長野で「湯活」。『テルマエ・ロマエII』のロケ地・片倉館と、昭和レトロな塩井乃湯

塩井乃湯の看板

学芸大学の生活雑貨の店『MIGO LABO』の店主であり、フォトグラファーとしても活躍する、クウネル・サロンプレミアムメンバー石黒美穂子さん。長野旅で出会った、千人風呂と塩井乃湯。大正時代に建てられた古き良き銭湯を2スポットの魅力を教えてくれました。

「私のときめくことは『湯活』。銭湯や温泉が大好きで遠出の際は必ず、事前にチェックして立ち寄ります。長野では偶然、タイムスリップ気分の味わえる大正時代の建物のレトロな温泉をはしごしました。」


指定重要文化財の
『片倉館』を訪ねました。


長野県の諏訪湖は都内から松本へのドライブ途中の立ち寄りスポットとして最適なエリアです。そんな諏訪湖には以前、テレビ番組で紹介されていたクラッシックな建物の温泉施設があったことを思い出し、訪ねました。

片倉館』は大正時代に日本の輸出の大半を担っていたシルクで財を成した片倉財閥の二代目社長がヨーロッパ視察の際、農村にある更生施設に感銘を受け、地元・上諏訪住民のために温泉や社交、娯楽を目的として作られた施設です。

重厚なコンクリート造りの温泉浴場棟と木造洋風建築の会館棟あり、国の指定重要文化財になっています。

長野県諏訪湖の『片倉館』温泉浴場棟
高い煙突が目印の温泉浴場棟。まるでヨーロッパの田舎町のような風情が漂っています。
長野県諏訪湖の温泉浴場の会館棟
館内の見学も出来る会館棟。私が訪れた時は外観をバックにウェディングの撮影に出くわしました。
森山松之助が設計している温泉浴場
設計は主に台湾などで活躍した森山松之助によるもので様々な形式を取り入れた個性的な洋風建物。
片倉館の外観
夕日に照らされたフォトジェニックな建物に思わず時間を忘れて写真を撮っていました。
片倉館の温泉入り口
温泉の入り口は珍しい左右非対称の建物で気持ちはますます高鳴ります。
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受付で入湯料を払うと高鳴る気持ちを抑えながら受付横の資料の展示に目を通し、映画『テルマエ・ロマエII』のロケにも使われたという館内をくまなく見学。

館内も至る所に凝った造作があり、フォトスポットが満載。二階の無料休憩室は広くてゆったりしたスペースで太い柱のレリーフが素敵で日帰り温泉とは思えない優雅な雰囲気です。

片倉館の無料休憩室
昔の注意書きが歴史を物語り、天井のファンがゆっくりと回っている無料休憩室。
片倉館のエントランスにある牛山天玉という彫刻作品
エントランスにあるクラッシックなスケート姿の木彫りの彫刻は牛山天玉という信州出身の彫刻家の作品。
片倉館の受付横にある写真たち
受付横には片倉館の歴史解説とたくさんの写真が飾られています。
片倉館の立派な受付
番台と言うよりは立派な受付で入湯料を払います。
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お風呂内はテルマエロマエの世界観そのもの


一通り館内見学後、やっと本来の目的のお風呂に。天井の高い浴室は白を基調とした大理石造りで所々に飾られた彫像が違和感なく馴染んでいます。メインの大きな浴槽は深さ1.1mもあり、周囲の段差に腰掛けるか、立って入るような作り。

浴槽の底には大きな玉砂利が敷き詰められていて柔らかいタッチでツボを刺激します。私は水中ウォーキングが心地良くて、楽しくなってしまい何往復もしていましました。洗い場の目隠しとなる透かし模様など日本離れしたクラッシックな装飾は高級感があり、まるで古代ローマの公衆浴場・テルマエロマエの世界観そのものでタイムスリップしたような気分。

片倉館の前の諏訪湖湖畔は綺麗に整備された石彫公園や諏訪市湖畔公園があり、湯上りの水辺散歩もとても気持ち良くてオススメです。

片倉館の千人風呂
洗い場の目隠しとなる壁のレリーフや透かし模様が施され高級感が漂っています。(写真提供:片倉館)
千人風呂の中にあるジャグジー
大きな浴槽の他に区切られたジャグジー風呂もあります。(写真提供:片倉館)
片倉館からみる夕日の風景
風呂上がりに夕日の沈む湖畔で心地良い風にあたり涼みました。
八ヶ岳の牛乳
風呂上がりの牛乳が体に沁み渡ります。
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フォトジェニックな雰囲気漂う
塩井乃湯


今回は松本泊まりだったので松本の日帰り温泉を検索していたら、大正時代に建てられた銭湯を発見!!昼間の散策途中に外観だけでもみようと松本城に近い路地の塩井乃湯に立ち寄ると趣のある佇まいに銭湯好きの私は一目でロックオン!

