【スズキエミさん・季節を味わう手仕事レシピvol.4・インタビュー後編】「保存食作りや手仕事は面倒なことばかりじゃない。肩の力を抜いて試してみて」

スズキエミさんの保存食

味噌作りや梅仕事など、季節の手仕事に定評のある料理家のスズキエミさん。2022年3月に著書『季節を味わう手仕事レシピ』(主婦の友社)を上梓しました。

季節を追いかけるように手仕事を楽しんでいるというスズキエミさん。作ってすぐに食べられるものもあれば、時間をおくことで出来上がるものや、よりおいしくなるものも。

vol.1、vol.2ではレシピも含めて著書に収められている保存食について紹介しましたが、今回は、保存食や食まわりの手仕事についてスズキエミさんに伺いました。前編【スズキエミさん・季節を味わう手仕事レシピvol.3】「あんこ炊き名人の祖母を目指して、あんこを炊く時間を楽しんでいます」に続き後編のインタビューをご紹介します。


■「食べることに関して面倒と言ってはいけない」祖母の言葉です。


ーー改めて、スズキさんの保存食作りや手仕事はご実家やお祖母さまの影響が大きいのですね。食べることに対する考えかたなども学ぶことがあったのでしょうか?

スズキエミさん(以下、スズキ): そうですね。家族みんな食べることは大好きだったと思います。私は弟がふたりいるのですが私も含めて姉弟みんなが飲食に関わる仕事をしているんです。

ーーそれはすごいですね!

スズキ: そう。ジャンルは全然違うんですけどね。
それから、よく覚えているのは、子どものときに祖母に畑から長ねぎか何かを採ってきてって言われたんです。それに対して「面倒くさい」というようなことを言ったら、祖母が「食べることに対して面倒と言ったらいけないよ」と言ったんです。子どもながらにその言葉が刺さったんですね。いまでも、ちょっとしたことで億劫だなと思うことがあると、そのときの祖母の言葉を思い出します。

ーーなるほど。とても印象深いお話ですね。そういう背景が保存食作りや手仕事など丁寧な暮らしぶりにつながるのですね。

スズキ: いえいえ。保存食や手仕事に関する仕事が多いこともあり、さぞ丁寧な暮らしをしているんじゃないかと言われることは多いです。でも、まったくそんなことはないし、世の中のお母さんや忙しい女性と同じように私も日々バタバタしていますよ。

キッチンに立つスズキエミさん
料理教室も行うキッチン。広々としていて作業台のスペースも大きい。すり鉢も実家や祖母を思い出させる大事な調理道具のひとつ。

■余った野菜を天日干しするだけ。驚くほど甘くなるんですよ。


保存食というと手間も時間もかかると思われがちで、なかには味噌作りなど大変なものもあるけれど、余った野菜をただ干しただけ、ただ漬けるだけ、といったものもたくさん紹介しています。

ーー夏の章で紹介している干し野菜ですね。天気がよければ1日で干し上がると。

スズキ: そうなんです。干したきゅうりの甘みには本当に驚きますよ。
以前もお話ししたように、私の場合は実家が農家だったから、どうにも食べきれない野菜をこうして干したり漬けたりして保存させていたけれど、今は八百屋さんやスーパーで買ったものを使っています。
旬の野菜や果物はみずみずしくて手ごろなものが多いので、多めに買って普通に調理に使い、余ったもので「ちょっと試してみる」でいいと思うんです。

たとえばジャムもそう。実が立派できれいな旬の果物を使うのもいいけれど、名残りのものや、熟れすぎたものでもまったく問題ありません。レシピの重量に満たなければ、ある分だけで作ればいいんです。量が少なければ短時間で作れてむしろおいしくなると思います。ただし、その分、砂糖などの分量は調整してくださいね。

「保存食」というとどこか気張ってしまうことがあるかもしれない。でも、意外と簡単だし、ざっくりでも大丈夫。それに、保存食や手仕事のものがあると、日々のごはん作りもうんと楽になると思いますよ。もっと気軽に、肩の力を抜いて試してもらえたら嬉しいですね。


■これからの時期はなんといっても梅仕事。何もしない「梅シロップ」をぜひ。


ーー保存食作りや手仕事のビギナーにおすすめなもの、他にもありますか?

スズキ: これからの時期はやっぱり梅仕事ですね。とくにおすすめなのは「梅シロップ」。 材料は氷砂糖と青梅だけで、氷砂糖がゆっくり溶けて青梅のエキスを抽出してくれます。

ーー梅を凍らせてから漬けたり穴を空けたりする作り方もありますが、スズキさんはあえて、そのどちらもしないのですね。

スズキ:いままで数えきれないほど梅シロップを作ってきて、それらのやり方を試したこともあります。でも、あえて何もしなかったときのほうが梅特有のえぐみがなく、飲んだ時に喉に引っかかる感じがまったくなかったんです。梅にストレスを与えないのが良かったのかもしれないですね。
梅仕事に正解はなく、むしろどのやり方も正解だと思うのですが、ぜひ一度、この何もしないやり方でも作ってみてほしいですね。

ーー梅シロップはご家族も大好きであっという間になくなってしまうとか。

スズキ:そうなんです。毎年、7㎏分ほど梅シロップを作っていますが、ひと夏でなくなってしまうことも。
息子がまだ赤ちゃんだったとき、手足口病になってしまい何も口にできなかったことがありました。でも、この梅シロップだけは飲むことができて、すごく助けられたんです。「梅はその日の難逃れ」という言葉もあるくらい身体の力になってくれますね。
本のなかでは梅シロップのほか、「梅の白干し」、「梅ジャム」も紹介していますので、ぜひご覧ください。

スズキエミさんの梅シロップ
去年、梅シロップを作ったときの写真。「まめに瓶をふってエキスを梅になじませてあげるのがポイントです」
スズキエミさんの保存食
梅シロップやビネガーなど。炭酸のほか牛乳で割ってもおいしいそう。「ビネガーはドレッシングなど料理にも使えて便利ですよ」
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\絶賛発売中 /

聞き手/結城 歩 撮影(シロップ・ビネガー)/スズキエミ

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