【作家・辻仁成さん/前編】美味しいご飯で築けた、シングルファザー×息子のほどよい距離感

辻仁成さんが黒い服のコーデで立っている

人生経験を積んでいくと、親しい人との関係性も少しずつ変化するのは当然のこと。良い関係を楽しめている親子が語る、つながりや今の距離感を保つ秘訣とは?

シングルファザーとして、息子ファーストで生きようと決意。

書籍『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』の表紙

息子が10歳の時、シングルファザーとなり、男ふたりきりの生活が始まっ たという、作家の辻仁成さん。

「心を閉ざしてしまった息子を見て、今まで好き勝手に生きてきたんだから、子供ファーストで生きようと思いました。僕自身が落ち込んでいる暇などなかった。母親代わりはできなくともご飯はつくれる。『ご飯だよ』『おいしい?』と声をかけ続けました」

そんな息子との日々を綴った『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 が発売早々3万部超の大ヒット。辻さんに息子との付き合い方を伺いました。

独り立ちする息子から、うれしい言葉。
「おいしいご飯のつくり方教えてよ」

辻仁成さんのイラスト
辻仁成さんのイラスト
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「18歳になった息子には、しっかりしているところと、子供だよなって思える部分が混在しています。でも、ひと月前の彼と、今の彼では違う部分がみえる。つまり、それほど今の時期の成長は早いということなんです」

インタビュー当時、息子はパリでひとり暮らしする部屋を探し、辻さんと ひと月の生活費を話しあっていました。

「これからは『ご飯だよ』と言ってくれる人はいないから、全部自分でやらないとね、というと『じゃあ、おいしいご飯のつくり方を教えてよ』ときた。 それなら大学の合格祝いに日本の炊飯器を買ってあげるといったら、とても喜んでくれました。9年間つくり続けたご飯が彼の舌に記憶され、今後も食べることにはきちんと向かい合ってくれそうです。食べることは生きること。それを教えるのが僕の仕事でした」

男VS男の関係が、 少しずつ見えてきた

「この前、突然息子から『ECHOES(辻さんのバンド)大好き』ってメー ルが来たんで、どうした?と聞いたと ころ『たまたまYouTube でパパのストレンジピープルが流れてきて、いい曲だった。昔の方が今よりいいじゃん』 と言われ、余計なお世話だよ!って」

息子と父という関係は変わらないものの、少しずつ男VS男の会話が増えてきたようです。

「今後社会に出て行く息子が、社会の先輩である僕にアドバイスを求める関係にもなるだろうし、音楽や映像に興味のある息子と一緒に仕事をすることもあり得るのでは?と思います。なんだかんだいっても、僕の背中を見て育ってくれたんで、気がついたら同じようなことをやっていましたね」

大学で都市開発や環境を学ぶ息子の将来は、まだまだ無限大。もしもお互 いを切磋琢磨しあえる存在になれば、それも素敵な関係ではないでしょうか。

『クウネル』2022年11月号掲載

イラスト/辻 仁成、構成・文/今井恵

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