【松永加奈のフランス便り65】パリ生活を締めくくり。いろいろあった6年でした。

松永加奈 フランス便り

在パリ約6年のクウネル・サロンメンバー松永加奈さん、日本への帰国が決まり、フランスレポートがいよいよ今回でラストとなります……。トラブルは少なくないけれど、世界屈指の観光地の美しい景色にときめきをたっぷりもらい、あっという間の6年間だったと振り返ります。

 

パリ暮らしの一歩はテロ騒動から

初めてパリへ来たのは6年前の秋でした。ファッションウィーク、いわゆる〝パリコレ〟の時期と重なり、ファッショニスタが闊歩する華やかな街を眺めながら「ここに住むのかー」といまいち実感がわかないまま、住まいを決めて一旦帰国。その直後にテロが起き、観光客が一時的に姿を消し、銃を持つ兵士が街中に配置された2015年の冬、私のパリ生活はスタートしました。

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パリの街を彩る高く伸びた並木。初夏のグリーンが作る木陰はアートのような美しさ。
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狭かろうがぎゅうぎゅう詰めだろうが、みんな率先してテラスへ。だからいつも外はとってもとーっても賑やか!
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〝元宮殿〟の肩書を持つ建築物のほとんどは博物館や美術館になっていてカフェも併設。お茶を飲むだけでも優雅な気分になれるのです。
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ファッションウィーク(パリコレ)が始まると各所にセレブが集中。歩いていたら何度かフォトセッションに巻き込まれました…。
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大判の布を敷き車座になったり寝転がったり。凝ったことは何もせず、ただただ空の下で寛ぐのがフランス人のピクニック。私もよくごろごろしていました。
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ビストロ料理もパリの思い出の1つ。素材やワインの知識は最後まで全然身に付きませんでしたが「おいしいね!」と言いながら食べる時間は至福でした。
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日本的な「暗黙のルール」は通用せず

海外生活はソウルに続いて2回目でしたが、言語はもちろん、アジアとヨーロッパでは生活習慣がかなり違うので、生かせる経験は「度胸」のみ。当初は「Bonjour」「Merci beaucoup」の連発とジェスチャー、周りの人の動きを真似してみる…の繰り返しで、失敗しても「次こそは」と果敢にトライする日々でした。それでも意思疎通できなかったり、あまりにアバウトな国民性にため息をつくことも(むしろそればかり?)。とはいえ、落ち込んでいる暇はなし。フランスで「暗黙の了解」は通用しないので、自己主張は強めに、しょっちゅう起きる生活トラブルは「まあこんなものだろう」と受け流していたら、あっという間に6年が過ぎた感じです。

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公園の端にあるチェステーブルに集う人々。座っていればどこからともなく対戦相手が登場します。卓球台も人気ですが、石製のテーブルは跳ねすぎるので要注意。
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2018年11月から始まった燃料税引き上げに反対するデモ、通称「Gilets jaunes(ジレジョーヌ/黄色いベスト)」。暴徒化した人々が大問題に。
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この写真を撮った1週間後、ノートルダム大聖堂の尖塔は焼け落ちました。2024年の再開を目指して修復工事が行われています。
2018年7月、サッカーワールドカップでフランスの優勝が決まると、みんな一斉にシャンゼリゼ大通りへ。マクロン大統領がテーブルに上って歓喜した様子が話題に。
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パリの秋は短く、あっという間に葉が散ります。この美しさはほんの一瞬で、すぐにさむーいくらーいながーい冬が到来。
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毎日あちこちから聴こえてくる鐘の音が大好きでした。恐らく私にとっては一生分の数の教会を訪れたかも?写真はパリを発つ直前にパイプオルガンを聴きに走ったサン=シュピス教会。
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フレンドリーな人々と美しい景色に元気づけられる

もともとフランスに強い憧れがあったわけではありませんでしたが、来てみれば、やはり世界屈指の観光地。巨大なモニュメントに歴史的建造物、有名な美術品など、教科書やテレビで見た「あの」本物が身近にあることは感動的で、それは最後まで貴重な経験でした。そこに暮らす人々はプライドが高く、個人主義…ではありますが、基本的に人との距離感が近く、他人でも気軽に何か訊ねたり、手を貸したり、目が合うと挨拶や笑顔を交わしたり、イメージしていたよりずっとフレンドリーな印象。おかげで、旧式ばかりの不便な日常や、在パリ中に起きた大規模スト、長期間のデモも、「C’est la vie」(これも人生さ、仕方ない)と声を掛け合ったからやり過ごせたシーンがいくつもありました(でも大変だった…)。

一方、治安の悪さは変わることなく、事件は多いしスリはうようよ。美しい景色の中に悪い人の影がチラチラ見えるのは腹立たしい限りですが、結局これもパリなわけで、人ごみでは常に緊張感を持って行動。改めて「日本の治安の良さ」を思い返しています。

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デモもストもしょっちゅう起きるので「ああ、またか」という感じでしたが、2019年12月のストはかなり大規模で、テレワークが始まるなど生活も一変。主要路線が2か月ほど止まり混乱の日々が続きました。
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やっとストが終わったら、次はウイルスによるロックダウン。飛行機が消えた空と、誰もいない道を眺めながら「これは大変なことになったな」と思ったものです。
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いつなんどきも街は花で溢れていて、世の中がどれだけ混乱しようが季節はちゃんとやってくるんだと励まされました。
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在パリ中に1番歩いたのは、きっとセーヌ川沿いかと。心癒されたこの景色ですが、大雨で何度も氾濫しかけ、そのたびに橋の間近に迫る流れを見ながらひやひや。
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時折、街角で音楽が流れて即席ダンスパーティーが始まります。もちろん誰でも飛び入り参加OK。こちらは帰国前に通りがかったヴァンドーム広場にて。
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パリ6年生の私、何が起きても「C’est la vie」(これが人生)と言えるように…少しはなれたかな。
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パリ生活終盤はロックダウンに

パリ生活の終盤は、予想だにしなかったウイルスとの闘いでした。道から人も車も消え、公園は閉ざされ、外出が厳しく制限される完全ロックダウンをまさか海外で経験するとは。つくづく、生きているといろいろなことがあるなと実感。フランスの人々が好む「芝生で何もせずのんびりすること」「公園をぶらぶらすること」「友達と会っておしゃべりすること」がいかに楽しく贅沢な時間の過ごし方か、ということを改めて知った気がします。

私にとって遠い異国の地だったパリは、いろんなことがあった6年間で、縁のある街になりました。再び始まる日本での暮らしの中で、自由とバカンスをこよなく愛するフランス人と、芸術家たちがこぞって描いてきた美しい風景がふと思い出されるのも、悪くないなと思います。それでは、フランス便りはこのへんで。ありがとうパリ、またいつか。

★松永加奈のフランス便りをご愛読いただきありがとうございました。
11月からは、東京に居を移した松永さんの日常便りをお送りします。お楽しみに!

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