【島田順子さん80年の軌跡vol.7】「何度作っても、100%の納得は得られないの…」

島田順子 生き方 ファッション

四季のめぐりとともにコレクションシーズンを歩んできた島田さんが語る、長いデザイナー人生のこれまでとこれから。どんな人生を過ごしてきたら、年齢を重ねてもなお魅力的なデザイナー・島田順子さんのような女性になれるのでしょうか。「80年の軌跡」シリーズ最終回です。

この先は自分らしいもの、 これまで培ってきたものを表現していきたい。

「自分がデザインした何十年も前の服がクロゼットのなかにたくさんありますが、今どの服を着てもおかしくない。 自画自賛みたいですがデモデ(時代遅れ)じゃないのよね。同じようなアイテムが何枚もあって、つまり好きなものが全然変わらないんです。クウネル 世代の皆さんもそうじゃないでしょうか。好きなものって割と皆さんずっと同じで、そのシーズンによってどこかがワンポイント違うだけのような気が します。もちろん、ショップで新しいものを見るとワクワクしますけど、基本は変わらないのかなと思います」

一般的には島田さんほどの年齢になると、引退して仕事から離れる人がほ とんど。けれど、島田さんは現役のファッションデザイナーとして、半年ご とに新しいアイデアを見つけてデザイン画を起こし、服に落とし込んでショーをし、人に届ける。休むことなく現場で前を向いて進んでいます。

服作りの姿勢は40年間変わらず

「もちろん、この調子で続けていてもいいんだろうかという戸惑いは常に目の前にぶら下がっています。でも、アイデアを思いついてデザイン画を描き始めると、嬉しくなって面白そうなものが何枚も完成する。これはどうしようもないんですね。反対に、いつまで と決めて辞められる人は幸せなんじゃないでしょうか。私は自分のためだけじゃなくて働く責任がある。それは使命感として持っています」

島田さんにとってデザイナーは天職。 40年が経過しても好きなファッションは変わらず、いいアイデアが浮かぶと何枚ものデザイン画が完成する。服作りの姿勢は、パリコレに参加し始めた40年前と変わりません。

100%満足がいっていないからこそ

「パリに来た頃は世間知らずだったから、 いつかプロになりたいと思いながら、根拠のない不思議な自信にあふれていたのかもしれません。今だって、プロにならなきゃと思っています。やっぱり、何度コレクションを作っても100パーセント満足はできなくて課題が残るし、毎回『どうしよう、 助けて。アイデアがないの。どうしたらいい?』って周囲に愚痴をこぼしています。すべてに納得できていたらとっくに辞めていると思いますよ」

島田順子 生き方 ファッション
来シーズンのデザイン画を創作中の島田さん。

この先の未来は…

40年は通過点。さらに走り続ける島田さんですが、この先の未来はどんな 夢を描いているのでしょうか。

「たとえば、フランスの夏は夜遅くまで明るいのですが、昨夜庭を見ていたら、青い空のなかに真っ赤な雲の線がさっと出てきたんです。そんな一瞬の偶然の出来事が見られたこと。あるいは、昔植えた庭の藤がぐんぐん伸び、 今では隣の木にまで広がって、空に届くほど高いところまで花をつけていること。そういう何でもない小さなことがとても幸せ」

「この環境は自分では何も作っていないし、単なるめぐり合わせなんですが、そこに居合わせて眺められる。そういうことがこの先もずっと続いてくれたら嬉しいし、それが私の描く未来の夢ですね」

『ku:nel』2021年9月号掲載

写真/Ylias Nacer(島田さん)、取材・文/綿貫あかね 、協力/中西千帆子、島田今日子、編集/黒澤弥生

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