[服部夫妻の今日から始めるサステイナブルvol.1]脱プラというけれど、まだ使えるものはどうする?

サスティナブルに暮らしたい 台所道具

「持続可能な」を意味する「サステイナブル」。言葉はよく耳にしますが、サステイナブルな暮らしとはどういうものなのでしょう?
昨年末に発売された、翻訳家の服部雄一郎さん、麻子さん夫妻による著書『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方』(アノニマ・スタジオ刊)は、暮らしを変えることの楽しさを教えてくれる一冊。すぐに始められるサステイナブルな工夫や考え方など、自分ができることやそのヒントが見つかります。

■サステイナブルは「せめぎ合い」

既に持っているプラスチック用品。「処分したほうがいいのでしょうか? まだ使えるのに捨てるのはもったいない気がします……」という質問をよく受けます。 確かにもったいないです。僕も、何年も前に購入してしまったプラスチック製の衣装ケース一式を、「今さら捨てるわけにもいかないし……」とそのまま使い続けていました。 

でも、このあたりのことはつくづくバランスだと思うのです。「もったいない」という現実と、「使い続けることのストレス」。さらに、プラスチックの種類によっては、そのまま使い続けることで「健康リスクや環境汚染を増大させてしまいそうなもの」もあります。 

そういう意味では、「いかにもったいないとしても」、今回限り処分してしまい、「新たな自分に生まれ変わってスッキリ暮らす」というのもひとつです。わが家は、引っ越しを機に、 その衣装ケースをすべて知人に引き取ってもらうことができました。でも、いつもそんな風にうまくいくとは限りません。

サスティナブルに暮らしたい ガラス瓶
食材の保存に使うのは、ドイツの「WECK(ウェック)」のキャニスター。完全プラスチックフリーな上に透明で中身が見えやすく、冷蔵庫に並べても中身がひと目でわかる。

つくづく正解のない選択です。人の数だけ正解があって、むしろ、「何を選ぶか」にその人らしさが表れる。人生も同じ。答えのない様々な選択の連続です。

「より良い消費」を意識しはじめると、同じように難しい選択を迫られることはよくあります。「過剰包装のエシカル商品 vs 簡易包装の通常品」「遠方のオーガニック野菜 vs 近場の普通の野菜」「地元企業の普通の商品 vs 大企業のエコ商品」などなど。 

どちらがいいのか、はっきりとした答えがほしいところですが、たとえ高度な計量経済学をもってしても、たぶん「本当の答え」は出ません。アメリカの大学院で環境政策を勉強してみて、そのことは痛感しました。本当の環境負荷をどう数値化するかはあまりに複雑で、「何を前提にするか」で真逆の結果が出ることもしばしば。 何を選んでも正しくない気がしてしまう……かもしれませんが、そうしたジレンマは「配慮できる自分」に前進できている証しでもあります。

サスティナブルに暮らしたい 台所道具

あとはその中でどう自分らしい選択をするか? そして、さらに前進を続けて、どのようなアクションにつなげていけるか? 決めるのは自分です。

「やっぱり違った」と思ったらどんどん修正していけばいい。「今日正しいと思ったこと」が「明日も正しい」とは限りません。間違いが判明することは、より正しい方向への一歩。 

ひとりひとりが、自分なりに考えて、選ぶ。その積み重ねによって、現実はきっと良い方向に進んでいきます。遠回りのように思えるかもしれないけれど、それは「ひとつの正解」 という脆い幻想にみんなが盲目的に従うよりも、よほど真実味があって、パワフルに未来を動かしていくように思います。

※本記事は『サステイナブルに暮らしたいー地球とつながる自由な生き方』(アノニマ・スタジオ刊)からの抜粋です。

撮影 衛藤キヨコ

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