスル ーム、2階はキッチンとリビングダイニングになっています。それぞれ雰囲気が違うようにと考えられていて。もともと夫が前田さんと仕事関係で知り合い、ぜひ家を建ててほしいとお願いをして、この家ができたんです」
東京生まれの坂本さん。広告関連の仕事をしていた夫と結婚後、都内に中古マンションを買ってフルリフォームをしたのだそう。
「インテリアコーディネーターの友人と一緒に内装を決めていったのがとても楽しかったですね。 そのころから、家を作り上げる過程が面白いと思っていました。その後は、この家を建てる資金集めのために、そのマンションを貸して賃貸暮らしも経験して」
無事に家が建ってからは二匹のミニチュアシュナウザーも一緒に暮らし、あちこち旅行に行ったり、犬にまつわる本を出版したりと、忙しくも充実した日々だったといいます。
「夫が他界して犬も続けて亡くなってしまい、いまはひとり暮らしです。年を重ねるにつれ、階段の上り下りが厳しくなってきて……。マンションに住み替えようかな?と思ったこともありましたが、やっぱりこの家が好きで、 踏ん切りがつかないでいます。でも、いつかは中古マンションを買って、またフルリフォームするのが夢なんです。自分なりの快適さを求めていけたらいいなと思いますね」
『クウネル』2022年9月号掲載
写真/近藤沙菜 、取材・文/結城 歩