マチュア世代憧れの旅の目的地・オーストラリア紀行。シドニーっ子に愛される海岸・ボンダイビーチを歩く

ロージー・イングリッシュさん

オーストラリア・シドニーの中心部から車で20分ほどで行けるボンダイビーチ。オーストラリアでも人気ナンバーワンのビーチを、地元で暮らすロージー・イングリッシュさんと一緒に散策してみました。


オーストラリア・シドニー
ボンダイビーチ


シドニーにあるボンダイビーチ
1882年に公共のビーチになるまでボンダイビーチは個人所有の土地だった。

オーストラリア・シドニーの中心部から車で20分ほどで行けるボンダイビーチは、シドニーっ子の憩いの場であると同時に同国内有数の観光スポットです。

1998年に発売され、一世を風靡したアップル社のiMacのキーカラーとなった「ボンダイブルー」はこのビーチから眺める海の色から名付けられたものでした。5月のある朝、地元で暮らすロージー・イングリッシュさんと一緒にそのビーチを歩きました。

ロージー・イングリッシュさん
ロージー・イングリッシュさん。
犬の散歩やウォーキングに勤しむ住民
犬の散歩やウォーキングに勤しむ人たち。
ボンダイビーチはサーファーの憧れポイント
サーファー憧れのポイント。
「ボンダイアイスバーグ」のプール
「ボンダイアイスバーグ」のプール。
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その日は曇天で、書割のような原色の世界とはいきませんでしたが、海も空もグレーを含んだデリケートな色合いをしていて、それはそれで心静まる美しい眺めでした。ビーチに並行して延びる歩道には犬を散歩させる人、ウォーキングやジョギングを楽しむ人が行き交い、にこやかに朝の挨拶を交わしています。

「ボンダイビーチは住民の半分以上が私のように他の国からの移民なの。人々が互いに受け入れ、異なる文化が溶け合って、独特の雰囲気を作っている」

ビーチウォークのガイド兼写真家として活躍するロージーさんは、アイルランド中央部のサーレスという人口8000人ほどの小さな町で生まれたそうです。

「原っぱと牛の群れとパブ、教会に囲まれ、灰色の空の下で育ったわ。いつも青い空、光溢れるビーチ、暖かい土地を夢見ていたわね」

高校卒業後に故郷の町を出たロージーさんは、パリやロンドン、アムステルダムなどヨーロッパ各地を転々とし、アメリカに渡って、ニューヨークやサンフランシスコでも暮らしました。そして今から18年前に「すべての国と都市の中でオーストラリアのシドニーが最も暮らしやすい」との結論に至ったそうです。

我々は歩道からビーチに降りて、南に向かって歩きました。ボンダイビーチ南部は良い波が立つサーフポイントです。多くのサーファーが沖に出て波待ちをしているのが見えました。海に向かってカメラを構えるロージーさんに水着姿の老人が声を掛けてきました。今朝の海の様子を話し合うふたり‥‥。

オーストラリアの人々は、老若男女を問わず朝の屋外でのエクササイズを習慣にしている人が多いようです。ロージーさん自身も以前から出勤前のビーチウォークを欠かさなかったと言います。

「8年前に写真を始めました。朝のビーチを歩きながら、人や海、動物などを撮っています。写真を撮るようになったおかげで、多くの人と知り合うことができた。中には50年代や60年代に移住してきた、とても古くからの住民たちもいるのよ」

海岸沿いの奇岩群
海岸沿いの奇岩群も見どころ。
タマラマ地区の風景
高級住宅が立ち並ぶタマラマ地区。
ケールスムージ
ケール主体のスムージー。
オージーの朝食
フルーツとヨーグルトを添えたミューズリーは今のオージーの朝食の定番。
朝食が終わるのをおとなしく待つ犬ちゃん
主人の朝食が終わるのをおとなしく待つ犬たち。
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ピースフルに見えるボンダイビーチも、過去にはいくつもの試練があり、それを乗り越えてきたのだそうです。38年には大波がビーチを襲い、多くの犠牲者を出しました。その日は「ブラックサンデー」と呼ばれています。凶悪なサメが出没して遊泳者を脅かせたことも。

また、80年代には下水が海に流れ込んで、水質を著しく汚染する時期もありました。しかし、その度に地元の人々は対策を講じてビーチを守ってきました。例えば、ライフセーバーの活動ではボンダイビーチが世界の先駆者としてよく知られています。

「金曜の朝、メンタル・ヘルスに問題を抱えた人が、極彩色の服を着てビーチに集まり、互いの経験をシェアし、海に浸かることで癒される『フルーロ・フライデー』という取り組みがあるけれど、これもボンダイビーチのサーフ・コミュニティから生まれたものです」とロージーさん。

我々は100年近い歴史のあるスイミングクラブ「ボンダイアイスバーグ」の海水プールを見下ろす高台に差し掛かっていました。このクラブの会員になるためには、冬場の冷たいプールで月に3度の日曜日に泳ぐのを5年間続けなければならないという厳格なルールがあるそうです。いずれも、ビーチが人々の生活や人生と深く繋がっていることを示すエピソードだと感じました。

「1kmほど先のブロンビーチまで歩いて、カフェで朝食を摂りましょう」とロージーさん。すでに少し空腹を感じていました。岩場に沿った、曲がりくねった歩道を朝食のことだけを考えながら歩きました。

写真/浮田泰幸、取材協力/オーストラリア政府観光局

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