人生経験を積んでいくと、親しい人との関係性も少しずつ変化するのは当然のこと。良い関係を楽しめている友人たちが語る、つながりや今の距離感を保つ秘訣とは?
北村光世/きたむらみつよ
83歳 食文化研究家
ハーブ料理研究の第一人者。著書に 『まいにちのハーブレシピ1枝でぐっとおいしく、健やかに!』(河出書房新社)など。
藤本教子/ふじもとのりこ
54歳 PR&コミュニケーション
外資系化粧品会社でPRを務めたのち独立。メディア関連のほか、アートのPRにも力を入れる。葉山に暮らし、サーフィンを楽しむ日々。
ハ ーブのいい香りに包まれた北村さんの素敵なご自宅で、一緒に食事を楽しむことが多いお二人。年齢差は30歳もあるのに、「会話は基本、敬語抜きです」と、上下関係のないフラットな友人づきあいが15年も続いていると語る藤本さん。
「世代が違うから、お互い異星人みたいに思うところもあるし、かと思えば好みや価値観が似ているところがあって、その極端さが面白いんです」
「食とイタリア好き」という共通点が二人の友情を深めたと言います。イタリア・パルマにある北村さんの別宅に滞在し、チーズやワインの生産者を一緒に訪ねたことも。
「人生の先輩でもあり、食に関しても北村さんから学ぶことが多いので、ときには先生と生徒、ときには親子のように感じることもあります。でも、北村さんはとにかくフランクなお人柄で、誰に対してもウエルカム。奉仕や利他の心をもって人に尽くす細やかな方なので、居心地が良くて自然と人が集まってくるんですよ」と藤本さん。
「いつも明るく接してくれる彼女には、私も遠慮なく言いたいことを言えるの」と北村さんも笑って応えます。
「海外の友人も多いから、人を招いて食卓を囲むことは日常。年齢も性別も関係なく、初対面の人を自宅に招くことだってありますよ。私にとってはみんな友達。料理はもちろん、私の知識や経験でよければどうぞ、どうぞ、とわかち合う。私も藤本さんや若い人から新しい考え方を学んだり、たくさんのことを受け取っているんです」
好奇心旺盛で前向きなエネルギーに溢れる北村さんは、これからの人生のお手本という藤本さん。
「人は変わっていくものだし、親密になれば関係性が変わるのも当然のことでも、自分の価値観に固執したり、好き嫌いで物事を決めつけたりするのはもったいないと思う。北村さんやまわりの素敵な方たちを見ていると、鷹揚な心で相手を受け入れることが、人生を豊かにする大人のつきあい方じゃないかと思います」
『クウネル』2022年11月号掲載
写真/玉井俊行、取材・文/小林賢恵