塩井乃湯の外観
外壁の装飾は一見の価値のある美しさ。左から右への横書き看板は歴史を感じます。
塩井乃湯の看板
味のある塩類鉱泉の看板にお湯にも期待大!!
塩井乃湯の入り口
大正・昭和・平成・令和と歴史を歩んできた銭湯は松本市民の和みスポット。
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夕食後、銭湯グッズを持って一風呂浴びにいざ出陣。ガラスの引き戸を開けて、昔ながらの木札の下駄箱に靴を入れます。女湯の扉を開けるとそこには私が幼い頃に見ていた昭和の銭湯の風景。

お母さんたちが髪を乾かしていた遠赤外線のドライヤーチェアが鎮座し、脱衣カゴや針が揺れ動く体重計など王道の脱衣室オールスターが勢ぞろい!天井には美しいエンボス加工の花模様が広がり、レトロな扇風機ももちろん現役。

フォトジェニックな脱衣室に思わず「写真撮らせて頂いてもいいですか?」と番台の女将さんに聞くと「大丈夫ですよ。」と快くOKしてもらいました。

塩井乃湯の名物・装飾鉄板
大正時代にオランダから輸入された天井の装飾鉄板(エンボス)は塩井乃湯の名物。
塩井乃湯の脱衣所
長年、使い込まれた籐の脱衣カゴはツヤのある綺麗な飴色。
塩井乃湯の昔ながらの脱衣所
良く磨かれた脱衣室の鏡は出来た当初から変わっていないそうです。
塩井乃湯にある布団屋さんの看板
銭湯初心者に分かりやすく入浴方法が書かれている布団屋さんの看板はかなりの年季物
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浴室の作りは至ってシンプル。二つに分かれたタイルの湯船とシャワーのついた洗い場があります。湯船は小さい方が湯温低め、大きい方は高めと誰にでも入りやすいように工夫されているんだとか。無色透明でクセのないお湯は優しく肌を包み込んでくれて、心身ともにリラックス。

洗い場で一緒になった常連の年配のご婦人は色白のツルツルお肌。きっと温泉の賜物だと思い、私も(キレイにな〜れ!)と銭湯マジックを掛けながらお湯に浸かりました。

塩井乃湯の中にある注意書き
昔のままの水質成分表はお客様に寄り添った優しい注意書き。
古き良き塩井乃湯
風呂場は経年劣化で修繕や改修が必要だそうです。
懐かしいタイルで作られている塩井乃湯
懐かしいタイルの湯船は綺麗に掃除されているのがわかります。
石黒美穂子さんの塩井乃湯での写真
大正時代からある脱衣室の鏡で湯上りすっぴん自撮り。
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お風呂上がりに4代目の女将さん(田中洋子さん)からゆっくりお話を聞くことが出来ました。田中さんが幼い頃、二階の部屋からは他に高い建物がなかったので南アルプスや松本城も一望できたんだとか。

第二次大戦中は高い煙突が攻撃されるのではないかと心配していた事など塩井乃湯ヒストリーが次から次に。また、松本はドーナツ化現象が進んでおり、常連さんの高齢化でお客さんが減ってきていることや古い建物の維持が難しい事などお話していたらあっという間に閉店時間を過ぎていました。

遅くなっては申し訳ないのでおいとましようとすると田中さんから「良かったら風呂場や男湯の方もお写真撮って下さい。」と嬉しい一言で禁断の男湯まで撮影させて頂き、私の銭湯熱がますますヒートアップした夜でした。

塩井乃湯の貴重な資料
貴重な資料を見せて下さった田中洋子さんの美しい手は温泉の賜物
ドキュメント番組に出演された際のチラシ
テレビのドキュメント番組でお客さんとの交流が何度か取材されたそうです。
塩井乃湯の男風呂の風景
男湯の脱衣室は一面がロッカーで当時の賑わいを感じます。
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