県内のいたるところでアートが楽しめる香川県。瀬戸内海に浮かぶ島「直島」は、アートが好きなら何度でも訪れたい島として知られています。
その直島に、アート・食・自然をたっぷり楽しみながら宿泊できる旅館『ろ霞』が誕生しました。
自然豊かな「里山」の風景に佇む旅館
直島へは、高松港から高速船またはフェリーで30分~1時間。船が直島の宮浦港に近づくと、直島のシンボル・草間彌生さんの「赤かぼちゃ」が見えてきました。
無事直島に上陸して赤かぼちゃを拝んだ後、迎えに来てくださった送迎車に乗り5分ほどで旅館『ろ霞』に到着。
もともと棚田が広がっていたという里山の風景を宿泊者にも堪能してもらいたいと、施設の周辺は豊かな自然がそのままに残されています。
山林を借景にした平屋の建物は、手前にレストラン棟、奥に宿泊棟の2棟。
レストラン棟から臨む庭には、〈水のしずく〉をイメージしたという、アーティスト名和晃平さんのシンボリックなオブジェが鎮座しています。庭や周りの里山の景色に不思議と溶け合うオブジェを、特等席であるレストラン棟のカウンターからしばし鑑賞……。
直島で楽しみにしていたアート鑑賞が、さっそく始まりました。
お部屋の中でもたっぷりアート鑑賞
『ろ霞』は、お部屋も楽しみのひとつ。大屋根の宿泊棟は、奥へと続く回廊が特徴的。「向こう三軒両隣」というかつての長屋暮らしを彷彿とさせるような、あえて人の気配を感じられるような設計は、里山に居を置く『ろ霞』らしいこだわりです。
客室は、ろ霞スイート1室、プレミアムスイート2室、デラックススイート8室の全11室。玄関の小上がりから、和室、その奥にリビングルームとつづく広々とした間取りで、一番奥に露天風呂が備わっています。
それぞれの部屋には現代アートが壁に飾られたり、襖絵が取り入れられたりと、美術館とはまた違った近い距離でアートをじっくりと鑑賞することができます。館内に飾られているアーティストの作品の一部は、購入も可能だそう。
夜の食事は、レストラン『EN』のカウンターで変わり寿司が振る舞われます。キスの握りは瀬戸内のレモン胡椒とレモン汁で、真魚鰹は小豆島のオリーブオイルと讃岐バジルで……といった趣向を凝らした鮨のコースを目当てに、宿泊者以外も食べにくるほどの人気。
また、東洋医学に基づいて作られる生薬から生まれた〈薬酒〉は、『ろ霞』を訪れたら食事と合わせてぜひ体験していただきたいドリンクです。
囲炉裏を囲んで一期一会の出会いを楽しむ
『ろ霞』での滞在中、とても気に入った場所が、敷地のちょうど真ん中にある屋根付きの囲炉裏。見ず知らずの宿泊者同士が自由に囲炉裏に集まり、薪をくべながら火を見つめ、偶然の出会いと会話を愉しむ一時……。一期一会はまさに旅の醍醐味だと感じられた時間でした。
囲炉裏で団欒中、ふと、誰かが「空を眺めよう」と言い、暗闇の中で見上げた夜空は満天の星空でした。
特別なアクティビティは用意されていませんが、都会では体験できない静けさと、鳥の声・虫の声を聞き「ただ流れる時間」を愉しむのが、『ろ霞』での贅沢な過ごし方。
もちろん直島の中に点在するオブジェや美術館を訪れて、たっぷりとアートと触れ合う時間も楽しんでくださいね。
直島旅館『ろ霞』
住:香川県香川郡直島町1234
電:087-899-2356
https://roka.voyage/
レストラン『EN』
ランチ12:00〜(14:00L.O)
ディナー18:00〜19:30(最終開始時刻)
取材・文/神保亜紀子