心の支えとなっているもの、暮らしで頼りにしているもの。「愛するもの」についてのストーリーを語っていただきました。
石川博子/いしかわひろこ
ファーマーズテーブル店主
スタイリストを経て、1985年に暮らしの雑貨を扱う『ファーマーズテーブル』をオープン。著書に『「ファーマーズテーブル」石川博子わたしの好きな、もの・人・こと』(主婦の友社)。
雑貨店『ファーマーズテーブル』をオープンして37年になる、オーナーの石川博子さん。定番商品のひとつが、『ワランワヤン』のモロッコの革製スリッパ、バブーシュ。石川さん自身も愛用して20年以上経つのだとか。
「いいスリッパを探していたときに、 バブーシュに出合ってからはこればかり。モロッコの1人の職人さんが手縫いで作っているから、1日に1足作れないことも。でも時間をかけて丁寧に作られているので、作りがしっかりしていて、今履いているものは、2年は履いていますが、ステッチも全然ほどけません」
「決して安いものではないので、 1年も履かないうちにボロボロになってしまったら、納得できないですよね。 最初に買ったバブーシュは、5年くらいは履いていたと思います。自分も使っているから、使い込んだうえでの良さを人にも伝えられます」
\心地がいいものと長く付き合いたい/
石川さんはバブーシュの手作りならではの形と、使うほどに味が増すところが気に入っているそう。
「アンティークが好きな理由と同じですが、使っていくうちに表情が変わり味が出るものが好き。革は履いているとどんどんシワができて、足になじむのがいいですね。今これを作っている職人さんは1人しかいないから、その人がいなくなったらもう買えない。でも、同じものを作ってもつまらないし、 次も素敵なものを考えてくれるという信頼が『ワランワヤン』にはあります」
好きなものはそんなに変わらないという石川さんの<好き>の基準は?
「心地がいいことですね。最初にものと出合うときは、使っていないからわからない。好きだなと思ってまず自分で使ってみると、意外と使い勝手が悪いものもあるんですよね。そんなときは作り手の意図を聞いたり、デザインが好きだからと受け入れることも。使ってみた感想はぶつけるだけぶつけるんです。ものを通して、言葉のキャッチボールをするのも好きですね」
『クウネル』2022年7月号掲載
写真/鈴木静華、取材・文/赤木真弓