演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめシアター『キンキーブーツ』

伊達なつめ

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんが旬の公演を紹介。今回は、「自分が変われば世界も変わる」、そんなメッセージが込められたミュージカルが新しいキャストで登場する『キンキーブーツ』のお話です。

作り手の慈愛に満ちたスピリットに包まれる名作

父から引き継いだ経営難の紳士靴工場を、男性用ハイヒールの製造で立て直す青年社長とドラァグクイーン。実話をヒントにした映画『キンキーブーツ』(’05年)は、英国の地方都市の因習にまみれた日常に、突如ドラァグ・カルチャーが参入する意外性が目を引く佳品でした。

サンダンス映画祭でこれを見たブロードウェイのプロデューサーが舞台化を企画し、 ’12年にミュージカル『キンキーブーツ』が 誕生。

俳優・劇作家・脚本家として幅広い才能を発揮するハーヴェイ・ファイアスタインが、脚本を手がけまし た。

’70年代からドラァグクイーンとして同性愛者の権利のために活動してきたアクティヴィストだけあって、ファイアスタインは軽快なコメディのなかに「他者との違いを受け入れる」「自分が変われば世界も変わる」といった 切実かつポジティブなメッセージを込め、作品に骨太な普遍性を与えました。

日本初演は’16年。ブロードウェイでこの作品を観て以来、ドラァグクイー ンのローラ役を演じることを夢見てきたという三浦春馬の渾身の演技が絶賛されました。二年前にその訃報が入り騒然としていた渦中に、ファイアスタインはこんなツイートをしています。

「美しい魂が失われてしまった。みなさん、どうか聞いて。(略)自分の気持ちを抑え込まず誰かに伝えるので す。他の人のためにすることを、自分にもしてあげるのです」(意訳)。

自身を含めて、これまでどれだけ多くの傷つき、自らを追い込む人々に接してきたかが察せられ、胸が熱くなりました。動揺が収まらない私たちをハグするようなファイアスタインの慈愛に守られながら、新キャストでの上演を応援したいと思います。

文/伊達なつめ

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