【6月】調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」

梅雨空が続いていますが、暦の上では「夏至」を迎える6月。一年の中で、もっとも日が長く、夜が短くなる季節です。5月に続き、今月も草花に造詣の深い、世界的パフューマーの大沢さとりさんに、たとえステイホームでも季節を楽しめる、小さなお菓子を教えていただきました。

『嘉祥(かじょう)の日』をご存知ですか? 6月16日は、古くから和菓子を楽しむ日とされています。平安時代に生まれた『嘉祥の日』は、明治時代に一度廃れてしまったのですが、1979年、再び全国和菓子協会によって「和菓子の日」として復活したのだといいます。
また、 6月の末日(晦日)は、12月の大晦日と同じく「大祓(おおはらえ)」の日とされます。 例年、全国各地の神社では、罪や厄災を祓う「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われ、茅草でつくった輪をくぐる「茅の輪(ちのわ)くぐり」が行わることでも知られています。 本格的な夏を控え、心も体も整えていきたいですね。


1『とらや』紫の玉

嘉祥の日にさとりさんが向かったのは、 アトリエからも程近い赤坂の『とらや』。 お目当ては、目にも鮮やかな羊羹製の「紫の玉」。永楽芦の平茶碗との陰影も印象的な、朝の一服。「紫の玉は紫陽花の意匠で、羊羹製というのは『こなし』のことですね。……というのは、とらやさんのホームページで入れたにわか知識ですが」★1

2. 『スプラウトカフェ』のプリン

滑らかな生地、ふんわり軽い生クリーム、香ばしいカラメルの三位一体が楽しめる、さとりさんお気に入りのスプラウトカフェのプリン。夏茶碗は有田焼・徳永榮二郎さんのもの。「パルファン・サトリの茶壷香水瓶も作って頂いた徳幸窯の轆轤師で、素晴らしい作家さんです」★2

上から見ると、クリームのロゴがかわいらしい。「なんだか生ビールのようにも見えてきますね」

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3.近所のスーパーで買ったミニ柏餅

明治神宮御苑にある4000本の花菖蒲園の花が、見頃を迎える季節。ミニ柏餅の奥は、木目を水の流れとなぞらえて菖蒲を描いた、八橋の香合(香を収納するための茶道具) 。★3

気品にあふれた美しい立ち姿で咲く花菖蒲。「はるか昔、学生の頃に、神宮の菖蒲園でデートしたことを思い出しますね(笑)」

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4.『巌邑堂』の抹茶のカステラ

6月1日は気象記念日。現在のホテルオークラのある場所に、全国で最初の気象台が置かれたのだとか。『巌邑堂』の抹茶のカステラは涼緑色で「超高級なシベリアのような味わいです」。雷神の茶碗と、太鼓の香合もあわせて。

【今月のさとり花図鑑】
まだ世界中がパンデミックに陥るなんて、夢にも思わなかった2019年11月、南仏・グラースにある香料植物園で「チュベローズ」の球根を掘り上げていました。花時は7月から9月。チュベローズという名前ですが、植物学的にローズとはまったく無関係で、リュウゼツラン亜科の球根草花です。 甘く濃厚な、肉厚の白い花の香りが特徴で、香料ともなると、コンソメのようなハムのような、塩気のある匂いも含んでいます。
ちなみに、ホワイトフローラルの香りは、こっくりとしたとろみがあり、捉え方によっては、暑苦しかったり、少し厚かましい側面も持ち合わせています。イランイランやジャスミン、ガーデニア、マグノリア、オレンジフラワーなども、このホワイトフローラルの仲間です。

球根草花のチュベローズ。

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