【大平一枝さん・ただしい暮らし、なんてなかった。vol.4・インタビュー前編】「歳を重ねて変わった人付き合い。変えていきたい思い込み」

大平一枝さんポートレート

「朝日新聞デジタル『&W』で台所の連載を長く続けるほか、著書も多い文筆家の大平一枝さん。2021年12月に新刊『ただしい暮らし、なんてなかった。』(平凡社)を上梓しました。

2011年に刊行された『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)の続篇的なこの本は、各エッセイの最後に「かつて」「いま」といった記述があるのが印象的。
50代となり、歳を重ねたからこそ、そして、大平さんならではの実体験を基に紡ぎ出される言葉は、一字一句、心に刺さるものばかりです。

vol.1~vol.3では著書の一部を紹介しましたが、今回は、著書を含めて大平さんの暮らしまわりや人付き合い、物との付き合い方など、お話を伺いました。前編・後編の2回に渡ってご紹介します。


■限りある時間を有効に使いたいから。人付き合いも見直しを。


ーー著書『ただしい暮らし、なんてなかった。』は章ごとに暮らしまわりのことについてまとめられていますが、第三章の人付き合いについて、とくに興味深かったです。とくに、「四人以上の会食には行かない」という文言が印象的でした。

大平さん(以下、大平):本の中でも書いていますが、数年前から大勢でワイワイ飲んだり食べたりすることが以前ほどは楽しめてないという感覚がありました。人数が多いとどうしても会話が分かれてしまうし、人が多ければ多いほど近況報告で終わってしまうということもあって。

そんなとき、友人が「四人以上の食事会にはあまり行かないことにしている」と言っているのを聞いて、そういうふうに自分のなかで決めるのっていいな、と思ったんですよね。

もちろん、すべての誘いを断っているわけではないし、仕事関係の打ち上げなどには喜んで参加させてもらっています。でも、なんというか、若いときのように、なんでもかんでも顔を出してワイワイするのはもういいかな、という心境なんです。

ーーそれは年齢を重ねたということが大きいのでしょうか。

大平: そうですね。一番は「時間がもったいない」と思うからかもしれない。
友人が大きな病気をしたこともあるし、自分もいつまで書けるか分からない。限りある時間を有効に使いたいんです。いまはとくに気軽に人と会ったり食事したりするのが難しいから、なおさら一回一回を大事にしたいと思っていますね。


■ママ友から親友へ。50代になって人付き合いの関係も変化した。


ーー著書にはほかにも人付き合いについて書かれていますが、女性は「ママ友」についてもいろいろありますよね。大平さんはお子さんがもう独立していますが、ママ友遍歴についてはどうですか?

大平: そりゃもう、いろいろありましたよ(笑)。息子と娘がいて、それぞれの学校やら学童やら習い事やら……。息子に至っては大学に入ってからも息子の友達のお母さんとやり取りする機会もあって。ちょっと驚きましたね。

子どもが小さなときは小さなトラブルがあったり、いろいろ悩んだりもしたけれど、楽しかったですよ。でも、「ママ友」ではなくて「同士」という感じ。ある一定期間、同じ時間を共有している同士のほうがしっくりきますね。だから、その期間が終われば同士の関係も基本的には解消。そう思えば多少は煩わしいことも我慢できるというか。

ーー確かに同士という言葉はぴったりですね。いまでも親しくしている方もいますか?

大平: はい。でも、その関係性が変わってきていると感じます。以前、暮らしていたコーポラティブハウスがここから歩いて10分ほどのところなんですが、そこの住人のママさんは長男同士が同級生だったこともあり息子が子どものころからずっと親しくしていたんです。子どもを預かったり預かってもらったり、たくさん助けてもらって。

そんな彼女と最近は毎週のように会い、コロナ禍は夜にウォーキングをしていました。
ウォーキングしていたときは、近所をぐるっと歩いたあとにベンチに座って缶ビールを飲みながら話すのがお決まりのスタイルで。その時間が私にとって癒しでもあり、ヒントももらえる大切な時間だったんです。

ーーいいですね。ご近所さんならではという感じ。

大平: そうなんです。 当時の話題はというともっぱら子どものことやママ友の噂話なんかだったけれど、いまは互いの仕事のことや親の介護、今後の生き方についてなど。大事なことを話せる存在になっていったんです。
コロナウイルスの影響も大きいかもしれません。コロナウイルスによって働き方や生き方などさまざまなことに影響があり、ふるいに掛けられたけれど、人付き合いもまたそう。
さらに年齢を重ねたこともあり、人付き合いも変化する変わり目なんだと強く感じていますね。


■アレンジが楽しい!短いヘアスタイルを楽しんでいます。


ーー次は、vol.2でも紹介したヘアスタイルのことについて教えてください。短めの前髪、とても素敵です。すっかり定着された感じですか?

大平: そうですね。全体の長さも短くしているので、アレンジするのが楽しいんです。長かったときは、ちょっと巻くか結ぶくらいしかしなかったけど、いまは膨らませてみたり、逆にボリュームを押さえたり。毛先をハネさせたり巻いたりも。
最近は人生ではじめてカーラーを使ったんです。以前より髪の毛全体に興味が湧いて、いろいろ試してみたいという気持ちになっています。

ーーヘアスタイルに合わせてメイクが変わったというのも興味深かったです。

大平: そうですね。でも、歳を重ねれば重ねるほど、ヘアもメイクも長年ずっとやってきたスタイルを変えるのって難しいんですよね。

ずいぶんと前のことですが、美容関連の記事を書いた際に大手の化粧品メーカーの方に話を聞く機会がありました。
そのメーカーさんでは、新色の化粧品が出ると全国の百貨店の美容部員さんを集めて講習会のようなものを開くそうで。その際、みなさんメイクを落として新しいものをいろいろ試し「これはいい!」「使いたい!」となるのに、講習会が終わると一斉にメイクを落として、また元のメイクをして帰っていくんだそうです。

ーーなるほど。新しいものがいいと分かっていても、それを取り入れることはしないと。

大平: そう。とくに女性って、長年ずっとしていたこと、とくにヘアやメイクを「変えること」が難しいんだろうなって。怖さとか思い込みもあるのかも。確かに若いころは似合っていたのかもしれない。でも、そこから何年経った!?って。それに気付いていかないといけないですよね。


■ 硬くなった頭を柔軟に。ひとの意見を素直に聞いてみるのも大事。


ーー大平さんの場合は、その気付きのきっかけが「美容院」だった。仕事仲間の評判を聞いて、でしたね。

大平: そうです。仕事仲間や友人のアドバイスが大きいですね。洋服の展示会でもプレスの方のおすすめやアドバイスを参考にすることが多いです。

以前、とある展示会でプレスの方に赤いワンピースを勧められたことがあったんです。「この赤、大平さんにいいと思いますよ」って。
そのときは「赤!?ないないない!」と思ったんですが、それでも推してくれたので、そこまで言うなら一枚試しに買ってみようかなって。そうしたら、そのワンピースを着ていると、いろいろな人にすごく褒められたんです。

若いときはアースカラーのものばかり着ていたけど、歳をとったいま、アースカラーだけだと逆に厳しい。その赤いワンピースも若いときなら似合わなかったんじゃないかなと思います。
歳を重ねると年々、頑固になってしまうところってありますよね。でも、第三者の意見やアドバイスを聞いて気軽に試してみる、そういう柔軟さも大事にしていきたいと思っていますね。

大平一枝 ピアス
短く切り揃えられたヘア。ピアスは娘からの贈り物。アフリカンバティック生地のワンピースもよく似合っていた。

→インタビューは次回に続きます。


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聞き手/結城 歩  著者撮影/安部まゆみ

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